2016/12/22

[第1回] 批判的思考力を育む ~玉川学園高等部 国語科と理科で創出した「理系現代文」の実践 [3/6]

生徒間の対話を促して、思考を深めていく指導

 文章読解の活動は、個々に課題文を読んで自分の考えを持ってから、グループワークで深めていくのが基本的な流れだ。授業を担当する教員は、いかに生徒間の対話を促して思考を深めるかという観点から授業改善に取り組んできた。
 「1人で考えていると視野が狭くなり、自分の考え以上の思考力が発揮されにくい状態になります。他者から異なる意見を聞き、考えがぶつかる中で、自分の考えが強化されたり変わったりする経験をさせたいと考えています」(小林慎一先生)
 議論を深めるためには、時には相手の意見に疑問を投げかけることも必要だ。しかし、同校では、幼児部や小学部から一緒に学ぶ生徒もいて、人間関係が固定されやすいという事情もあり、相手の意見に異を唱えるのを避けたがる生徒も見られる。そうした生徒の心理的なハードルを下げるような声かけも工夫する。
 「1回目の授業から、『意見に反論したり疑問を投げかけたりすることは、人格を否定することではないよ』と、何度も繰り返し伝えています。さらに、相手の意見を引き出したり、議論が深まったりするような発言があったら、それを肯定するような声かけをして、意見を言いやすい雰囲気にしています。そして、違う人の意見に触れられるように、課題ごとにグループを変え、同じメンバーにならないように配慮しています」(小林香奈子先生)
小林 香奈子先生
 また、どのようなメンバーとなっても、自分の考えを伝えられるように、様々なグループ設定にもしている。
 「各グループに1人は議論をリードできる生徒を配置することが多いですが、そうすると、その生徒に頼ってしまう生徒も出てきます。そこで、あえてリーダーシップをとるのが苦手な生徒だけのグループにして、『自分が頑張らないと』という気持ちを起こさせたり、逆に発言したがる生徒ばかりのグループにして、意見がぶつかり合うことを経験させたりと、グループの組み方は固定せず、柔軟に変えています」(島津遼先生)
島津 遼先生
 文章読解では、課題文と3つの問い(4つの場合もある)を設けたワークシートを作成している。問1と問2は文章をよく読めば分かる、「答え」がある問いだが、問3は小論文のテーマになりそうな、正解が1つとは限らない問いにして、生徒の考えを発展させる。 また、 「理系現代文」の評価はルーブリックに基づいて行っている。科学的な知識や認識は理科の教員、言語的な理解や認識は国語科の教員というように分担しつつ、最終的には全員が共有して決定する。