対話型ワークショップを通した学びのその後 ~高校生未来プロジェクト参加生徒の座談会より
ベネッセ教育総合研究所の調査では、近年の高校生の学びの意欲が低くとどまっている一方で、東日本大震災以降、高校生の社会貢献への意欲が強まっていることが確認されている。
そこで、「学び」が社会への貢献につながっていることを実感することで、高校生の学ぶ意欲が高まるという仮説の下、高校生が学びの意味を主体的に議論する対話型ワークショップを2012年度より実施している。
本ワークショップに参加した生徒たちが、学びの意味を語り合ったことで自分自身にどんな変化があったのかを語り合った。
そこで、「学び」が社会への貢献につながっていることを実感することで、高校生の学ぶ意欲が高まるという仮説の下、高校生が学びの意味を主体的に議論する対話型ワークショップを2012年度より実施している。
本ワークショップに参加した生徒たちが、学びの意味を語り合ったことで自分自身にどんな変化があったのかを語り合った。
参加者
小池悠菜さん
岩手県出身。
上智大学 総合人間科学部 1年生
江川みどりさん
岩手県出身。
日本女子大学 人間社会学部 入学予定
前田葉月さん
長崎県出身。
神戸大学 医学部 入学予定
川原大洋さん
神奈川県出身。
中央大学 法学部 入学予定
*プロフィールは2014年3月取材時のものです。
岩手県出身。
上智大学 総合人間科学部 1年生
江川みどりさん
岩手県出身。
日本女子大学 人間社会学部 入学予定
前田葉月さん
長崎県出身。
神戸大学 医学部 入学予定
川原大洋さん
神奈川県出身。
中央大学 法学部 入学予定
*プロフィールは2014年3月取材時のものです。
ワークショップに参加して、高校生活はどう変わったか?
——全国から高校生が集まって、2日間にわたって学びの意味について語り合うワークショップに参加したことで、それ以降の皆さんの高校生活にどんな変化がありましたか?
川原さん 「やりたいこと」を自分の中にしっかり持っている人たちに会って、「僕も高校生活を頑張らなければ!」と刺激を受けました。実際、そのおかげで、高校の勉強や課外活動などいろんなことに意欲的に取り組めたと思います。参加者とはソーシャル・ネットワーキング・サービスで交流を続けたのですが、それぞれ頑張っている様子を見るたびに、僕も負けられないなと思ったものです。
前田さん ボランティアなどいろんな活動をしている高校生が、それぞれ自分の夢を語る姿を見て、話すことが決して得意ではなかった私も自分を語りたいと思いましたし、こんなにすごい高校生が世の中にはいるのか!と自分の世界観が広がった気がしました。それからは知らない人と話をすることも苦ではなくなりましたし、進学先も地元に限定せず、もっと広い視野で探そうという気持ちに変わりました。
小池さん 「世界を変えたい」と本気で考えている、すごい夢を持った高校生が全国にはたくさんいることがわかって、私も視野が広がりました。そして、身の回りの出来事や、自分の進路について、「もっと別の考え方はないだろうか」といろんな視点で考える習慣が身に付いたように思います。
江川さん 「何のために学ぶのか」という、高校生なら誰もが考えるテーマについて、相手の意見を否定することなく、耳を傾け合う経験は、勉強がそんなに好きではなかった私にとっては本当に貴重なものだったと思います。と同時に、私は自ら望んでこのワークショップに参加したけれど、あまり関心を持っていないような人たちもこうした場を体験することで、勉強への意識が大きく変わるのではないかと、高校生にとってのワークショップの重要性をずっと考えるようになりました。
ワークショップで見つけた「学びの目的」は?
——ワークショップの大きなテーマの一つが、「自分なりの学びの目的」を考えるということでした。それぞれが二日間で見つけた「学びの目的」は高校生活や大学生活で変化したのでしょうか?
江川さん それまであまり勉強に意欲的ではなかった私ですが、プロジェクトで仲間とたくさん話す中で、「楽しいことじゃないと続かない」と気がついたんです。だから、私は「勉強の中に楽しさを見つける」という学びの目的を立てました。実際、それまでも私は、自分の興味のある社会問題などについては、何時間でも図書館で調べることができたんです。そうした自分を振り返っても「楽しいから学び続けられるのは本当だな」と思いました。
前田さん ワークショップの中で出てきた「目的を仮決めする」という言葉はとても印象的でした。それまでは毎日コツコツ勉強していたし、決して勉強は嫌でもなかったけど、正直、与えられたものをこなすので精いっぱいで「何のために」ということはあまり考えたことがなかったんです。でも、「仮決め」と気楽に考えたとき、「わかるようになることが楽しい」「勉強したいからやる」と自分なりの言葉で目的を掲げることができました。
川原さん ワークショップに参加したころの学びの目的は、大学入試でした。でも、大学入試が終わった今、学問そのものを楽しもうと、新しい目的を仮決めして、内心ワクワクしています。
小池さん 私はワークショップの中で苅谷先生とお話しする機会があったのですが、「大学生になったら、一つの分野にとらわれず、いろんなことに興味をもって学ぶといい」とアドバイスをいただきました。実際、大学に入ってからは他学科の必須科目を履修したりしているのですが、それが想像以上に面白く、自分の思考の幅を広げてくれるんです。学びに対して、いろんな視点を持っておくことが大切なんだと大学生になって実感しました。
語り合い、考え抜いた経験と大学入試の関係
——実は、今回集まっていただいた皆さんは、AO入試、推薦入試で大学に合格しています。ワークショップに参加した経験は入試に何か影響を与えましたか?
小池さん 私はAO入試で進学したのですが、そこで課される論文、面接では、いろんな視点で物事を考えること、そして正解かどうかわからなくても自分の意見をしっかり言える姿勢が重要だと思います。私は、ワークショップに参加したことで、そうした力が付いたと思っています。
前田さん 高校でも授業中に話し合いはあるけれど、どれが正しいかを皆で探すようなものがほとんどです。ワークショップのように、答えが一つではないテーマを長時間かけて話し合い、その中で一人ひとりに方向性が見えてくる体験は初めてでした。AO入試では模擬講義を受けた後に面接があったのですが、いろんな質問に対して気後れすることなく自分の考えを言えたのは、ワークショップの経験があったからだと思います。それまでの自分なら、そもそも面接や論文が課される入試は選ばなかったはずです。
川原さん 僕が受験したAO入試でもディスカッションが課されました。自分の考えをどんどん言うことができたのは、あの二日間の経験が土台にあったからだと思います。
小池さん 高校の授業では「間違ってはいけない」という気持ちが先に立ちますが、大学では答えのない問題、間違いも正解もはっきりしないテーマに向き合う場面が多くあります。あのワークショップで、いろんな人と議論し、ほかの人の考えを踏まえて自分を深めた経験は、大学に進学したときに本当に役立つものだと思います。