【まとめ】子育てにおいて大切な価値観を、マクロとミクロで考える

秋田喜代美●あきた・きよみ

東京大学大学院教育学研究科教授、研究科長・教育学部長。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。東京大学教育学部助手などを経て、現職。専門は、保育学・発達心理学・教師教育。著書に、『新保育の心もち』(ひかりのくに)などがある。

縦断調査において、個々の家族の物語をひもといていく必要性も

 本日の発表では、母親、父親の子育てに関する気持ちが自身の養育行動に個別に影響するだけでなく、両者の育児スタイルがパートナーに影響を与えあい、さらに子どもの社会情動的発達に影響を与えていくという報告がありました。遠藤先生や氏家先生のお話にもありましたが、夫婦や家庭は、それぞれが物語を生きています。「温かい応答性」という1つの項目にとっても、それぞれの家庭ではどのような行為を具体的に指しているのか、あわせて分析していくことが今後、必要になっていくと言えます。
 また、今回は、子どもと家族に焦点を当てていますが、Cedepでは園での子どもに焦点をあてた縦断研究も行っています。子どもと園、家庭と地域、家庭と園、祖父母や親族、自治体における子育て支援システムなど、コミュニティとの連携によって子育てをより充実させていくことが大切と考えています。また、教育産業やメディアが、子育てをどのように報じていくのかも重要だと思います。
 このシンポジウムには、様々な方にご参加いただいておりますが、このエビデンスをもとに、子育てにはどういう価値観が大事なのか、そのグランドビジョンをつくっていく場となれば本調査を持続していく意義があると考えています。