2019/07/04
【授業づくり】「レゴRシリアスプレイR」メソッドを活用して 自分自身や社会を探究する力を育てる 前編
2019.07.04 update
聖光学院中学校高等学校では、高校で行われる本格的な探究学習の前段階として、中学3年生で「レゴ®シリアスプレイ®」メソッドを活用した探究ワークを実施している。自分自身を見つめ直し、自分の将来や社会を展望しながら、想像力や表現力を高めていく活動だ。その授業の模様を紹介する。(本記事は前編、後編はこちらです。)
(1)レゴ®ブロックを使って自分の内面を作品として表す
聖光学院中学校高等学校は、2017年度より5年間、文部科学省の「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」に指定され、中高一貫の理数授業や探究学習のカリキュラムの開発に取り組んでいる。
高校1年生から本格的に取り組む探究学習の基礎となるのが、中学3年生で行う「探究基礎」だ。2018年度からは、数学科の名塩隆史先生が担当となり、「レゴ®シリアスプレイ®」メソッド(以下、LSP)を活用し、想像力や創造力、表現力などのトレーニングを行っている。今回は、第5回の授業の様子を紹介する。
授業のテーマは、「次世代のテクノロジー(かけ算の発想)と提案」だ。冒頭10分間はインプットの時間として、名塩先生が、国内の研究者が好奇心を出発点として次世代テクノロジーの開発に取り組む事例を紹介。AIが得意なこと・苦手なことを説明した上で、「一つの専門領域の専門家ではなく、複数の異領域の知見や理想像をかけ算した開発が求められる時代が来ている」と、本時の活動のポイントとなる考え方を示した。そして、3〜4人ずつのグループを組ませてから、本時の作品づくりの方向性を提示した。
「あなたがどうしても解決したい問題、あるいは能力がなくてあきらめているけれども、本当は実現させたいと思うことを作品化してください。現実を考える必要はなく、妄想でかまいません。10年後に可能になっていたらいいと思うこと、成功率1%くらいの夢を作品にしましょう」
名塩先生はそう指示すると、「制作時間は8分間。さあ、とにかく手を動かしましょう」と作業を促した。生徒はすぐさま、グループごとに置かれたバッグからレゴ(R)ブロックのパーツを次々に取り出し、思い思いに組み立て始めた。
活動している間、名塩先生は、生徒のイメージを膨らませるために次のような声かけを繰り返した。
「『こんなものはあり得ない』という世界をイメージして」
「『何となく』を大事にしよう」
「現実は考えないでいいからね」
「ぶっ飛んでいる方が面白いよ」
「完璧につくろうとしないでね」
「『何となく』を大事にしよう」
「現実は考えないでいいからね」
「ぶっ飛んでいる方が面白いよ」
「完璧につくろうとしないでね」
生徒は作品づくりの方向性を聞いたのはつい先ほどであり、事前につくりたい作品を考えてきたわけではない。それにもかかわらず、開始と同時に迷わずにレゴ®ブロックを組み立て始め、わずか10分足らずで作品を完成させた。
(2)一人ひとりの生徒の多様な発想が作品として可視化
◎生徒の作品1
AIが進化した未来では、人間関係が希薄化し、人々はAIに支配されて周囲との関係性を遮断されてしまっている。人々が団結してお互いに関係を持ち、「AIの殻」にはまってシャットダウンされない世の中になってほしい。
◎生徒の作品2
水に何らかの作用を加えて固まらせて、それをもとに家を作ることで資源不足を解消する。固めた水は、ある施設で水に戻すことができる。また、生活排水も別の施設できれいな水に戻せる。
◎生徒の作品3
言葉を話せず、タイピングができない人でも、ベッドに寝たきりのまま、スクリーンに考えていることを映し出して、言語化できるようにしたい。
◎生徒の作品4
飛行機がワープして、移動時間を短縮できる世の中を実現させたい。
◎その他の作品
・緑がない場所に植物を増やせるカプセル
・地震を予知して土地を浮かせるシステム
・自然の力や生物の仕組みを土台とする社会
・3Dホログラム専用のカメラ
・重力を操作して建物の幅を調節し、使える空間を広くする
・交通事故の瞬間を衛星が随時撮影
・首長竜を復活させたい
・水の輸送システムをつくり、効率的な都市を計画
・緑がない場所に植物を増やせるカプセル
・地震を予知して土地を浮かせるシステム
・自然の力や生物の仕組みを土台とする社会
・3Dホログラム専用のカメラ
・重力を操作して建物の幅を調節し、使える空間を広くする
・交通事故の瞬間を衛星が随時撮影
・首長竜を復活させたい
・水の輸送システムをつくり、効率的な都市を計画
(3)意見交換を通して、作品やアイデアをブラッシュアップ
続いて、自分の作品を置いたままにして、時計回りに1つずつ席を移動。目の前にあるメンバーの作品の意図を推測し、グループ内で30秒間で説明し、その後、作者本人が解説するワークを行った。メンバーの推測を聞き、「本当は違うことを考えていたけれど、確かにそういった見方もできる」というように視野を広げていく姿が見られた。
自分の作品に関して質問された際は、深く考えずにつくった箇所でも、「特に意味はない」とは答えず、必ず意味を考えて説明するルールになっている。無理やりにでも意味づけをすることで思考が広がる場合がよくあるからだ。実際に、「このパーツはどういう意味?」などと質問され、答えに詰まりながらも説明しようと生徒たちはしていた。
メンバーとのやり取りを通して、自分の作品を振り返り、「こうすれば、もっとよい作品になる」といったアイデアが生まれる。そこで、グループワークの後、5ピース以内でブロックを追加できる時間を設け、作品をブラッシュアップさせた。
最後に、各自がワークシートに作品のアイデアやスケッチを記入し、授業を振り返った。(後編に続く)