2017/03/29

[第4回] 主体的・対話的で深い学びを実現するために、教員はどう取り組めばよいのか [1/4]

小柳 和喜雄 ● おやなぎ わきお

奈良教育大学大学院教育学研究科教授
広島大学大学院教育学研究科博士課程退学。博士(教育学)。専門は、教育方法、教育工学。
奈良教育大学教育学部助教授などを経て、現職。著書『教師の情報活用能力育成政策に関する研究』(風間書房)、編著『Lesson Study(レッスンスタディ)』(ミネルヴァ書房)など。
 「アクティブ・ラーニング」を取り入れる動きが徐々に学校現場に広がっています。しかし、理解が不十分だったり、目的が不明確だったりする状況で取り入れ、形だけの実践になっているといった課題も見られます。今回の教育改革が目指している「主体的・対話的で深い学び」を実現するために、授業をどのようにデザインし、教員はどのような役割を果たせばよいのでしょうか。教育方法を専門に研究する奈良教育大学の小柳和喜雄教授にお話をうかがいました。

Q. そもそもアクティブ・ラーニングはなぜ必要なのでしょうか?

A. これからの社会で求められる資質・能力を意図して育成するためです

 アクティブ・ラーニングのゴールは、次期学習指導要領が目指している「主体的・対話的で深い学び」を実践し、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力、人間性等」などの資質・能力をトータルに育てることです。
 従来の授業では、各教科の基礎的・基本的な知識・技能を身につけることがまずねらいとしてあり、結果として資質・能力が自然と総合されて育つと考える構図がありました。それが、次期学習指導要領では、各教科の学習内容と資質・能力をクロスさせて、意識的に育てることが求められています。そのために不可欠なのが、アクティブ・ラーニングです。
 資質・能力は受動的な学習では育ちません。人とかかわったり、課題を発見して探究したり、自己に働きかけたりすることを通じて資質・能力を育成していくことが求められているのです。

Q. アクティブ・ラーニングは、話し合いをすればよいのでしょうか?

A. 行動だけでなく、思考がアクティブになること。両方を活性化させることが必要です

 資質・能力の育成は"能動的な学習活動"がベースとなりますが、話し合いの形態の授業を行えば、自然に身につくというわけではありません。
 何をもって能動的かというと、他者や環境に積極的に働きかけるといった行動面のアクティブに加え、自ら頭の中で知識を構成していくような思考面でのアクティブがあり、この両方を活性化させることが原点となります。例えば、子どもが自身の中で考えを深める状況は、行動面ではアクティブではありませんが、思考面は非常にアクティブな状態だといえます。アクティブ・ラーニングというと、グループワークやディスカッションのような学習活動をイメージしやすいのですが、必ずしもそうではなく、いわゆる派手な学びをしていなくても、思考が活発になり熟慮しているときが、深い学びをしているといえるのです。
 そのため、場面に応じて、「思考」「行動」のそれぞれをどのように活性化させるのかを考えることが大切なのです。