2016/03/11
[第6回] 子育てのスタート期の母子を支えるために、社会全体で妊娠・出産・子育ての切れ目のない支援を [3/3]
3.【講演】産後サポートをさまざまな人で担うには~事業活動からみえる産後サポートに求められるものとは?~
渡辺 大地●わたなべ だいち
株式会社アイナロハ代表・札幌市立大学非常勤講師
埼玉県所沢市にて、2012年より産後サポート事業"ままのわ"を展開。年間1000組以上のカップル向け父親学級の講師を務める。
著書に『産後が始まった!』(KADOKAWA)他。
埼玉県所沢市にて、2012年より産後サポート事業"ままのわ"を展開。年間1000組以上のカップル向け父親学級の講師を務める。
著書に『産後が始まった!』(KADOKAWA)他。
■ 産後サポート事業を始めたきっかけ~「3人目はムリ」と妻に言われ・・・
私は今、埼玉県所沢市で、妊娠から産後6ヶ月までのご家庭を対象とした家事や育児のサポート事業を行っています。私は、もともと子どもが大好きで、2009年に第一子が生まれてからは、自称「イクメン」として、月曜から土曜は会社員として仕事、日曜は我が子の写真を撮りまくる生活をしていました。平日、たまに夜の9時頃に帰れると、寝かしつけ中の子どもを高い高いし、妻に夕飯を運ばせ・・・・・・という生活をしていました。当時は、そんな自分を「イクメン」だと思っていたのです。
たくさん子どもがほしかったので、妻の第二子妊娠がわかった時には喜びました。ですが、妻から、「2人目を育てていく自信がない。3人目なんて絶対に無理! そもそもあなたが一番手がかかる子どもみたいなもの」と言われたのです。そして、妻が僕を子どもの父親として認めるかどうかは、妻の出産後、妻の体調を毎日聞いてブログで発表すること、それを妻が1ヶ月後に読んで判断する、と言われたのです。ブログ「お産とオッサン。」はそうして始めたものでしたが、現役助産師さんも含めた多くの方に読んでいただき、反響もあって、書籍化することができました。
また、こうした妻のことばにより、自分が「イクメン」だと思ってやっていたことが、実はまったくの思い違いであったことに愕然としました。それをきっかけに、2012年に産前産後の子育て・家事サポート事業"ままのわ"を始めました。
たくさん子どもがほしかったので、妻の第二子妊娠がわかった時には喜びました。ですが、妻から、「2人目を育てていく自信がない。3人目なんて絶対に無理! そもそもあなたが一番手がかかる子どもみたいなもの」と言われたのです。そして、妻が僕を子どもの父親として認めるかどうかは、妻の出産後、妻の体調を毎日聞いてブログで発表すること、それを妻が1ヶ月後に読んで判断する、と言われたのです。ブログ「お産とオッサン。」はそうして始めたものでしたが、現役助産師さんも含めた多くの方に読んでいただき、反響もあって、書籍化することができました。
また、こうした妻のことばにより、自分が「イクメン」だと思ってやっていたことが、実はまったくの思い違いであったことに愕然としました。それをきっかけに、2012年に産前産後の子育て・家事サポート事業"ままのわ"を始めました。
■ 産褥期の支援が手薄
第二子が生まれてから、見えてきたことがありました。それは、病院で出産すると入院中はケアが受けられます。また、子どもが少し大きくなって外に出やすくなると、子育て支援センターなどの子育て支援サービスがあります。ですが、退院直後からのいわゆる産褥期のサポートが不足しているということです。この時期の母親は、育児をするための体力をチャージする大事な時期であるにも関わらず、支援が手薄であり、この時期のお手伝いをしたいと思ったのが事業スタートのきっかけでもあります。
ここ2~3年で、産後サポートの重要性は徐々に認知されてきていますが、たとえば産後の母子支援施設などは初産婦の受け入れが中心で、経産婦はあまり対象とされていません。ですが、"ままのわ"の利用者は約8割が経産婦です。特にサポートの要望が高いのは、「上の子と遊ぶ」「上の子の送迎」「上の子の送迎時の留守番」です。前述の「産前産後の生活とサポートについての調査」でも、経産婦の4割以上が「上の子の世話をサポートしてほしい」と望んでいるという結果が出ていますが、経産婦のこうしたニーズもたくさんの方に知っていただけたらと思います(図4)。
ここ2~3年で、産後サポートの重要性は徐々に認知されてきていますが、たとえば産後の母子支援施設などは初産婦の受け入れが中心で、経産婦はあまり対象とされていません。ですが、"ままのわ"の利用者は約8割が経産婦です。特にサポートの要望が高いのは、「上の子と遊ぶ」「上の子の送迎」「上の子の送迎時の留守番」です。前述の「産前産後の生活とサポートについての調査」でも、経産婦の4割以上が「上の子の世話をサポートしてほしい」と望んでいるという結果が出ていますが、経産婦のこうしたニーズもたくさんの方に知っていただけたらと思います(図4)。
■ 産後サポートは家族だけでは担いきれない
新聞などで取り上げられる回数が増えてきた産後サポートですが、まだまだ認知度は低いとも言えます。「家政婦やベビーシッターと同じでしょ?」「うちは里帰りだから関係ないわ」という声もあります。
ですが、今や産後サポートは家族だけでは成り立たなくなっています。現に我が家は妻の母親に第二子出産後1ヶ月間、来てもらう予定でしたが、1週間でサポート終了。妻の母親は、上の子の抱っこ攻撃とそれに対する感謝の無さですっかり疲れてしまったのです。
ですが、今や産後サポートは家族だけでは成り立たなくなっています。現に我が家は妻の母親に第二子出産後1ヶ月間、来てもらう予定でしたが、1週間でサポート終了。妻の母親は、上の子の抱っこ攻撃とそれに対する感謝の無さですっかり疲れてしまったのです。
「産前産後の生活とサポートについての調査」でも、外部サポートを利用しない理由に、「内容がわからない」、「外部サポートへの抵抗や不安がある」、「そもそも知らなかった」という項目が上位にあげられていました(図6)。私たちの事業の中での感触は、こうした方たちは、小児科、児童相談所、保健センター、自治体などのサポート体制についても知らないことが多いです。一方、今は溢れるほどに情報があり、かえって自分に適した情報を得ることが難しくなっているケースもあります。そうしたことからも、出産前から、その人に合った情報提供をすることは、とても大事だと思います。その点からも、「母子保健コーディネーター」の役割は大きいと思います。ただ、この資格を持っていない人であっても、情報提供はできるとも思います。
図6.外部のサポートサービスを利用しなかった理由
*複数回答
*外部のサポートを利用しなかった人(1,404人)。
*外部のサポートサービス:自治体、民間、NPOなどが提供するベビーシッターサービスやヘルパーサービス。出産後対象のサービスも、対象時期を限定しないサービスも含む。
(出典)ベネッセ教育総合研究所「産前産後の生活とサポートについての調査」(2015年)より。
*外部のサポートを利用しなかった人(1,404人)。
*外部のサポートサービス:自治体、民間、NPOなどが提供するベビーシッターサービスやヘルパーサービス。出産後対象のサービスも、対象時期を限定しないサービスも含む。
(出典)ベネッセ教育総合研究所「産前産後の生活とサポートについての調査」(2015年)より。
"ままのわ"事業は、当初は出産する母親本人からの問い合わせが中心でしたが、数年前から父親(パートナー)、また最近は、里帰り先の実母からの問い合わせも増えてきています。このようにいろいろな人が産後サポートを知って、アクセスし、母親と情報共有をしながら一緒にどんなサポートをしたらよいかを考えていけることが理想的だと思います。
編集協力 菅原然子