小学校実践例

※各実践例において,「Cds#XX」と表示しているものはすべて,Cdsの通し番号を示しています。
※文中の氏名や役職,学校名は,実践当時のものです。

5年生 社会科「日本の工業生産と貿易と運輸」(葉山町立長柄小学校 水木裕介先生)

実践の概要

 「日本の工業生産と貿易と運輸」の単元で,Cdsを活用した授業を実践しました。貿易や運輸が,日本の工業生産に重要な役割であることを捉える単元です。指導計画の作成では,指導書や教科書の内容を探究的な学習の過程に沿って整理した上で,Cds一覧表に基づいて,身につけさせたい思考力を検討しました。この授業で,思考力のめあてとして設定したCdsの項目は次の通りです。
[課題設定]
 Cds#2 設定した課題に対し,調べる方法や進め方を考えることができる
 Cds#4 事象や情報の関係を捉え,傾向を見いだすことができる
[情報収集]
 Cds#6 複数の情報を目的に沿って整理することができる
[整理・分析]
 Cds#12 対象や事象に対してさまざまな視点から捉えることができる
[まとめ・表現]
 Cds#18 相手や目的,状況に合った方法で表現・説明することができる
 実践内容と,各時間で特に育成目標とするCds項目は,表2の通りです。
表2 めあてとしたCdsの項目に対応する学習活動
実践内容 特に育成目標とするCds項目
第1回

【課題設定①】

自動車の輸出や原油の輸入の現状から,工業生産における世界各国の結びつきに着目し,問いを持ったり,学習課題を設定したりする。

【学習活動】

1. 日本の自動車の主な輸出先の資料を提示し,気づいたことを伝え合う。

2. 原油の輸入に関する資料を提示し,外国から輸入ができなくなるとどうなるかを考え,話し合う。

3. 日本の自動車の輸出や原油の輸入から問いを引き出し,学習課題をつくる。

4. ふり返り

Cds#4
第2回

【課題設定②】

学習課題への予想,学習計画,学習方法などの見通しを持つ。

【学習活動】

1. 学習課題の予想をまとめて伝え合う。

2. 学習計画を確認する。

3. 学習方法を整理する。

4. ふり返り

Cds#2
第3回

【情報収集①】

日本の主な輸出入品の種類とその相手先,輸出入の変化について。

【学習活動】

1. 日本の主な輸出品や輸出相手先,輸入品や輸入相手先がわかる資料を教科書や資料集などを使って調べ,整理する。

2. 輸出と輸入の様子を比べて,それぞれの特色や変化についてわかったことや考えたことを,グループで話し合う。

3. まとめ,ふり返り

Cds#6
第4回

【情報収集②】

輸入に依存している燃料や原料,輸出の割合が多い工業製品について。

【学習活動】

1. 輸入の割合が多い工業製品について資料から調べ,輸入した資源をどのように輸出する生産に生かしているかを考える。

2. 主な貿易相手先を地図から読み取り,つながりが深い理由を考え,わかったことをグループで話し合う。

3. まとめ,ふり返り

Cds#6
第5回

【情報収集③】

様々な輸送手段や交通網の広がり,海運などの運輸の働きについて。

【学習活動】

1. 輸出入の際に使う輸送手段や施設,経路について資料から調べたり,読み取ったりして,それぞれの特色を整理する。

2. 整理したことを基に,輸送手段と日本の国土の特色との関連について,グループで話し合う。

3. まとめ,ふり返り

Cds#6
第6回

【整理・分析】

日本の貿易・運輸の特色や役割について整理して,これからの貿易において大切なことについて考える。

【学習活動】

1. これまでの学習を思考ツールを使って整理し,自分の考えを持つ。

2. グループで話し合う。

3. 友だちの考え方から学んだことをまとめる。

4. ふり返り

Cds#12
第7回

【まとめ・表現】

これまでの学習で学んだことを生かして,自分が行いたい貿易の仕方についてまとめ,伝え合う。

【学習活動】

1. 自分が行いたい貿易の仕方について,カードにまとめる。

2. カードをグループで伝え合う。

3. ふり返り

Cds#18

本実践を終えて

 約1か月間,1クラスに対する実践を終えた水木先生のふり返りは以下の通りです。
 「単元全体をふり返ると,Cdsを活用した指導計画の工夫により,身につけさせたい思考力を意識して授業を展開できたことは大きな成果と感じています。めあてが明確になったことで,子どもたちの情報を読み取る力や整理する力,考えをまとめる力などを高めることができました。話し合いも活発に行われ,様々な視点の獲得にもつながりました。一方で,活動の時間をもっと増やしてほしいと感じる子どもがおり,その点は課題です。今後は,年間を見通して思考力の育成に努めるとともに,他の教員と思考スキルの価値や育成手法を共有することなども目指していきます」