【導入編:3】研修会の成果と課題 [2/2]

一度、その良さを体験したらまた取り入れたくなった

 ─ この研修会後、ご自身の授業に変化はありましたか。
 中村:私が担当する高校3年生のリーディングの授業では、夏季講習で挑戦したように、問題演習をペアワークで行う形式を継続しています。1学期までは講義形式の授業を行っていましたが、それでは夏季講習で見た生徒たちがいきいきと学ぶ姿は実現できないと考え、思い切って変えました。生徒たちが自ら学び方を考え、教え合う姿を見ると、今の授業形式にしてよかったと感じます。今後も、生徒に学びを委ねる時間を、いかに通常授業に取り入れるかを工夫しつつ、そうした授業が生徒の成績向上に結びつくことを確かめていきたいと思います。
 黒岩:私は、生徒がじっくり考える機会が大切だと感じ、中学2年生の特別講習で学び合いを取り入れました。講習日の1週間前に、問題を1題書いたプリントを渡し、事前に考えておくように指示しました。そして、当日、受講者全員が、自分が考えてきたことを出し合って、正解を導いていくという取り組みです。「夢中になって取り組んでいたら、夕食の時間が過ぎていた」という生徒もいて、問いを出すタイミングも重要だと感じました。
 鳥山:私は今、高校2年生を受け持っていますが、以前から、疑問点が出てきたら、生徒同士の話し合いを授業の中で促してきました。ただ、それは、ある程度、良識のある高校2年生だからできる授業だとも思っています。生徒たちが自由に活動したとしても、授業から大きく外れたりしないという安心感を持てるかが、生徒に学びを委ねる際のポイントになるのではないでしょうか。
 中村:同感です。私も、低学年や学力が厳しい生徒たちに、どのように学びを委ねられるかについて不安があります。生徒の状況に応じて、生徒が主体的に学ぶ活動を取り入れ、まずは黒岩先生が言われたように、その成功例を共有し、教員間で広めていくことから始めるのがよいかもしれません。
 黒岩:私がアクティブ・ラーニングを行う際に課題に感じているのは、アクティブ・ラーニングの方法が特別であればあるほど、不公平感を訴える生徒がいることです。他のクラスで行われた活動が自分のクラスでは行われないことに、生徒は敏感に反応することがあります。
 栗本:クラス間の公平性は必要ですが、先生方の個性が生きる授業はどんどん推進してほしいと思いますし、それが保証される環境づくりも重要だということですね。

アクティブ・ラーニングに触れる機会をまず増やす

 ─ 課題はいろいろありますが、そのような中でも、校内でアクティブ・ラーニングを広めるにはどうすればよいと思いますか。
 鳥山:まずは回数と時間をかけて、アクティブ・ラーニングの効果を実感してもらうことだと思います。
 板谷:先生方は日常の授業や業務に追われています。職員会議や教科会で、問いのデザインの重要ポイントを復習する機会を設けたり、自分の工夫を報告したりと、アクティブ・ラーニングに意識を向ける時間を定期的に設けるとよいのではないでしょうか。
 鳥山:その際、先生方が自らアクティブ・ラーニングを行えるように、先生方への問いかけ方が重要だとも考えます。意識や理解の程度が異なる先生方とも話し合えるテーマにする必要があるでしょう。
 黒岩:コアメンバーが日常的な雑談の中で、問いのデザインについて話題にするようにして広めていく方法もあります。改まった場よりも草の根的に自分の取り組みを広めて、アクティブ・ラーニングの良さを実感してもらえれば、自分事として捉えてもらえるように思います。
 中村:生徒が英語力を高められる授業をオールイングリッシュで進めていくために、アクティブ・ラーニングが必須の要素だと考えています。生徒が自ら英語を使って表現したり、他者とかかわりながら思考を深めたりする上で、効果的な問いや課題の出し方を探っていきたいと思います。
 栗本:大学入試改革の全貌が見えない中で指導改善を進めるのは難しいですが、アクティブ・ラーニングが求められているのは確かです。問いのデザインという種をまいたのですから、その意識が育つように取り組みを深めていきましょう。

■ノートルダム女学院中学高等学校

1952(昭和27)年創立。中高一貫の女子校。カトリック精神に基づく「徳と知」による教育で、「21世紀のLADY」の育成を目指す。2016 年度、「グローバル英語コース」を設置。1学年の生徒数は約100 人。
ノートルダム女学院中学高等学校
校長
栗本嘉子(くりもと・よしこ)
ノートルダム女学院中学高等学校
教務部長 数学科
鳥山拓(とりやま・たく)
ノートルダム女学院中学高等学校
グローバル英語コース長 英語科
中村良平(なかむら・りょうへい)
ノートルダム女学院中学高等学校
数学科
黒岩かおる(くろいわ・かおる)
ノートルダム女学院中学高等学校
国語科
板谷悠子(いただに・ゆうこ)