2023/03/13
リサイクル率日本一の町で見つけた私の活躍場所|自ら見聞きした環境・地域の「リアル」がキャリアのヒントに /藤田 香澄
様々な場所で色とりどりに活躍している20代、30代。
ベネッセ教育総合研究所では、活躍する20代、30代のメディア発信に取り組んでいる、株式会社ドットライフおよび株式会社ユニークの協力のもと、より多様で幸せに活躍する方にインタビューを行いました。
彼らのインタビューを通して、これからの社会で活躍し、「Well-being」に生きるためのヒントを探っていきます。
今回は、鹿児島県大崎町に拠点を置き、社会変革に多様性をつくる合作株式会社で働く藤田香澄さんにお話をうかがいました。
ベネッセ教育総合研究所では、活躍する20代、30代のメディア発信に取り組んでいる、株式会社ドットライフおよび株式会社ユニークの協力のもと、より多様で幸せに活躍する方にインタビューを行いました。
彼らのインタビューを通して、これからの社会で活躍し、「Well-being」に生きるためのヒントを探っていきます。
今回は、鹿児島県大崎町に拠点を置き、社会変革に多様性をつくる合作株式会社で働く藤田香澄さんにお話をうかがいました。
写真提供:大崎町SDGs推進協議会
藤田 香澄
合作株式会社 地域連携事業部 ディレクター
1995年生まれ。長野県出身。幼少期から国内外で環境・地域課題を目の当たりにする。高校生・大学院生時代の研究を通して現状や課題への理解を深め、卒業後は面白法人カヤックに入社。地域資本主義事業部において営業・ディレクションを担当。退職後、合作株式会社へ入社。地域連携事業部ディレクターとして「一般社団法人大崎町SDGs推進協議会」の事務局運営に携わり、資源循環型のまちづくり「サーキュラーヴィレッジ・大崎町」の達成に向けてプロジェクトの企画立案、関係者調整、実施業務を担当。
1995年生まれ。長野県出身。幼少期から国内外で環境・地域課題を目の当たりにする。高校生・大学院生時代の研究を通して現状や課題への理解を深め、卒業後は面白法人カヤックに入社。地域資本主義事業部において営業・ディレクションを担当。退職後、合作株式会社へ入社。地域連携事業部ディレクターとして「一般社団法人大崎町SDGs推進協議会」の事務局運営に携わり、資源循環型のまちづくり「サーキュラーヴィレッジ・大崎町」の達成に向けてプロジェクトの企画立案、関係者調整、実施業務を担当。
リサイクル率日本一の町から挑戦。「世界の未来をつくる町へ」
写真提供:大崎町SDGs推進協議会
私は、リサイクル率日本一の鹿児島県大崎町にある合作株式会社(以下:「合作」)で、地域連携事業部のディレクターを務めています。「合作」は官民連携、企業連携、多様な組織の連携によって、社会変革に多様性をつくることを目指す会社です。
「合作」は大崎町において、「大崎町SDGs推進協議会(以下:「協議会」)」の事務局を担っています。「協議会」では「リサイクルの町から世界の未来をつくる町へ」をビジョンに掲げ、環境配慮型の建物の建設やまちづくりである「サーキュラーヴィレッジ・大崎町」の実現を目指しています。
私は、地域連携事業部のディレクターとしてプロジェクトの企画立案、関係者調整、実施業務を担当しています。
私が仕事をする上で大事にしていることは、「世の中への影響力が大きい仕事に関わること」。「インパクトのある仕事」と表現することもできます。世の中に様々な課題がある中で、時間軸・影響軸で考えて解決した時のインパクトが大きい仕事に関わりたいと考えています。
幼少期から見てきたリアル。ツバル・青森で見た環境・地域の課題
写真提供:本人
地域や環境を意識したキャリアに至った経緯をたどると、いくつかの転機が頭に浮かびます。
まずは幼少期の話をさせてください。私は小学生までツバルやフィジーといった豊かな自然に囲まれた太平洋諸島の国に住んでいた時期があったため、環境問題や地域の課題を身近に感じていました。また子どもながらに環境破壊によって世の中が汚染されていくことが嫌で、「どうにかして環境をよくしたい」と思っていました。
帰国後、高校生時代に卒業研究でツバルを取り上げたことは、自分の人生に大きな影響を与えています。ツバルは地球温暖化が原因でなくなると言われている中、「実際住んでいる人々はどう思っているのか?」を知りたくて現地調査を行いました。現地を訪れてみると、海岸が侵略されているだけでなく、ごみの問題や生活排水が垂れ流されている現状を知りました。
海岸侵略されてしまう前に、ごみ問題や生活排水問題で、ツバルの島々がなくなってしまうかもしれないリスクがあることも感じました。現実にあるこうした課題を調べ、自分の考えをまとめ、発表するという経験は、私が環境に関心を向けるようになった転機のひとつだったと言えます。
大学院の時に地域について学んだことも、人生の転機のひとつです。大学院のプログラムで青森県に行き、雪まつりをはじめとする様々な町おこしの取り組みが行われていることを知りました。
行政の方に町おこしの取り組みや経緯を聞くと、十和田湖周辺はバブル期に観光客が来て盛り上がっていたものの、今は過疎化が深刻化しているとのことでした。また、日中関係が悪化すると青森県を訪れる中国人観光客が減少してしまうため、観光客の増加を見込めない時期もあったそうです。
私はその時、「自分たちで課題解決策を考え、生業をつくっていくことはとても素敵なことだな」「自分も事業者側になって、地域でプロジェクトを遂行したい」と思いました。
大学院を卒業してからは、神奈川県鎌倉市にある「面白法人カヤック」というゲーム / 広告制作・企画会社の地域資本主義事業部で営業やディレクションを行っていました。キャリアチェンジを考えたタイミングで、ウェブマガジン「greenz.jp」に掲載された「合作の採用募集の記事」を見つけたんです。
リサイクル率日本一であることや大崎町でサーキュラーエコノミーの構築をこれから目指す「合作」の取り組みが目に留まり、迷わず求人に応募しました。ここまでの話が私の人生の転機で、様々な人に支えられて今の仕事に出会いましたね。
大崎町で仕事を始めるにあたり、まずは住民のひとりになりました。自分自身が実践者のひとりになることで、大崎町での暮らしのスタイルを確立できました。
住民になると、ごみ捨てをはじめとする生活様式を町に合わせて習い始めます。例えば、納豆のパックを洗って捨てるようになりました。また脱炭素と言われる時代、「電気自動車ってどうなんだろう?」と思い、実際に乗ってみたことで、今の電気自動車に足りない部分を説得力を持って話せるようになりましたね。
太陽光発電の見積もりを取ってみた時は「こんなに高いんだ……」と痛感したこともありました。住民のひとりになったことで、初めて持てた視点がたくさんありました。
自分の強み×求められているニーズ=活躍できる場所
撮影:Hanayuki Higashi
私は、自分の強みと周りから求められているニーズが一致している状態の時に活躍できていると感じます。
今はこれまでの経験から見えてきた自分の強みを、「資源が循環する仕組み・暮らしをつくる」という組織や社会のニーズに一致させることができていると考えています。
それでも今までの人生、うまくいかないこともたくさんありました。就職活動では、商社から金融機関まで様々な企業を受けましたが、全く受かりませんでした。また大学院の卒業論文を書ききれなかったり、国家公務員試験に落ちてしまったり、大崎町に来て1年目は「合作」の事業領域に関する経験がゼロの状態で大いに苦労をしたり、人生に迷いを感じた時期もありました。
とはいえ、そこまで思いつめていなくて。きっと環境を変えながら世の中の課題に向き合って動き続けてきたおかげで、今活躍できているのではないかと思っています。
私の生き方から何か伝えられることがあるとしたら、自分が「活躍できていない」「幸せと感じられない」と思う時は、環境のせいにしてもいいということです。
うまくいっていない時は、いるべき場所が違うだけです。もちろんその場所で頑張り続けるのもひとつの方法ですが、環境を変えてみるとまた違う活動の仕方を見つけられると思います。何かにとらわれることなく、気軽に環境を変えてみる。リサイクルや環境問題と一緒で、人生も居場所や方法を模索するといいかもしれないですね。
私自身も今後、さらに環境を変えていきたいと考えています。最終的には、日本の廃棄物処理のあり方を制度的にも法的にも変えていきたいです。制度や規制ひとつで企業や世の中の動き方が変わると体感しているので、行政に関われるようになりたいんです。
自分の環境を変えていくために、今は廃棄物処理分野の全容を学んでいます。生ごみを堆肥化するための建物にはどのような規制があるのか。また、生ごみを堆肥化するために必須作業は何かを文献やヒアリングで調査しています。脱炭素の分野では、温室効果ガス排出量の算定を行っています。
今後も目先の費用対効果の視点だけではなく、プロジェクトを成し遂げることで得られる世の中への影響力が大きい仕事に関わっていきたいです。
編集後記
編集:株式会社ユニーク
ライティング:八巻
自分で足を運んで、世の中の課題を見つけて、人から話を聞く。経験を重視し、自ら実践者のひとりになることを大切にしている藤田さん。
藤田さんは、世の中に溢れる課題をただニュースを通して見るだけではありません。自分が渦中に入ることで、人に伝える話題に深みをもたらしています。また藤田さんは現在、幼少期の頃からの体験や抱いてきた疑問を仕事として消化しています。仕事を通して彼女が編み出す道は、彼女が今後どんな環境に身を置くかでさらに変化していくのではないかと考えました。
私自身も彼女の今後の活躍を見守るだけでなく、実践者のひとりになり、固定概念にとらわれず生きていきたいと思いました。
ライティング:八巻
自分で足を運んで、世の中の課題を見つけて、人から話を聞く。経験を重視し、自ら実践者のひとりになることを大切にしている藤田さん。
藤田さんは、世の中に溢れる課題をただニュースを通して見るだけではありません。自分が渦中に入ることで、人に伝える話題に深みをもたらしています。また藤田さんは現在、幼少期の頃からの体験や抱いてきた疑問を仕事として消化しています。仕事を通して彼女が編み出す道は、彼女が今後どんな環境に身を置くかでさらに変化していくのではないかと考えました。
私自身も彼女の今後の活躍を見守るだけでなく、実践者のひとりになり、固定概念にとらわれず生きていきたいと思いました。
2023年1月18日 取材