2014/10/10
シリーズ 未来の学校 第4回 | 石巻市雄勝町のムーブメント、地域住民と支援者がつくるホンモノの自然学校【前編】[6/6]
【前編】 廃校になった小学校を、世界中の子どもたちとの交流の場へ [6/6]
持続可能にするために雇用を生み出す
魅力的な学校には人が集まる。素晴らしい自然とあいまって、訪れた人は雄勝のファンになる。ファンは雄勝の素晴らしさを友人に伝え、友人は雄勝を訪れてまたファンになる。過疎地域では、人が来続けることが重要だ。それがやがて定住への足がかりになるからだ。立花さんは学校再生プロジェクトについての展望を次のように話した。
「このプロジェクトを持続的にするためにも、雇用を生み出しながら収益も生み出すモデルをつくっていきたいと考えています。雇用については、まずは宿泊業に関係したものを想定しています。ここから新しい雇用が生まれ、地元の人々が集まるコミュニティの中心となり、これまでやってきた体験プログラムを通して、世界中から人々が集まる場所にしたいです」
立花さんは他地域との連携の大切さについても指摘する。
「過疎地域で同じような思想のもと、すでにプロジェクトを立ち上げているところとは連携をとっていきたいです。また、全国には廃校がたくさんありますので、こうすれば人が集まる、というようなモデルをつくり、それを真似てもらうことでその地域の1次産業なども活性化して、結果的にはいい方向に進むのではないでしょうか」
「過疎地域で同じような思想のもと、すでにプロジェクトを立ち上げているところとは連携をとっていきたいです。また、全国には廃校がたくさんありますので、こうすれば人が集まる、というようなモデルをつくり、それを真似てもらうことでその地域の1次産業なども活性化して、結果的にはいい方向に進むのではないでしょうか」
町の交流人口を増やす突破口に
東日本大震災から3年半経った。定期的に東北地方の被災地を訪れている人などを除くと、住まいが被災地から遠く離れている人には、被災地の現在の状況は意外と知られていない。
実際、今回訪れた雄勝町の復興への道のりは、想像していたよりも長いと感じた。多くの人は未だに仮設住宅に住んでいる。漁港の大型機械も未修理のものがほとんど。何より人が戻ってきていない。震災前に4300人いた町の人口は、現在およそ1000人にまで減っている。交流人口を増やす突破口になる学校再生プロジェクトへの期待は大きい。
前編の最後に、立花さんからのメッセージを伝えたい。
「震災から3年半経っても未だこういう状況です。まだ雄勝に来ていない人は是非一度足を運んで、学校再生プロジェクトに参加してみてください。人生のなかで、学校を直すような経験はなかなかできないと思います。雄勝を第二の故郷にしてみてはいかがでしょうか」
「震災から3年半経っても未だこういう状況です。まだ雄勝に来ていない人は是非一度足を運んで、学校再生プロジェクトに参加してみてください。人生のなかで、学校を直すような経験はなかなかできないと思います。雄勝を第二の故郷にしてみてはいかがでしょうか」
─ ジャーナリスト 林 信行の視点 ─
雄勝町は、リアス式海岸という地形のおかげでわずか数分のドライブで海や山、川、沢そして滝まで楽しめるあらゆる形の自然を体験できる場所になっている。
そんな雄勝で行われるsweet treatの1次産業の体験プログラム。漁業体験の船上では、スマートフォンを取り出して魚の様子を撮影できたり、スイッチを押せば自動的に網がまきとられたりと現代的なテクノロジーを感じる一方で、網にかかった魚をはずすのも、それを選別して稚魚を海に返すのも、テクノロジーでは代替できない人の手と意思の働き。取材を終え、夜疲れきって虫の音が響き渡る寝床に入ると、強大な大自然に抗って文明を築いてきた先人たちの偉業と歴史の積み重ねにも畏怖の念を感じずにはいられない。
ここは、人間がなんのために生きているのかを再び考えさせられる場だ。
次回後編では、学校再生プロジェクトに関わる地元の人たちの視点を手がかりに、外部から来た支援者との共生と復興への道を探る。