2016/12/14
Shift│第14回 ものづくりの真髄を伝える専門学校が、学生の意欲を高め、クリエイターの在り方を変える [1/5]
日本では、大学新卒者の就職率が直近で5年連続上昇しており、2016年度のそれも97.3%という売り手市場だ。この国の景気が上向いているような錯覚にすら陥る。一方で、2008年のリーマン・ショックや2011年の東日本大震災などのたび重なる不測の事態は、グローバル社会が一瞬で大きく様変わりし得ることを教えてくれた。
そんな時代を生きなければならない子どもたちのために、政府は時代の変化に対応して現場レベルでイノベーションが起こせる人材の育成に乗り出した。たとえば、高等教育領域では、幅広い教養を学ぶ大学や技能に特化している専門学校とは別に、新しい高等教育機関(「専門職業大学」仮称)の設立を検討している。一方で、同じ高等教育でも専門学校の存在は、大学に隠れがちであることは否めない現状もある。では、これからの高等教育に求められる学びの質とは何であろうか。
現在、高等学校卒業者の約2割が専門学校へ進学しているが、そこでの職業教育を通じて「伸びた」学生とそうでなかった学生の経験の差異は、「実社会との接点」「熱意のある教員の存在」「相当の努力をして課題をやりとげる厳しさ」にあることが、ベネッセ教育総合研究所の調査※で明らかになった。 そこで今回は、社会で活躍できる職人の技術と奥深さを学べる学校として定評のある学校法人水野学園が運営する「ヒコ・みづのジュエリーカレッジ」を取材した。同校は短大や大学からの再進学先としても注目されており、実際に入学した2人に1人が再進学者という学校でもある。そこから見えてきた創造的な人材の育成をする専門学校における学びの質についてレポートする。
【取材・執筆】林 信行(ジャーナリスト)
【協同執筆】青笹 剛士(百人組)
【協同執筆】青笹 剛士(百人組)
売り切れ続出! クリエイターズ・マーケット開催
今年10月、ヒコ・みづのジュエリーカレッジの青山校舎では、クリエイターたちが自作の製品を展示、紹介して販売する「クリエーターズ・マーケット」というイベントが開催された。並べられているのは、貴金属のブローチや指輪、ネックレス、腕時計、バッグなど革製品、サイズをカスタムオーダーできる奇抜なデザインのスニーカーなどの数々だ。セレクトショップに置かれていそうな人気アイテムには、早々に「売り切れ」の札がついている。ほかでは見かけない一点物のファッションアイテムが多く、ついつい財布の紐も緩みがちだ。
クリエーターズ・マーケットの様子
何も知らずにフラッとこの場所を訪れた人であれば、いったいどこからこれだけクオリティの高いモノをつくるクリエイターを集めてきたのかと驚くかもしれない。そんなクリエイターたちはほかでもない、この学校に通う学生たちだ。「クリエーターズ・マーケット」とは、ヒコ・みづのジュエリーカレッジに在籍する有志の学生が参加する学園祭なのだ。