2021/01/27
【学び場ラボ】子どもの発想が地球を救う!? SDGsカードゲームで課題解決を導くアイデア作りを体験しよう!
現役教員をはじめとした教育実践者たちが挑戦する、新しい「学びの場」づくり。
こだわりは、話だけでは終わらせず、「模擬授業」など、実験的なアウトプットから議論をすること。あなたも、この実験に参加しませんか?
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2021.01.27 update
既成概念にとらわれない柔軟な子どもの発想からこそ、大人の想像を超えた、地球を救うアイデアが生まれるかもしれない!「学び場ラボ」では、初めて親子で参加するワークショップをオンラインで実施した。SDGsを題材としたカードゲームで遊びながら、モノやコトを創造的につなげ、イノベーションを興す「リンケージ&デザイン思考」を、子どもたちが体験。社会問題の解決に迫る多様なアイデアが飛び出した。
本ページのコンテンツ
1.楽しくゲームをしながら、アイデア作りを学ぶ
SDGs(Sustainable Development
Goals)は、よりよい社会を未来の世代までに持続可能にすることを目指し、国連で採択された国際目標であり、経済・社会・環境に関する17の目標と169のターゲットで構成される。日本でも、政府、自治体、企業が積極的に取り組んでおり、学校現場では探究学習のテーマによく取り上げられるようになった。
今回の「学び場ラボ」では、SDGsの達成に向けたアイデアを創出するために考案されたカードゲーム「クロス」を使って、日常の物事を関連づけ、問題解決に導くアイデアを考えるワークショップを実施した。
7〜12歳くらいまでの子どもを対象に親子での参加を募集したところ、幼稚園の年長〜小学4年生の4組の親子を含め、約20人が参加した。
ワークショップのファシリテーターを務めた相澤千鶴子さんは、親子を対象とした同ゲームのワークショップを数多く主催してきた。コロナ禍においても子どもの学びの場を広げようと、今回初めてオンラインでの親子ワークショップを実施した。
「THE SDGs アクションカードゲームX(クロス)」
金沢工業大学とリバースプロジェクトが共同開発。ヒト・モノ・コトのリソースを組み合わせて、問題解決策を考えるカードゲーム。
金沢工業大学とリバースプロジェクトが共同開発。ヒト・モノ・コトのリソースを組み合わせて、問題解決策を考えるカードゲーム。
■親子ワークショップの進め方
①[アイスブレーク]おうちの中にある「ふわふわなもの」を探してきて見せ合う。
②[アイデアの説明]「アイデア」は、困ったことを解決するための「宝物」であると説明。今回はアイデアを作るゲームを行うことを伝える。
③[ゲームのルール説明]ゲームは、「もんだいカード」の問題を解決するために、複数枚提示された「かいけつカード」に書かれたものをつなげてストーリーを作り、解決のアイデアを作るという手順で進める。保護者には、親は子どものサポート役であり、「親は答えを出さない」「子どものアイデアを否定しない」などのルールを伝えた。
②[アイデアの説明]「アイデア」は、困ったことを解決するための「宝物」であると説明。今回はアイデアを作るゲームを行うことを伝える。
③[ゲームのルール説明]ゲームは、「もんだいカード」の問題を解決するために、複数枚提示された「かいけつカード」に書かれたものをつなげてストーリーを作り、解決のアイデアを作るという手順で進める。保護者には、親は子どものサポート役であり、「親は答えを出さない」「子どものアイデアを否定しない」などのルールを伝えた。
④[ゲーム]ゲームは、3ラウンド実施。1ラウンドにつき、アイデア作りは5分間、発表は1人2分間で行った。
[ラウンド1]
もんだいカード「ものを大事にしようと心掛けていたら、家がごみ屋敷と呼ばれ始めた」
かいけつカード「ロボット」「学校」
この人の「ものを大事にしたい気持ち」も考えてみてね!
かいけつカード「ロボット」「学校」
この人の「ものを大事にしたい気持ち」も考えてみてね!
[ラウンド2]
もんだいカード「友達におかしの食べ過ぎをやめさせようとしたら、友達に嫌われてしまいそうになった」
かいけつカード「ロボット」「学校」「ゲーム」
「友達を思って止めようとする子の気持ちと、おかしが好きな子の気持ち」も考えてみてね!
かいけつカード「ロボット」「学校」「ゲーム」
「友達を思って止めようとする子の気持ちと、おかしが好きな子の気持ち」も考えてみてね!
[ラウンド3]
もんだいカード「子どもが1人でご飯を食べていたので、声をかけたら不審者扱いされそうになった」
かいけつカード「ドローン」「学校」「ゲーム」
「子どもを心配している、大人の人の気持ち」も考えてみてね!
かいけつカード「ドローン」「学校」「ゲーム」
「子どもを心配している、大人の人の気持ち」も考えてみてね!
2.アイデアを出すことは楽しい!を体験
各ラウンドで出された子どもたちのアイデアは様々で、「かいけつカード」のつなげ方もそれぞれに異なっていた。例えば、ラウンド1では次のようなアイデアが発表された。
「ロボットに使えるものと使えないものを判断してもらって、使えるものは学校にあげる」(参加者)
「使えるものは、ロボットに学校まで運んでもらい、使えないものは、ロボットに使えるものに作り替えてもらってリサイクルする」(参加者)
「学校でロボットを作り、使えないものはロボットの燃料にする」(参加者)
「使えるものは、ロボットに学校まで運んでもらい、使えないものは、ロボットに使えるものに作り替えてもらってリサイクルする」(参加者)
「学校でロボットを作り、使えないものはロボットの燃料にする」(参加者)
ラウンド3では、3枚の「かいけつカード」があったが、子どもたちはそれらをしっかり関連づけて次のようなアイデアを作った。
「ドローンがゲームをしながら、学校から家まで一緒に帰ってくれる」(参加者)
「不審者かどうかをドローンが判断してくれて、不審者だったら学校に通報してくれる。でも、すぐに人は駆けつけてこられないから、自分でも逃げて、そのご褒美にゲームで遊べる」(参加者)
「知らない人に声をかけられたら、ドローンが代わりに答えてくれて、危険だったらアラームを鳴らしてくれる」(参加者)
「悪い人じゃないと分かったら、学校で一緒にゲームをして仲良くなる」(参加者)
「不審者かどうかをドローンが判断してくれて、不審者だったら学校に通報してくれる。でも、すぐに人は駆けつけてこられないから、自分でも逃げて、そのご褒美にゲームで遊べる」(参加者)
「知らない人に声をかけられたら、ドローンが代わりに答えてくれて、危険だったらアラームを鳴らしてくれる」(参加者)
「悪い人じゃないと分かったら、学校で一緒にゲームをして仲良くなる」(参加者)
ゲーム終了後、子どもたちに感想を聞くと、次のような内容で口々に「楽しかった!」という答えが返ってきた。
「自分で考えたことを発表するのが楽しかった」(参加者)
「新しく、いろいろなことを知ることができて面白かった」(参加者)
「『かいけつカード』をつなげて考えるのが楽しかった」(参加者)
「新しく、いろいろなことを知ることができて面白かった」(参加者)
「『かいけつカード』をつなげて考えるのが楽しかった」(参加者)
最後に、相澤さんはSDGsについて説明し、世界の国々や企業がアイデアを出し合って問題解決に取り組んでいる実例を紹介。「アイデアは、困っている人を助けたり、みんなを楽しませたりできるものです。今日、みんなは素晴らしいアイデアを出してくれました。それは日常生活にも生かせることです。家族に困っていることを聞き、今回のようにアイデアを出してみましょう」と、ワークショップを締めくくった。
3.オンラインだからこそ、「よい聞き手」になれる
ワークショップ終了後、参加者の保護者とワークショップの参観者によるディスカッションが行われた。ディスカッションのファシリテーターを務めた東京都小金井市立前原小学校の蓑手章吾先生は、まず保護者にワークショップ中の子どもの様子を尋ねた。
「私(親)の手助けが必要になると思っていましたが、(子どもが)考え始めるとアイデアをまとめるのは早かったです。子どもの発想力は、親が思う以上に柔軟で豊かでした」(保護者)
「子どもが出したアイデアのつじつまが合っていなくても、それを受け止めていくうちに、『これはありかも』と思えてきました。子どもの考えをそのまま受け止める大切さに気づきました」(保護者)
「一つひとつのアイデアは実現が難しそうなのに、しっかりつなげていた子どもの発想に驚きました。子どものアイデアでも実現の可能性はあり、耳を傾けようと思いました」(保護者)
「今回、自分1人で考えて、発表までやり遂げていました。体験自体が子どもの可能性を引き出すのだと、改めて感じました」(保護者)
「子どもが出したアイデアのつじつまが合っていなくても、それを受け止めていくうちに、『これはありかも』と思えてきました。子どもの考えをそのまま受け止める大切さに気づきました」(保護者)
「一つひとつのアイデアは実現が難しそうなのに、しっかりつなげていた子どもの発想に驚きました。子どものアイデアでも実現の可能性はあり、耳を傾けようと思いました」(保護者)
「今回、自分1人で考えて、発表までやり遂げていました。体験自体が子どもの可能性を引き出すのだと、改めて感じました」(保護者)
どの保護者からも「子どもは楽しみながら学んでいた」という感想を聞き、蓑手先生は、「アイデアを出す楽しさに加えて、周りが自分のアイデアに驚くという反応も、子どもが楽しんで取り組んでいた要因ではないでしょうか」と指摘した。
すると、それを参加の動機に挙げる保護者がいた。
「昨夜は、冗談めかしてですが、『自分の意見を聞いてくれる人はいないよ』と言っていて、不安があったようです。でも、発表後にみんなから『いいアイデアですね』と言われて安心したのか、とてもいい笑顔をしていました。そうした体験の積み重ねが、自信につながるのだと感じました」(保護者)
「特に今はコロナ禍で、他者と交流しながら学ぶ機会がほとんどありません。今回の体験で、オンラインで初対面の人であっても、十分刺激を受けられると感じました」(保護者)
「特に今はコロナ禍で、他者と交流しながら学ぶ機会がほとんどありません。今回の体験で、オンラインで初対面の人であっても、十分刺激を受けられると感じました」(保護者)
蓑手先生は、オンラインでの対話のよさを次のように挙げた。
「オンラインでは同時に話せないというシステム上、一人ひとりの意見に耳を傾けやすくなります。実際に顔をつきあわせた対話よりも、『よい聞き手』になれる環境が整っているといえるでしょう」
4. アイデアは宝!子どもに自由な発想の場を
ワークショップで保護者や参観者の誰もが感じたのは、子どもの発想の豊かさだ。
「私もアイデアを考えましたが、『ゲーム』のカードをうまくつなげることができませんでした。子どもの発想力に脱帽です」(参観者)
ワークショップを主催してきた経験から、相澤さんは次のように語る。
「このカードゲームでは、点を線につなげることがポイントになりますが、そのスピードは、子どものほうが早く、柔軟性も高いといつも感じます」
子どもから出されたロボットやドローンの活用は、既に実用化されているものもあった。それを知らずにアイデアを出しているとしたら、子どもは社会の即戦力になる力を持っているといえるだろう。
また、蓑手先生は、子どものロボットやドローンの捉え方に着目した。
「『ドローンと一緒に遊ぶ』といったアイデアには驚きました。子どもにとって、機械は無機質なものではなく、友達のような感覚なのでしょう。そうした大人にはない感覚が、イノベーションを興すのだと感じました」(蓑手先生)
相澤さんが注目したのは、子どもが常に人の気持ちを大事にしてアイデアを出していたことだ。
「問題を抱えている人の気持ちを汲んでアイデアを作っていたことに感動しました。AI時代だからこそ、人の思いを大事にしながら、問題解決の手段として機械を活用する、そうした捉え方が重要だと思います」(相澤さん)
そうした自由な発想を生み出す場面を学校教育でもっと設けたほうがよいのではないかと、参観者から投げかけられた。
「学校段階では、教員からの指示を待って行動する場面ばかりにもかかわらず、社会に出たらすぐ、自分でパフォーマンスすることが求められます。小学校段階から自分で考えて表現する体験の積み重ねをすることを期待します」(参観者)
「子どもが自己決定する場面がなければ、他者とかかわる場面も少ないということです。それは、コミュニケーション能力や周囲への思いやりなどを育む機会を奪っていることになるのではないでしょうか」(参観者)
「子どもが自己決定する場面がなければ、他者とかかわる場面も少ないということです。それは、コミュニケーション能力や周囲への思いやりなどを育む機会を奪っていることになるのではないでしょうか」(参観者)
そうした意見を受けて、教員志望の学生は自身が目指す教員像を思い描いていた。
「子どもの感想では、子ども自身が挑戦する面白さを感じていたのが印象的でした。子どもの限界を決めずに、挑戦する環境を作れる教員になりたいと思いました」(参観者)
子どもたちの可能性を参加者全員が感じたワークショップを振り返って、蓑手先生と相澤さんは、次のように語った。
「計算機科学者のアラン・ケイは、『未来を予測する最良の方法は、それを発明することだ』と言っています。誰かが作る、一歩一歩の積み重ねが未来になります。科学技術の発展もあり、今はアイデアを実現させやすい時代になりました。未来を創る子どもたちが出すアイデアを、大人がどうサポートするかが問われているのだと思います」(蓑手先生)
「アイデアの善し悪しを判断されたとしても、それはジャッジした人の基準でしかありません。VUCAの時代に、それが正解だと誰も結論づけられないはずです。アイデアをいかに実現させ、正しいものに変えていくことが、重要ではないでしょうか」(相澤さん)
プロフィール
相澤 千鶴子
マーケティング会社にてSDGsを担当。企業のサスティナブルを推進する傍ら、自らも社会課題解決事業に取り組む。また、日系・外資系企業に勤務後、海外との働き方・考え方など、価値観の違いを痛感した体験から、海外の教育に関心を持つようになり、現在、小学校低学年向けに、アイデンティティ教育をベースとした文化体験などの企画運営を行っている。蓑手 章吾
教員14年目。専門教科は国語で、教師道場修了。特別活動や生活科・総合的な学習の時間についても専門的に学ぶ。特別支援学校でのインクルーシブ教育や、発達の系統性、学習心理学に関心を持ち、教鞭を執る傍ら大学院にも通い、人間発達プログラムで修士修了。特別支援2種免許を所有。ICT活用についても高い関心があり、多くのセミナーや勉強会に参加。ICT CONNECT21が主催する「先生発!最新のICT技術で教育現場を変えるハッカソン」ではグランプリを受賞。現任校ではICTプロジェクト主任も務める。多種多様なセミナーや研修会、文献などからも学力向上についても理解を深めている。セミナー登壇経験多数。共著に『知的障害特別支援学校のICTを活用した授業づくり』(ジアース教育新社)、『before&afterでわかる!研究主任の仕事アップデート』(明治図書出版)など。教育雑誌『授業力&学級経営力』(明治図書出版)では、プログラミング教育に関する連載を持っている。2021年2月13日に『子どもが自ら学び出す! 自由進度学習のはじめかた』(学陽書房)を出版予定。