新年度から
東京都品川区立大崎中学校の校長に、前内閣官房内閣参事官の
浅田和伸さんが就任しました。浅田校長はもともと、文部科学省のキャリア(国家公務員採用I種試験合格者)です。同省では以前から
キャリアを都道府県教育委員会の教育長や課長などに数年間出向させているほか、2007(平成19)年度からは教員免許を持つ
若手職員数人を中学校の教員として1年間派遣する制度を導入していましたが、校長就任は異例のことです。
こう聞くと、つい「えっ、天下り?」と思ってしまうかもしれませんが、実はそうではありません。今回の人事は文科省主導ではなく、浅田校長自ら望んだのがきっかけでした。
浅田校長は大臣秘書官事務取扱などを歴任し、課長昇進後に内閣官房に出向して教育再生会議・同懇談会などを担当。キャリアの中でもエリートコースを歩んでいたと言えます。そんな時期に学校現場への転身を選んだのですから、人事の慣例から言えば、行政トップである事務次官への道を自ら捨てたに等しいことです。
それでもあえて学校現場へ飛び込もう、と浅田校長を決意させたのは、「本来はつながっているべき教育行政と学校現場の心が、離れてしまっているのではないか」という危機感からだったといいます。また、先生たちが長時間がんばっても、一般の人たちは学校に厳しい目を向けていることも確かです。先生たちが十分に力を発揮し、保護者や地域住民に信頼される学校をつくるためにはどうすればよいか。役所にいては見えない実態や解決策を自分で探ろう、というわけです。「学校は、チームとしての総合力が大事。先生たちの能力が最大限発揮できるような環境づくりをしていきたい」と抱負を述べています。
なお、大崎中の校長を務めたあと、そのまま学校現場に残るのか、文科省に戻るのかは、現段階ではまったくの白紙だと言います。
一方、品川区では、区内全域で学校選択制や小中一貫教育を進めたり、今春からは単独で一部の教員を採用したりするなど、
独自の教育改革を進めています。若月秀夫・区教育長は、浅田校長がそんな同区の教育に違った視点をもたらすとともに、地方の実態を国に知ってもらい、教育行政を見直すきっかけになることを期待。「特別扱いはしないが、新しい試みには全力で応援する」とエールを送っています。
確かに今、公立学校や教育行政に対する信頼は揺らいでおり、保護者や地域住民の期待に応えるような改革が求められています。その一方で、現場の先生たちはただでさえ残業時間がほぼ月40時間という忙しさに追われており、その上に次々と打ち出される改革メニューを消化し切れず、「教育改革疲れ」を起こしているとさえ言われています。そんな悪循環を断ち切り、国をも動かす「現場からの教育改革」ができるかどうか。浅田新校長の手腕に注目していきたいものです。