公立学校の教員に、教員免許のない社会人や専門家を採用しようという動きが広がりつつあるようです。広い社会的視野や専門的能力を持った優秀な人材を教員に登用することが狙いですが、教員免許がない者を採用することについては、教育界の中に根強い反対意見もあります。全国的に見れば教員免許のない社会人の採用はまだまだ少数ですが、今後の学校教育の活性化につながるのかどうか注目されるところです。
秋田県教育委員会は今年2月、39歳までの理・工学や教育学などの博士号保有者を対象にした教員採用特別選抜を実施しました。最先端の知識を学校現場に伝えることが目的で、海外からも含めて全国から57人の「博士」が応募。4月に5人が正式採用されたほか、1人が非常勤採用されました。来年度の教員採用でも博士号保有者の特別選考を続けるとともに、教員免許がなくても受験できる「社会人特別選考」を導入して、小学校の英語担当教員と、高校の外国語・情報・保健体育の教員を採用する予定です。
なぜ教員免許がない社会人を採用できるのでしょうか。それは、特定の分野で優れた知識・経験があると都道府県教委が認めた場合、教員免許を与えることができる「特別免許状」という制度があるためです。1989(平成元)年度から始まったのですが、当初はそれほど活用されませんでした。これに対して政府の規制改革・民間開放推進会議(現在の規制改革会議)は2005(平成17)年末の最終答申で、規制緩和という面から特別免許状の活用による社会人の積極的な採用を提言しました。
それを受けて文部科学省が特別免許状の活用を都道府県教委に通知したため、少しずつ特別免許状の授与件数が増加し、同省の調査結果によると、23道府県教委(指定都市含む)で特別免許状を活用した社会人の特別選考が行われています。ただ、実際には高校の工業科や看護科など専門学科の教員や、スポーツ選手や指導者など体育教員のみ、というように、一部を特別選抜の対象としているところがほとんどです。
ところが、2007(平成19)年度の教員採用試験で、京都府教委が「スペシャリスト特別選考」(高校の理科と英語)、京都市教委が「数学・理科志願者の特例」(中学校と高校の数学・理科)を創設し、教員免許がない社会人を対象にした教員募集を始めました。これに2008(平成20)年度は先の秋田県教委の特別選考が加わることになったわけです。このほか、文科省によると、教員免許を持っている社会人を対象にした「社会人特別選抜」は27都道府県教委(指定都市を含む)で実施されています。
社会人の教員採用を歓迎する声の背景には、現在の教員に対する不信感があることは否定できないでしょう。免許のない者を含む社会人の教員採用の増加は今後も進むと予想されますが、同時に、多様な人材を教員に採用することと、大学で養成する教育の専門職としての力とのバランスはどうあるべきなのかも、考える必要があるでしょう。
<参考>
2008年度「平成20年度教員採用等の改善に係る取組事例集」(文科省)
2008年度「平成20年度公立学校教員採用選考試験の実施方法について」(文科省)
2007年度「平成19年度公立学校教員採用選考試験の実施状況について」(文科省)