【授業づくり】熊本県立第二高等学校の「二高ICEモデル」から 生徒の主体的な学びを促す指導を考える 前編
(1)ICEモデルを取り入れた、学校独自の授業づくりを実践研究
図1 「授業改善のための工夫の見せどころシート」
→シートを作成する過程で授業の理解を深めていく
② 教科会で「見せどころシート」を検討する
→同教科の同僚の視点によるインスピレーションの獲得
③ 同校の他教科の教員と「見せどころシート」について検討する
→教科を超えた教員によるインスピレーションの獲得
④ 他校の教員と「見せどころシート」について検討する
→外の教員の視点によるインスピレーションの獲得(今年度は「主体的な学びフォーラム」)
⑤ 「IDの前提(高校版)」(図2)に取り組む
→IDに関するチェック項目を定期的に振り返ることにより、理解の再構築を促す
⑥ 生徒の変容の様子を知る
(1)「学習設計マニュアル」への取り組みを実施した生徒の感想(各自の振り返り をシェアするお便り)を教員が共有することによって生徒の変容を認知する
(2)「ミライノカタチ発表会シナリオ」(1年生の「総合的な学習の時間」での オープンキャンパス報告会を工夫したもの・下記)のように、生徒が主体 となってグループワークを進めることで、生徒が主体的な学びを得られる ことを教員が認知する
(3)IDとICEの視点で作成した「生徒主体の授業デザインになっているかを問う授業振り返りシート」(授業評価の第二高校改訂版・図3)を分析し、授業改善の 視点を得る
図2 「IDの前提(高校版)」
~担当の先生の協力を得ながら、今日の発表会を楽しみましょう~
〇教室は6人グループ×7班にしておく。(先生と協力してください)
〇それでは、これから10分間、自分の「ミライノカタチ」を発表するための準備をします。発表は一人2分です。家庭科のホームプロジェクト発表会のシステムと同じです。1枚15秒を目途に8枚のKP(紙芝居プレゼンテーション)を作ってください。1枚の分量は、1行10文字程度、1枚3行程度です。書き込み過ぎないようにしてください。
「ミライノカタチ」の書き方が分からなくて取り組めなかった人は、書いてきた人に少しだけ見せてもらって、自分の発表原稿を考えてください。
それでは始めます。(タイマーで10分計測)
〇1番に発表してくれる人を決めてください。次からは時計回りに進みます。
発表は計測しますが、発表が早く終わってしまったら、大きな拍手はせずに、発表者への質問を考える取り組みを始めてください。
発表2分、質問考え時間1分、質問会2分で進みます。
〇終わりです。全員質問を考えてください。発表者は、自分に対してどんな質問が生産的かを考え、記録しましょう。(1分計測)
〇それでは、発表者の左隣から時計回りの順番で質問・返答を行ってください。(2分)
・・・・・(6人繰り返す)・・・・・
〇発表者を挟んで3人がグループ居残りです。それ以外の人は、他の班に移動して発表を聴きにいってください。
〇発表が終わったら、発表内容についてシェアしてください。(1分計測)
〇もとのグループに戻ります。聞いてきたことを共有します。(1分計測)
自分が今日考えた質問の中から、最も質の高いものを1つ選んでください。また、今日の活動の中で聞いた質問で、最も質の高いものを思い出しておいてください。その質問が、ICEのどのフェーズにあたるかを考えてください。
〇用紙への記入が終わったら、各自eラーニングに投稿を行ってください。
〇みんなで共有できて楽しかったですね。御協力ありがとうございました。
図3 「『生徒主体の学びのデザイン』がなされているかを問う授業振り返りシート」
(2)生徒に主体的な学びを促す問いかけとは?
①判断の入らない素直な問いかけ
②前の質問と考えにおける思考の連鎖を受けて、つながる問いかけ
③共感を持った問いかけ
の3つを大切にする「共鳴質問」とし、「見せどころシート」を活用しながら話し合った。
「既習事項を関連づけて思考を広げる指導に重点を置いていますが、生徒への授業アンケートでは、1クラス40人中10人が『授業で知識の関連づけが行われていると感じていない』といった結果がでました。どうすれば、私の授業の意図が生徒に伝わるのかが課題です」
「『関連づけができている』と捉えている生徒の根拠を探ると、授業の改善点が見えるのではないでしょうか。ICEモデルの観点から説明すると、生徒には最初に見方・考え方を教えますが、そこから生徒が自分で考えて関連づけができるよう、教員が意図的な問いかけをする必要があります。その問いかけによって、生徒に『自分で知識を関連づけられた』と実感させることができるでしょう」
(3)生徒が授業内容を実感できる問いかけとは?
数学科教員の「三角関数の単元では、測量について話して、授業内容に関心を持たせるなど、指導が上手な教員は授業内容と日常生活とを関連づける引き出しが多い」という意見には、多くの参加者が賛同した。
「例えば、自動車の仕組みが分からなくても運転できますが、探究者になるためには、その仕組みに関心を持ち、知りたいと思う姿勢が重要です。そうした姿勢を生徒に育むためには、効率重視の知識の伝達ではなく、必然性を感じて共感できる問いかけを、授業にできるだけ盛り込みたいものです。いったん疑問を持てば、生徒の思考は自然に広がります。教員が説明しすぎないことがポイントです」
ある教員は、「自宅がオール電化という生徒は、理科の実験で初めて火を見たと言い、火に対して私たちとは全く異なるイメージを持っていました。生活経験の違いで生じる認識の差は、意外にあるのではないかと感じさせられました」と語った。
「教員が『こう見えるでしょう』と教えるのは、適切ではありません。まず、子どもに絵画を見せて、自分の印象を持たせた後、『こういった技法が使われているから、このように見える』と言語化して説明します。その技法を理解させてから改めて絵を見せると、感覚と理論が結びついて理解が深まります」
「フィンランドの学校では、1つの解法を学んだら、必ず別の解法でも解答させます。例えば、三角関数を学んだ後、それ以外の解法で取り組ませると、『三角関数が使える範囲』が理解できるからです。授業で扱ったことしか学習していない生徒は、出題範囲の決まっている定期考査の問題には正解を出せますが、模擬試験などでは『どの解法を使えばよいか』を考えた経験がないため、問題に対応できないのです」
