2015/01/09

シリーズ 未来の学校 第5回 | 秋田県発、リベラルアーツ教育がグローバル人材を輩出する【後編】[6/7]

【後編】 ワールドクラスのリベラルアーツカレッジを目指して [6/7]

幅広い知識を背景に自己を語る必要性

 小吉雄也(こよしゆうや)さんは、AIUのグローバル・ビジネス課程を卒業後、三菱マテリアル株式会社に入社して3年目。現在は原料部で鉱石を仕入れる仕事に就いている。はじめに、この会社を選んだ理由を聞いた。
 「留学を経て、日本の存在感をもっと知らしめたいと思いました。特にモノづくりです。なかでも、企業間取引に興味があったので、素材メーカーであるこの会社を志望しました」
 小吉さんは、現在の仕事内容を次のように話す。
 「チリ、ペルー、カナダ、オーストラリア、インドネシアなど、環太平洋の国々から鉱石を買っています。太平洋上の船の位置を確認しながら、その鉱石をいつ船に積むか、荷上げをいつにするかなどのスケジューリングもしています」
 商社を間に挟む場合もあるが、基本的には外国の会社と英語でやりとりしている。学生時代の経験もあり、特に違和感なく仕事をしているという。小吉さんが留学していたのは、米国のミシシッピ州のミルサップスカレッジ。留学時代、AIUのリベラルアーツ教育の意味を強く実感した。
 「留学時代、あなたはどう思うのかということを、クラスメイトによく聞かれました。例えば、カフェでご飯を食べながら、歴史や宗教、文化、娯楽など幅広いジャンルについて友達と話す機会がよくありました。そのとき、自分が思っていることを英語で伝えるのですが、正しく伝えられているのかどうか疑問に感じました。そこであらためて、まずは日本人としての正しい見解をもち、それを正確に世界中の人々に発信する必要があると感じたのです」

─ ジャーナリスト 林 信行の視点 ─

 ITジャーナリストの視点でいうと、今はまさに蒸気機関や電動機(モーター)が発明されて産業革命が始まるのと同じように、スマートフォンやソーシャルネットワーク、3D技術などの登場で、社会や生活風景が21世紀後半に向けて一変する時代だ。こうした時代、テクノロジストも大事だが、それ以上に大事なのが、もっと幅広い視点と教養を身につけ、課題の本質を見抜いて考えられる人材。世界トップ企業でスマートフォン革命の先導者でもあるアップルの創業者、スティーブ・ジョブズは常にアップルを「テクノロジーとリベラルアーツの接点に立つ会社」と語ってきた。就職率100%も魅力かもしれないが、それ以上に同校が、これまで日本では軽視されてきた「リベラルアーツ」に特化した学校という点でも今後に注目していきたい。