2015/01/09

シリーズ 未来の学校 第5回 | 秋田県発、リベラルアーツ教育がグローバル人材を輩出する【後編】[5/7]

【後編】 ワールドクラスのリベラルアーツカレッジを目指して [5/7]

モロッコで受けたカルチャーショック

 忠津亜依子(ただつあいこ)さんは、大手自動車メーカーに勤める入社2年目の社会人。AIUの卒業生だ。神奈川県厚木市にあるテクニカルセンターで働く彼女に話を聞いた。

─ 現在の仕事の内容を教えてください。

 「共同購買本部の部品調達室で、ホイールの調達をしています。例えば、米国と中国で自動車をつくる場合、それぞれの拠点のバイヤーと連絡をとり、数社の見積りの内容をみて彼らと相談をして、そのプロジェクトで使うホイール会社を決めていく仕事です」
 海外留学は、モロッコのイフレーンにあるアル・アハワイン大学の学校内の寮で、モロッコ人と共同生活を送っていた忠津さん。留学当初、相当なカルチャーショックを受けたという。
 「大学の授業は英語ですが、モロッコ人は日常的にアラビア語とフランス語を交えて使います。しかし、当時モロッコの識字率が50%ぐらいだったので、例えばレストランのウエイターがメニューを読めないことはよくありました。また、留学当初、近くの市場へ買い物に行くと、現地の人が20円で買えるものを、500円で売りつけられました。こんなんじゃ、生活できないって(笑)」
 その市場にルームメイトのモロッコ人と買いに行けば現地価格で買えたという。しかし、彼女は観光旅行で来ているわけではない。これから1年間生活するためには、現地の人間として生きていく必要がある。
 「毎日めげずに同じ市場へ行って、現地の人と仲良くなりました。それで、ようやく現地プライスで買えるようになったのです」

いつかは故郷の力になりたい

─ 現在の仕事を選んだ理由を教えてください。

 「AIUに入学したときは、発展途上国を開発するような仕事に就きたいと思っていました。ところが、大学3年時にモロッコに留学した際、JICAの人と現地の病院などを見て回ったときに、開発だけでは国そのものが底上げされないことを目の当たりにしました。途上国の人々は、モノをもらうだけではなく、自分たちが競争を経て働いた結果として、国が成長するのではないかと思いました。自動車メーカーは海外に工場があり産業としても大きいので、発展途上国の成長に貢献できると思いました」

─ AIUで学んだ事は仕事に生かされていますか。

 「AIUの少人数授業や留学先のモロッコでは、あなたはどう思うのかと必ず聞かれ、自分の意見を言わなくてはならない環境にいました。物怖じせずに自分の意見を伝える力は鍛えられたと思います」
 「大学時代に秋田県庁の仕事のアシスタントで、限界集落を調査していました。調査をしていると、こんなに魅力がある土地なのにいずれなくなるなんて、何とかしたいと思いました。いつかは自分の故郷のために何かができたらいいなと思います。もっと日本を元気にしたいです」