2014/07/22
Shift│第3回 夢の病院で始まる、「IT」と「デザイン」から生まれた教育の新しいカタチ 【前編】チャイルド・ケモ・ハウスの挑戦 [4/6]
臨場感を伝えるITシステム
チャイルド・ケモ・ハウスの遠隔授業に使われているインフラは、株式会社アップが提供する「E-Lecture」というITシステムサービスだ。同社は学習塾や英会話教室、幼児教室、スポーツクラブといった幅広い教育サービスを提供する会社で、日本でインターネット接続サービスが広まりつつあった頃、ユーザがパソコンを使って学習するサービスとしてE-Lectureを開発した。
現在は無料の動画配信サービスが数多くある時代。そんな中でE-Lectureのアドバンテージとなるのは、アップ社の様々な要求に応えてきた講師陣によるノウハウの蓄積だ。多くの講師が特にこだわったのが、まるで目の前に生徒たちがいるような臨場感と、生徒たちの反応をダイレクトに感じられるようにすることだったと、同社の水田 猛氏は言う。
講義の画面は下の写真の通りで、左上に講師の映像、右上にホワイトボードやスライドの映像、左下に先生や同じ講義を受けている人たちとの間に文字で対話をするチャット領域、右下にはホワイトボードやスライドを記録する機能、そして「うん」及び「え?」という2つのボタンが用意されている。
於保氏が担当する、「デザイン」の授業画面
この2つのボタンにはちょっとした工夫があり、生徒が講義を聞きながら納得した際に「うん」ボタンを連打すると、画面上でその反応が「うん うん」、「なるほど」、「感動的」などに順次変化していく。逆に「え?」ボタンを押し続けると「??」、「???」、「!!」と変化する。この気軽に連打できる2つのボタンを使って生徒たちは反応を示すことができる。
一方、講師の手元に置かれたパソコン(あるいはiPadなどのタブレット)には、どの生徒がどんな反応を返したかはもちろん、席から離れているのか寝ているのか、しばらく反応を返していない生徒は誰かということも把握できるようになっている。
また、生徒たちの画面に映し出されているスライド上に、丸印や矢印を書き加えたり、3択・4択問題を表示してその場で答えさせたりするやりとりも可能だ。こうした双方向のやりとりと工夫が、講義にライブ感を与えている。
これに加えてE-Lectureにはオンデマンド配信の機能もある。講義に出られなかった人が、あとから録画された授業を自分に都合のいいタイミングで受ける機能だ。録画とはいえ先生は映像で語りかけてくるし、スライドも切り替わる。さらには周囲の他の生徒たちの反応も、リアルタイムに行なわれた授業と同じタイミングで再生され、本番授業の時の臨場感はそのまま再現される。
E-Lectureは、授業中の生徒たちからの反応が記録されることで、講師がどの話をした時にどんな反応があったのか振り返り調査できるので、その後の講義の参考にすることも可能だ。