2017/09/19

「言語能力育成を考える」② -「開かれた心」を育む言語教育 -

グローバル教育研究室 室長
加藤由美子
ベネッセ教育総合研究所は、さまざまな領域の専門家が一堂に会して議論を行う「あスコラ」を運営し、そこでの議論内容を発信しています。先日、その第4回企画で、3度のオリンピックに出場された元陸上選手の為末大さんとお話しする機会がありました。詳しい内容は、10月初旬の公開をお待ちいただきたいのですが、その中で、「開かれた」「オープンな」選手は成長するというような話になりました。開かれた心を持つと、多様な価値観に触れる機会が増え、たくさんのことをうまく取り入れて成長していける、ということでした。
今後、社会はますます多様化が進んでいき、日本も例外ではないでしょう。この社会の変化に応じるためには「開かれた心」を育てる教育が重要であり、言語教育においても、それを実践することが大切であるということを、ARCLE WEBのリレーコラム「言語能力育成を考える」の中で金森強先生(文教大学)が述べておられます。テーマは「今後求められる言語教育の在り方-社会の変化に応じた取り組みを」です。
コラムの中で金森先生は、ヨーロッパが社会の多様性を保持しつつ、平和を維持するために、複言語・複文化主義に応じた言語政策をとっていることを紹介され、具体的な実践例として、スイスのバーゼル市の取り組みを取り上げています。バーゼル市での小学校の授業について、「CLILによる指導を通して、言語だけを学ぶのではなく、身につけておかねばならないさまざまな教科や日常生活に関する基本的な知識や技能も獲得していくことが求められている。また、言語と文化に対する気づきを大切にする教育が重視されており、『開かれた心』を育む言語教育が実践されているのも特徴である。」と述べています。また、金森先生は将来の日本社会を予測し、「言語運用能力の育成だけではなく『開かれた心』を育む教育実践が求められるはずである。」とも述べています。社会の多様性を重視した視点からのコラムを、ぜひご一読ください。