2014/10/24
シリーズ 未来の学校 第4回 | 石巻市雄勝町のムーブメント、地域住民と支援者がつくるホンモノの自然学校【後編】[4/6]
【後編】 雄勝の自然学校の先生は、地元の人々 [4/6]
海が好きだから
震災の前には4隻の船を所有していた佐藤さんは、大津波ですべての船を失った。最初は「この状況で養殖ができるのか?」と思ったという。大津波から1ヶ月経ったある日、漁師の友だちと集まり、今後養殖漁業を続けるかどうかについて話をした。佐藤さんは避難所で暮らしていたが、「海のそばがいいなあ」とあらためて思っていた。自分は海が好きだし、漁師が好きだ。佐藤さんは、仲間たちに漁師を続けることを伝えた。なかには漁師をやめる友だちもいた。何にもない、ゼロからのスタートだった。
そう決意してからは、漁師仲間とコツコツと準備を進めた。船も、津波で残った船や壊れた船を直して、みんなで共有し漁業再開までこぎ着けた。
「もう1回津波がきたら、漁師を続けるかどうか迷っちゃうかな」と佐藤さんは笑う。
雄勝の海は、震災後に潮の流れが変わり、震災前と海の環境が変わっている。しかし、新しい海の状況を把握することで、今のところ養殖の種になるウニもとれ、漁獲はうまくいっているという。問題は、水揚げした後の加工業が復活していないことだ。少しずつ加工工場は修復しているが、肝心の人手が足りず、海産物は大震災の前の半分くらいの量しか生産できていない。
学校再生プロジェクトに関わる理由
佐藤さんも「ぬくもり実行協議会」のメンバーのひとり。sweet treatをはじめ多くの人が学校再生プロジェクトに取り組み始め、彼らから雄勝の漁師の立場として関わってくれないかと頼まれたことが、同会に参加するきっかけとなった。
佐藤さんは、このプロジェクトに参加した理由をこう語る。
「以前は外部から来た人を煙たがっていたのですが、大震災を契機に変わりました。プロジェクトでは、子どもたちに海のことを知ってもらいたいとか、獲ったその場で食べる美味しさを味わってもらえたらいいなと思います。震災でボランティアの方や多くの方に色々と手伝ってもらった恩返しの意味でも、美味しいものを食べていただきたいです。そういうことがやりやすいですよね、このプロジェクトに関わっていくと」
「以前は外部から来た人を煙たがっていたのですが、大震災を契機に変わりました。プロジェクトでは、子どもたちに海のことを知ってもらいたいとか、獲ったその場で食べる美味しさを味わってもらえたらいいなと思います。震災でボランティアの方や多くの方に色々と手伝ってもらった恩返しの意味でも、美味しいものを食べていただきたいです。そういうことがやりやすいですよね、このプロジェクトに関わっていくと」
前編でも紹介した通り、「雄勝学校再生プロジェクト」のサマースクールでは子どもたちに漁業を教えていた佐藤さん。実際の漁師さんが教える体験型授業は、都会にいては決して味わえない本物の漁業の醍醐味を伝えていた。実際に筆者も雄勝の桑浜港で早朝のウニ漁を体験したが、ゴムエプロンにゴム長という出で立ちで乗船し、仕掛けを引き上げ、ウニむきをして汗水たらす仕事を終えると、とても清々しい気持ちになった。もちろん、獲れたてのウニが抜群に美味しかったことは言うまでもない。