2015/06/03

シンポジウム開催報告[1/4]

シンポジウム開催報告 【第一部】世界における社会情動的スキル研究報告

社会情動的スキルとは? その分類と測定

Oliver P.John,Ph.D.●オリバー ジョン 博士

米国カリフォルニア大学バークレー校心理学部教授。同校のバークレー人格研究所、ミルズ縦断研究を統括している。研究テーマは、人格構造とその発達プロセス、感情表現と感情制御、自己と自己認知のプロセスなど。ドイツのハイデルベルク大学の名誉客員教授も務める。

パーソナリティ研究の中から

 私からは、社会情動的スキルとはそもそも何かを、測定方法なども含めながらお話しします。私はパーソナリティ研究を専門とする心理学者なので、以下の3つの視点で個人を対象に長年研究してきました。①個人が他者とどのように共生しているか、という社会性の側面、②どのような仕組みで目標が達成されるか、③どのようにして自らの情動を受け入れ、制御しているか、いずれもその仕組みには社会情動的スキルが深くかかわります。

パーソナリティ研究の中から

 社会情動的スキルは、たくさんの定義ができます。たとえば他者との関係構築のために必要な力や目標達成のために必要な忍耐力なども含まれるでしょう。教員や保護者にもそれぞれの定義があると思います。これまで非認知的スキルと呼ばれてきたものも含みます。そのため、このスキルを考える時の課題は、スキル自体が多すぎる、複雑すぎる、成育歴などの背景に依存する、年齢による制約などがあることです。ある研究者が、21世紀に特に重要なスキルをリストアップしたところ、160にも上ったそうです。
 このようなスキルは、因子分析すると5つに分類できます。OCEANモデル、ビッグファイブなどと呼ばれていますが、開放性、勤勉性、外向性、協調性、否定的感情対情緒安定性の5つです。

スキルは測定可能か?

 では社会情動的スキルは測定できるのでしょうか。現在有効だと言われている方法に、観察があります。主観的だと言う人もいますが、保護者や教師などの子どもの観察は客観的指標とも一致する有効なものとなっています。また、子どもの「開放性」は、好奇心やごっこ遊び、想像力など、変化する環境に柔軟に順応しているか、「勤勉性」とは、簡単にあきらめない、持続性、物ごとをやりとげる、などのことを指しますが、この二つの分野のスキルは、勉強面で良い成績をとることに相関があります。つまり、社会情動的スキルは認知的スキルとも関係性があるということがわかっています。
 測定の時期について、これには2つの重要なタイミングがあります。一つは、5歳から7歳の、幼児期から学校段階へ入る時です。「よい生徒」になる方法を学び始めることで、協調性と勤勉性が増加します。もう一つは10歳から18歳の青年期です。このころ成人のアイデンティティを形成し、成人世界へ旅立つスキルを学びます。