いやらしい画像やビデオ映像、出会い系サイト、誹謗(ひぼう)中傷や言葉のいじめ、個人情報を聞き出すような書き込み……インターネット上にあふれる有害情報から、子どもをどう守るかが、大きな課題になっています。対策のひとつとして、子どもが勝手に有害情報に接続できないようにする「フィルタリング」のソフトやサービスが普及しつつあります。しかし、それで本当に安心なのでしょうか。
内閣府が先頃発表したデータによると、子どもにとって身近なインターネット接続機器である携帯電話(ケータイ)でのフィルタリングの利用率は、小学生で6割、中学生で5割、高校生で4割となっています(2009<平成21>年11月末現在)。普及が進んできた背景には、携帯電話会社に対して、子ども用の新規契約時には、原則としてフィルタリング機能が付いたものを提供するよう義務付けられたこともあります(同年4月から)。有害情報に対して自覚の少ない子どもを守るには、好ましい結果と言えるでしょう。
しかし、思わぬ落とし穴もあります。フィルタリング事業などを展開する「ネットスター」の調査によると、子どもがまず触れるインターネット接続機器は、ケータイやパソコンよりも、ゲーム機である場合が多い、というのです。保護者にしても、ゲーム機からネットに接続できることは知っていても、自分の子どもが通信機能を使って知らない人と一緒に遊んでいることに気が付いている人は、そう多くありません。通信設定も、子どもの2人に1人は「親」がしていますが、4人に1人は「自分で」したといいますし、友達やきょうだいに設定してもらった場合もあります。最初は親に設定してもらったとしても、そのうち自分で設定を解除することも考えられます。ケータイやパソコンでも同様です。
子どものインターネット接続問題の第一人者である下田博次・NPO法人青少年メディア研究協会理事長(元群馬大学大学院教授)は、「保護者のためのフィルタリング研究会」(ネットスター、ヤフーなどが共同で設立)の発足記者会見で、「ペアレンタルコントロールが、国民的・社会的常識になっていない」と、警鐘を鳴らしました。ペアレンタルコントロールとは、保護者の管理下で、子どもにネット機器を使わせることです。
確かに有害情報対策として、法的な規制や、業界の自主規制は進んできました。しかし、基本はあくまで機器を使わせる保護者に責任がある、というのが「世界の常識」であり、「フィルタリングをかければいい、というものではない」と、下田理事長は訴えます。最初はごく限られたサイトだけを認め、親子で話し合いながら、少しずつ接続できるサイトを広げていくべきだ、というのが、下田理事長の提案です。
内閣府の調査でも、ケータイやパソコンの危険性について学んだ保護者ほど、フィルタリングなどの対策を取っている傾向が見て取れます。まずは保護者が実態をよく知り、じっくり子どもと話し合うことから始めることが、求められていると言えるでしょう。

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。
1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代〜模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。
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