2016/04/12
[第3回] 大学を卒業して実感できる大学での学びの意義 [5/7]
Ⅳ.大学在学時の教育と学習(1)
次に、大学教育の印象を尋ねた結果が図3である。経験頻度という量的な側面だけでなく、今でも大学教育が印象として残っているかという質的な側面から見ようとしたのがこの問いである。ここでは、「学習の態度や姿勢が不適切な場合、教員から指導された」を除いたすべての項目で、どちらの年代も「興味・演習」を支持する層のほうが「単位・講義」を支持する層よりも印象に残っている比率が高くなっている。経験頻度と同様、「興味・演習」を好む層で印象度が高いということである。どちらの世代も「とても印象に残っている」という回答は10%前後で低いものの、両世代ともにほとんどの項目に関して、この値が「興味・演習」と「単位・講義」で倍以上開いている点が先と異なるところである。さらに、「とても印象に残っている」+「まあ印象に残っている」の合計比率の差が顕著な項目を挙げてみよう。「学問固有の物の見方や考え方に触れられた」(23~34歳で14.4ポイント差、40~55歳で13.9ポイント差)、「大学の個性や特色をいかした教育を受けられた」(23~34歳で13.9ポイント差、40~55歳で15.8ポイント差)、「教育に対して熱意のある教員がいた」(23~34歳で13.6ポイント差、40~55歳で15.7ポイント差)、「教員の指導に基づきながらも、自主性を尊重されて学習を進められた」(23~34歳で13.2ポイント差、40~55歳で13.4ポイント差)といった項目である。
このように、「興味・演習」を支持する層のほうが、「深い学びの経験」と「情緒的サポート」にわたって大学教育の印象は残っているが、その「情緒的サポート」も教育・指導面での啓発やサポートが主になっている。前述の経験頻度でも、「研究テーマの選択において、自主性が尊重される」や「教科書の枠にとらわれず、教員の自由な知見・見解に触れる」ことが挙がっていたように、自主性を尊重されているという実感ととともに、学問観や教員の見解にふれるといった知的喚起の機会が、興味のある授業で、演習形式の授業が多いことを支持する考えにつながっているとみることができる。
図3 大学教育に対する考え別にみた大学教育の印象