2015/03/02
[第3回] 子育て支援の充実は、今なぜ必要か?何が必要か? [2/2]
2.子育てを地域の人とともに~実践の立場から
若盛 清美●わかもり きよみ
認定こども園こどものもり こどもの森保育園長。埼玉県保育士会会長。白鴎大学非常勤講師。
私は埼玉県松伏町で認定こども園こどものもり こどもの森保育園園長をしています。認定こども園には、地域の子育て支援をする役割があるのですが、実際に私たちの園でもいくつかの事業を通して、地域の人、特に子育て不安の強い低年齢の第一子を育てる保護者を中心に支援をしていく必要性を感じてきました。今日は実践の一部をご紹介します。
■ 「子育てサロン」で、保育者の声かけを聞くお母さん
「3歳未満児子育てサロン」は、お母さんが赤ちゃんを抱っこしたまま、ちょっと立ち寄ってもらえる場所を作りたいと思って開きました。保育園に通っていない、首のすわった0~2歳児を対象とし、月1回、申込制で開催しています。決まった活動をするのではなく、同年齢の子どもを育てる親同士で場を共有してもらい、最後の30分間はお母さん同士で自由に話す時間をとっています。他のお母さんも同じような悩みをもちながら子育てしている、ということを感じてもらえると、特に第一子のお母さんは安心感をもてるようです。
3歳以上は、「3歳以上児子育てサロン」を開き、こちらも保育園、幼稚園には通っていない親子を対象にして、親子で制作したり、クッキングをしたりとテーマを決めて過ごしてもらったりしています。園庭も開放し、公園とは少し違う、ルールのある遊びの中で園児と一緒に遊べるようにしています。そのときに、保育者がどんな声かけを我が子にしているかを聞いているお母さんもいます。また、帰り際に「もっとあそびたいよー!」と言う子どもに、お母さんはついイライラしてしまいがちですが、保育者が子どもに笑顔で視線を合わせて声をかけると、子どもの要求がすっとおさまることがあります。それを見ていたお母さんもハッとします。このように、保育者の声かけを見てもらえるだけでも、育児のヒントを持ち帰っていただけるのではと思っています。
■ 子育て支援は親支援
私は、子育て支援は、親支援だと考えています。どのような実践でも、私たちは「支援する側だ」と一段上に立つのではなく、保護者に寄り添っていくことを重視しています。一緒に共感しながら、保育者も育っていくのが理想です。また、先ほどご紹介した保育者の声かけにハッとするお母さんのように、お母さんが子どもとの接し方を自ら考えていけるような環境づくりを目指しています。それが結果的に親支援につながるのではないでしょうか。
今後は子育て支援だけではなく、この園に、全世代、つまり赤ちゃんから小学生、お母さんから老人まで、みんなを受け入れる場をつくりたいと思っています。そしてその場を地域ネットワークの拠点にできればと、模索中です。