2013/08/16

第17回 認定こども園、現在の姿とこれから

ベネッセ教育総合研究所 次世代育成研究室
室長 後藤 憲子
「待機児童解消加速化プラン」が出てきてから、新聞・TVの報道は保育所が中心になってしまい、すっかりその陰に隠れてしまったかのように見えるのが認定こども園です。今回は、「第2回 幼児教育・保育についての基本調査」から認定こども園に関するデータをご紹介したいと思います。
すでにご存知のように、「子ども子育て関連3法」の3つあるポイントの一つとして、「認定こども園制度の改善」があげられています。現在、幼保連携型認定こども園の保育要領などが検討されており、今後は内閣府のもと、単一の施設として認可、指導監督、財政措置、教育・保育の要領が一本化されていきます。一方で現在の認定こども園の状況はどうなっているのでしょうか。

この4月で1,099園となった認定こども園

認定こども園の数は、当初目標の2,000園(平成18年)には及びませんが、この4月に1,000の大台に乗り、1,099園になったところです。公立・私立の内訳をみると、思った以上に私立が多く、約80%を占めています(図1)。累計別にみると、幼稚園・保育所の両方の認可を受けた幼保連携型が約半数となっています(図2)。 これからは、この「幼保連携型認定こども園」が単一施設として認可されていくことになります。幼稚園型、保育所型、地方裁量型も残りますが、新しい制度を担う「幼保連携型」がどれくらいの数になるのかは、今後の注目ポイントです。
図1.
図2
出典:文部科学省 「認定こども園の平成25年4月1日現在の認定件数、認定件数の推移」より作成

子育て支援で地域に開かれた園を目指す認定こども園

認定こども園の設立趣旨として、幼児教育と保育の両方の機能を持つことがあげられますが、それに加え、子育て支援を充実させ、地域の子育てをサポートすることも大きな役割となっています。「第2回幼稚園・保育所についての調査」から子育て支援活動の実施状況を見てみましょう(図3)。
図3
※複数回答、子育て支援活動の対象者について「在園児の保護者」「地域の保護者など」のいずれかまたは両方に対して行っていると回答した園を分析。
★調査票では、「体験保育(入園前の親子が園に来て、給食までの時間を過ごすこと)」とたずねている。
★★調査票では、「出前保育(貴園の保育者が地域の施設に出向いて行う保育)」とたずねている。
回答した認定こども園の数が少ないので、参考数値ではありますが、全体的に幼稚園・保育所よりも子育て支援の実施率が高いことが見て取れます。幼稚園の機能と保育所の機能を合わせ持ち、様々な預かり形態の子どもたちや保護者に対応するだけでも大変なことですが、図に示したような活動も行い、地域に対しても開かれた園であることを実践していることが分かります。一方で、文部科学省と厚生労働省の2元行政の下、現在の認定こども園には様々な課題もあります(図4)。

認定こども園の課題と運営上の工夫

回答した園の半数以上が「補助金が十分でない」「事務的な負担が大きい」「会議や研修時間の確保が困難である」「保育の反省や翌日の準備を行う時間の確保が困難である」「保育者の負担が過重である」を以前から(今も続く)課題として上げています。とくに幼児教育と保育を一日の流れの中で実施していくため、保育者同士が会議や研修で時間を共有することの難しさがあるようです。
今後の認定こども園の改善により、単一の施設として認可されると「事務的な負担」は軽減されていくはずです。
図4
そのほか、「保育者(幼稚園教員と保育士)の勤務条件の統一やローテーションづくりが困難である」「保育者(幼稚園教員と保育士)の意思の統一が困難である」のような幼稚園教員と保育士が協力して園を運営していく、園の風土作りに関わる課題もあります。
実際にそのような点で工夫しているか、を尋ねたものが図5です。約半数の園で、「職員室を1つにしている」「給与体系や勤務時間などを統一している」が選択されています。スタッフが同じ待遇で、全員で園運営に取り組むよう工夫していることが分かります。
図5
幼児教育を受けられ、保育もある認定こども園は保護者からの期待も高いのですが、私立幼稚園の36%、私営保育所の15.4%が「条件によっては、認定こども園に移行してもよいと思う」と回答するにとどまっています。
新制度のもと、仮に幼稚園が「幼保連携型認定こども園」に移行するとしたら、調理室や0~2歳児のためのスペースの確保などの初期投資が必要になり、そこに補助金が十分出るかが、調査を実施した時点(2012年10月~12月)では、まだ分からないので、様子見をしているのが現状だと思います。また、保育所と同様に保育士の確保のメドが立たないことも移行への不安になっています。
「子ども・子育て会議」での方針や認定基準作りの過程いかんでは、認定こども園への移行が増えていく可能性もあります。待機児童解消加速化プランの実施で急速に保育所が増えていきますが、本来認定こども園にも待機児童解消の一部を担うことが期待されていたはずです。今後の展開に注目したいと思います。
「第2回 幼児教育・保育についての基本調査」は9月にはダイジェスト版を、12月には詳細は報告書をまとめる予定です。ぜひ、今ご覧になっているベネッセ教育総合研究所のHPをチェックしてみてください。

著者プロフィール

後藤 憲子
ベネッセ教育総合研究所 次世代育成研究室 室長
福武書店(現ベネッセコーポレーション)入社後、教材・書籍の編集を経て、育児雑誌「ひよこクラブ」創刊にかかわる。その後、研究部門に異動し、教育・子育て分野に関する調査研究を担当。これまで関わったおもな調査、発刊物は以下のとおり。
関心事:変化していく社会の中で家族や親子の関わりがどう変わっていくのか、あるいは 変わっていかないのか

調査研究その他活動:J-Win Next Stage メンバー、経団連少子化委員会企画部会委員