2014/07/22

Shift│第3回 夢の病院で始まる、「IT」と「デザイン」から生まれた教育の新しいカタチ 【前編】チャイルド・ケモ・ハウスの挑戦 [5/6]

インフルエンザで威力を発揮した「E-Lecture」

 アップ社はE-Lectureの開発後、社内に専用のスタジオを設置するところまで授業の質を高めたが、さらに加速したのは2012年にiPadに対応してからだと、水田氏は言う。
 「自分で自由に使えるパソコンを持っている学生がまだまだ少数派、ほとんどの家では家族共有のパソコンが空くのを待ち、親の目を気にしながら授業を受けていた。これがiPadなら、自分の部屋に持っていって講義を受けることもできる」
株式会社アップ 水田 猛氏
 インフルエンザが大流行した年、E-Lectureはアップ社が運営する塾の生徒たちに、まざまざとその威力を見せつけた。流行がひどい年には、生徒たちに外出禁止令が出されるので彼らは塾に来ることもできない。そこで社内で対策を話し合い、塾の講義をE-Lectureで提供することになった。生徒からは講義を受けられるのを楽しみに待っていた」という反応が多く、遠隔授業の評価がさらに上がることになる。
 こうした経験から、アップ社はE-Lectureをさまざまな場所で利用してもらおうという取り組みを始める。岡本剣氏は同社でE-Lectureを広める仕事をしているひとりだ。ある時、岡本氏は新聞でチャイルド・ケモ・ハウスの記事を見かける。すぐに神戸市の医療産業都市構想グループを通してアポイントを取って施設を訪問すると話がまとまり、2013年8月には試験的にE-Lectureを使った「特別講義」が行われることになる。