2016/01/08
[第1回] 大学教育は学びと成長を促進し、社会生活を支えてくれるのか [2/4]
Ⅱ.大学時代の学びの充実度と成長実感
先述したように、この調査では「学びの充実度」と「成長実感」を大括りで聞いている。質的調査と量的調査の双方で聞いているが、まずは量的に確認してみる。図3は、各学年で学びの充実度と成長実感を聞き、世代ごとに比較したものである(「とても充実」と「まあ充実していた」の割合が左、「とても実感」と「まあ実感」の割合が右)。
図3 各学年時における学びの充実度と成長実感(世代間比較)
ポイントは3つ。1つ目は、学びの充実度は3年生がピークになっており、4年生で下降している点。これは、4年生になると授業をほとんど受けることがないためという理由もあるが、一方で問題視されている就職活動への負荷の高さも考えられる。日本の大学では、3年生までのところで卒業要件の124単位のほとんどを取得してしまう。4年生は卒論・卒研(必修ではない場合もある)と就職活動に力点が置かれるわけだが、最高学年で学びの充実度のピークがくるようにカリキュラムや履修制度を設計することも重要であると思われる。2つ目は、成長実感は経年で上昇し、4年生がピークになっている点。大学生活経験の総体として捉えた場合、成長という意味では最大値に達している。ここには学び以外の要素も含まれることになる。矛盾するようだが、就職活動も学生の成長に大きく寄与していることが様々な学生の声からも伺える。3つ目は、世代間でみたときに、成長実感には大きな差はないものの、学びの充実度でみると大きな開き(若手>中堅)がある点。これだけで結論づけることはできないが、目的意識や学力の低下を含む学生の多様化が叫ばれる中、学びの充実度を維持・向上させることができているのは、この間の大学教育改革の成果であるとも言える。