2021/11/01

日本教育工学会論文誌 論文掲載報告「中学校新学習指導要領における思考スキルの抽出」

はじめに

ベネッセ教育総合研究所言語教育研究室研究員の小野塚若菜と鳴門教育大学准教授の泰山裕先生の共著論文が論文誌に掲載されました。

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研究の目的

平成29年告示の中学校学習指導要領(新学習指導要領)では、新しい時代に求められる資質・能力のひとつとして「思考力・判断力・表現力等」の育成が重視されており、教科横断的に取り組むことを求めています。では、新学習指導要領が標榜する、学校教育で育成を目指す思考力とはどのようなものでしょうか。本研究では、中学校段階で各教科および教科共通で重点的に育成しようとする思考力の特徴を明らかにすることを目的とし、新学習指導要領から、教科横断的な思考力の枠組みである思考スキルと対応づけられる学習活動を抽出し、その抽出数に基づく分析を行いました。

研究の概要

<研究テーマ>

中学校新学習指導要領における思考スキルの抽出

<研究方法>

「多面的にみる」「順序立てる」「比較する」などというように、思考を行動レベルにまで具体化させたものを思考スキルと言います(泰山裕, 小島亜華里, 黒上晴夫,2014「体系的な情報教育に向けた教科共通の思考スキルの検討」)。本研究では、中学校新学習指導要領「解説」の各教科に設定された「思考力・判断力・表現力等」の記述を、ひとつの学習活動であることが想定できる単位に区切り、その単位で生徒に求められる思考活動を想定し、先行研究で得られた19種類の思考スキルから該当するものを対応付けました。対応付けの妥当性については、各教科の専門性のある複数の協力者が協議し、検証をしました。そして、抽出された思考スキルを教科別にカウントしました。

<主な結果と得られた示唆>

中学校新学習指導要領の分析から数多く抽出された思考スキルには国語、数学、理科、社会の4教科それぞれに特徴的な傾向が見られました(表を参照)。たとえば,国語科では文章の表現方法を客観的にとらえる活動が多く、抽出数の4分の1が「評価する」という思考スキルであったり、数学科では,数学的な表現を用いて説明することが求められるようになることから、「理由づける」が最頻出になっていたりするなど、各教科の「見方・考え方」の側面が見えてきました。また、教科共通で頻出する思考スキルも明確になりました(表の右列)。本研究の結果は、思考スキルでつながるカリキュラム・マネジメントの指針づくりに資することが期待できるものです。

※本論文p.3 表2を引用

<発行日>

2021年2月20日

詳細については、以下の資料をご覧ください。
⇒J-STAGE掲載

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