2014/11/10

[第1回] 一人1台のタブレットを活用した家庭学習で、自ら学ぶ子どもを育てる [4/5]

自分から学習のヒントを求め、「他人の学びを持ち帰る」ようになっていく

そのような自主学習を通し、子どもたちの学びにどのような変容を期待しているのでしょうか。
 稲垣:友だちのノートを見て、「算数の学習は、こうやってまとめればいいのか」といった気づきが得られるでしょう。そうした経験を積み重ねるうちに、「算数が得意なBさんのノートを見てみよう」など、自分から学習のヒントを求めるような「まねぶ」ことを期待しています。自主学習のテーマは個別かつ自由に設定できます。漢字の反復練習だけをしていた子どもが、「自分が興味のあることをこのように調べるのも勉強なのか」と新しい学習法に気づくかもしれません。そうした気づきから、自分に合った学習法を模索する動きが出てくればと思います。また、友だちの学びを見ることで、「自分も友達のように学び伝えたい」と思い、学習意欲が高まることも期待しています。
教員にはどのような利点があるのでしょうか。
 稲垣:一つめに、子どもへのフィードバックがより濃密になるでしょう。従来は、ノートに一人ひとりコメントを書いて返すことで、子どもの学習意欲を高めていました。それに加えて、本実践では子ども同士がノートを見合って深め合っています。子ども同士の承認や支援を想定して、教員のフィードバックがどのように変化するのかにも注目しています。なお、手を抜いている子どものノートを見て、「この程度でいいのか」と易きに流れる子どもが出てくることが懸念されます。そうした場合の教員の介入・配慮の仕方についても、実践を通して見ていきたいと考えています。
 教員の負担を軽減することも、今回の研究の重要な点です。現在は共有だけですが、子どもがアップロードしたノートのデータを画面で確認し、デジタルの赤ペンでコメントを記入できるようにすれば、ノートを回収・配付する時間を削減できますし、すき間時間を活用してコメントを書きやすくなる可能性があります。
自主学習に一人1台のタブレットを有効に活用できそうな機能はどのようなものが考えられますか。
 稲垣:タブレットには通常、カメラが搭載されています。工作や料理、スポーツなど、紙の上では示しにくい成果物を画像や動画で残せるので、自主学習の幅が広がるでしょう。また、ドリル系のアプリケーションは、子ども一人ひとりの理解度に応じて出題パターンを変化させたり、解説の動画を示したりできるので、学習進度に合わせた学習が可能です。そうしたコンピュータ支援教育(CAI)の研究は1990年代から更に進み(教育フォーカス【特集1】第11回 赤堀侃司先生講演参照)、優れた学習ソフトが開発されています。コンピュータ室に移動しなくても手元のタブレットで気軽に使えるようになれば、もっと有効に活用できるでしょう。
 また、家庭のネットワーク環境によっても、タブレットの活用法は大きく変わります。学校や各家庭がネットワークでつながれ、タブレットを持ち帰って活用できれば、いつでもどこでも友だちと協働しながら学習できます。ただ、持ち帰る場合は、保護者に遊んでいると誤解されないように、学習活動への理解を求めたり、使用時間などのルールを共有したりすることも必要でしょう。