2014/12/01

[第1回] 少子化総論:日本の少子化の実態と要因 [2/3]

2.少子化の最大の要因は「未婚化」と「夫婦の持つ子ども数の減少」

 これまでの政府の少子化対策が、出生率上昇につながらなかった原因は、少子化に強く影響している要因を取り違えてしまっていたからではないか、と考えられます。ここではまず、少子化要因の代表的な仮説をあげてみましょう。
 ①女性の社会進出とそれに伴う仕事と子育ての両立支援の困難、②結婚市場のミスマッチ、③若年層における雇用の悪化、④パラサイト・シングル、⑤若い世代の結婚・出産に対する価値観の変化、⑥子育てや教育にかかる費用の重さ、⑦子育てにかかる心身の負担の重さ、以上7つです。
 以上の仮説は全て正しいのですがこの中で特に出生率低下の要因となっているのは、②、③、⑥です。
 既存のデータからわかるのは、70年代以降の出生率低下の8~9割は未婚化によるもので、残りが夫婦の子ども数減少です(図1、図2)。この2点が少子化に強く影響している要因なのです。
図1.未婚率推移(年齢別)
(出典)国勢調査より
図2.夫婦の子ども数
(出典)国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査(夫婦調査)」より
 では、この二つの要因の背景を見てみましょう。未婚率の上昇の背景には男性雇用の不安定さ、つまり非正規雇用の増加があります(仮説③)。また90年代以降は正規雇用でも給料が増えず、逆に減っているという人もいます。男性の場合、20代後半時点の年収が300万円未満であると、生涯未婚率が高くなるというデータがあり、雇用の不安定さからくる経済的理由により、結婚ができない人が多いことが考えられます。また、若い世代の中でも「夫が働き、妻が家庭を守る」という家族意識が変化していないわりに、それに合う相手が見つからないという、ミスマッチが未婚者の増大に拍車をかけています(仮説②)。
図3.独身にとどまる理由(25~34歳 男女)
(出典)国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査(独身者調査)」より
 もう一つ、結婚する・しないを左右するものに、その人自身の「結婚意欲」があげられます。団塊世代が結婚した頃、見合い婚は半分程度ありました。その後、恋愛結婚が見合い婚よりも増え、現在は見合い婚が全体の5%まで減りました。つまり、本人の意欲がなければ、結婚できない世の中になっているのです。年収300万円未満であると、結婚意欲もなかなか持てないというデータもあります。また、独身にとどまる理由の調査では、一番多いのが「適当な相手にめぐりあわない」ということです(図3)。
 次に、もう一つの要因である、夫婦の出生力低下の原因について考えます。既婚夫婦の理想子ども数は2.42ですが、予定子ども数は2.07にとどまります(第14回出生動向基本調査)。理想の子ども数をもたない理由の一位は「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」で6割を超えます(仮説⑥)(図4)。特に第三子以降をもとうとするとき、経済的要因が一番大きくなることがデータからわかっています。
 前章で上げた少子化対策の4つの「ない」のうち、「政策ターゲットの拡がりがない」と「典型的家族への経済的支援、若者の雇用対策がない」という要因の背景は以上のように説明できます。
図4.理想の子ども数を持たない理由
(出典)国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査(夫婦調査)」2011年より