「ビッグデータを活用した教育研究の取り組み」について
本研究の開始にあたって
これまで、私たちは、子どもたちの学習の様子を把握する際に、アンケートや観察のような形でデータを取ってきました。こうしたデータからわかることは、今までと変わらずたくさんあります。分析者にとってデータの構造がわかりやすく、結果を示すことが容易で、教育実践にも生かしやすい特徴を持っています。
そうした既存のデータに加えて、教育のデジタル化は、多様なデータの入手を可能にしました。デジタル教材からは、今、学習に取り組んでいる子どもたちの生の記録を、大量に入手できます。まさに「教育ビッグデータ」と言えます。
しかし、ビッグデータは、その特徴——3つのV=「Volume(データ量)」「Variety(データの多様性)」「Velocity(データの速度)」——ゆえに、取り扱いが難しく、教育実践への適用もこれからというのが実情です。その活用には教育のあり方を変える大きな可能性がありますが、現段階でわかることはまだ限りがあります。どう使えば学習者や指導者にとって有効か、その方法論自体が研究の対象です。 そこで私たちは、国内外の研究者や実践者とともに、効果的な学習のあり方を解明することを目的にして、デジタル教材から得られる学習記録の分析を行おうと考えました。さらに、その結果を学習者や指導者にフィードバックし、学びや指導を改善するための働きかけをしてまいります。
学習者にとって最適(アダプティブ)な内容を提供するのにデータを活用するのはもちろん大切です。しかし、つねに最適な内容を与えつづけ、受動的な学習を促しては意味がありません。目標を自分で定め、主体的に学習をし、その評価を次に生かすような自律的な学習者になるためにデータをどう活用するか、その方法を明らかにしたいと考えています。 その成果は、本ウェブサイトを通じて広く公表し、教育に携わる方々の実践に役立てていきたいと思います。
どんな研究をするの?
学習教材のデジタル化に伴い、ベネッセコーポレーションでは学習記録などのビッグデータを解析する専門組織「分析センター」を設立しました。この分析センターでは、小学1年生から高校3年生まで12学年の子どもの学習記録をもとに、学力や学習力を伸ばす方法の発見を行います。ここで明らかになった知見は、すべての教材・サービスの設計や改善に役立てられます。また、データを蓄積していくことで、現時点の子どもの状態を示すデータから将来の到達点を予測することが可能になります。その結果を、一人ひとりの子どもの目標づくりや意欲喚起に活用しています。
【ベネッセコーポレーション・分析センター】
ベネッセ教育総合研究所は、この分析センターと連携をし、学術的な視点からより良い学びのあり方について研究を行います。学習時間や時刻、学習方法や内容、目標の設定やふりかえりの状況、1問ごとの正誤やテストの結果、保護者や指導者のかかわりの程度など——それら学習記録を分析して、それらが学習成果にどのように結びついているのかを明らかにします。今までは把握しにくかった学習プロセスを可視化し、一般化できるエビデンスをウェブサイトや学会などを通じて広く公開して、教育関係者が利用できるようにいたします。
データの取り扱いについて
ベネッセ教育総合研究所では、個人情報とは切り離した状態でデータの提供を受け、個人が特定できない状況下で、一般的な知見を抽出する目的で行います。学校との共同研究では、個人が特定できない番号をランダムに割り当て、その番号で情報のやり取りをします。このように、適切なデータの取り扱いについても、研究の一環に含めてまいります。
タブレット教材の学習記録データを活用した研究
電子書籍の読書履歴データを活用した研究