2014/10/10

シリーズ 未来の学校 第4回 | 石巻市雄勝町のムーブメント、地域住民と支援者がつくるホンモノの自然学校【前編】[3/6]

【前編】 廃校になった小学校を、世界中の子どもたちとの交流の場へ [3/6]

体験プログラムのスペシャリスト

 油井さんは幼少から米国で過ごし、ペンシルバニア州のレバノンバレー大学音楽学部を卒業後、ニューヨークで音楽関係やMLB、NFLといったアメリカのメジャースポーツを放送する仕事に就いていた。その後、2004年9月、世界中で展開されている、子ども向けの職業体験型テーマパーク「キッザニア」を日本に導入する会社を設立して、2006年にキッザニア東京を開業、2013年まで職業体験プログラムの開発責任者を務めていた。
 現在はsweet treatの理事という役職に就いているが、実際には人手が不足しているので仕事は何でもやっている。この日もサマースクールのプログラムで、子どもたちと一緒に竹を火で炙る作業などを行っていた。もちろん、理事としての仕事も多忙だ。ひとつは東日本大震災を経験した、築90年の老朽化した小学校を修復するための資金を集めること。相当な資金を要するので、企業や個人の協賛を得たり、国や財団から補助金を得たり、最近ではクラウド・ファンディングを使って資金を調達したり、さまざまな方法で支援を受けられるように日々動き回っている。
 もうひとつの大きな仕事は教育プログラムの開発だ。学校というハコだけきれいになっても、子どもたちに対する教育プログラムが充実していなければ意味がない。
 「学校再生プロジェクトでは、豊かな自然に囲まれた環境を生かして、子どもたちにとって魅力的なプログラムを提供します」と油井さん。「キッザニア」での職業体験プログラムを開発していた経験も生かされそうだ。

都市と田舎は、お互いの存在を必要としている

 学校再生プロジェクトの意義について、油井さんは次のように語る。
 「現在、都市部の子どもたちを中心に、自然を体験する機会が少なくなり、そういう体験自体が貴重です。これまでsweet treatが子どもたちに行ってきた1次産業の体験プログラムは好評でした。また、田舎は人口が減る一方で、価値ある自然資源が豊富にある現実があります。雄勝のように、海と山が凝縮して共存するエリアはそう多くはありません。そして、こんなに古くて可愛らしい学校があるのも奇跡です。地元の人たちも、子どもとの交流を喜んでいます。外から雄勝に来る人と地元の人はお互いの存在を必要としていると感じます」