2015/03/06

[第2回] タブレットを用いて家庭学習の内容をクラス内で共有し、自学の変容を促す─実践編 [1/6]

はじめに

 第1回では、東北学院大学の稲垣忠准教授が、タブレットを活用して学校と家庭での学びを連携させる方法を提案した。今回は、東京都世田谷区立砧南小学校の菊地秀文先生が、担任を受け持つ3年生のクラス(児童数38人)で、その方法を実践した成果について報告する。子どもが宿題以外に家庭で行った自主学習のノートを、学校でできるだけ毎日カメラで撮影し、専用のソフトウエアで共有するという取り組みによって、子どもにどのような変化が見られたのだろうか。
 聴き手:ベネッセ教育総合研究所グローバル教育研究室 主任研究員 住谷 徹

タブレットを有効活用し、自立した学習者を育てる

稲垣准教授のお話を受けて、この学習スタイルの実践に取り組もうと思った理由をお聞かせください。
 菊池:私は、これまでも、子どもの家庭学習に関していろいろな取り組みをしてきました。子どもが自ら課題を見つけ、その課題に向けて計画的に学習を進めていくにはどうすればよいのか。さらに、そうした自主学習を継続的に行うためには、どのような働きかけがよいのかなどを試行錯誤してきました。私が促進のために主に行ってきたのは、ほかの子どものノートを、実物投影機で映してクラス全体に見せたり、個別に子どもに見せたりするという方法です。自主学習に課題のある子どもは、学習の進め方や課題の見つけ方が分からないというケースが多いので、ほかの子どもの学習の様子を知ることで、自分の学習に取り入れたり、そこからヒントを得て、新たな学習を考え付いたりするからです。
 今回、タブレットを使って自主学習を共有する仕組みの説明を聞いたとき、私がこれまでやってきた取り組みとねらいが重なる部分が大きいので、実践してみようと思いました。
この学習スタイルのどのような点に可能性を感じましたか。
 菊池:この3年、さまざまな機会で一人1台タブレットを活用した授業を行っていますが、学びへの効果が最も大きく、子どもが継続して活用するタブレットの機能は、カメラやビデオだと実感しています。単純な機能ですが、「自分がシャッターを押して撮影する」という行為によって、また、その撮影した画像や動画を後から見ることによって、自分が何に関心があるのか、どのような学習をしてきたのかを客観的に見ることができます。自分の関心、学習の成果を客観視することによって、今の自分の課題が何かに気付き、次に何をすればよいのか、深く考えられるようになるのです。
 しかも、今回の学習スタイルは、ノートをカメラで撮影し、それを自己評価とともに閲覧用のアプリケーションにアップするだけと、やることや操作がとても簡単です。学習用アプリケーションは多種多様にありますが、操作が複雑ですとどうしても長続きしません。操作が簡便であることも、実践を決めた理由の一つです。