2013/11/11
シリーズ 未来の学校 第2回 | 開校22年目、子どもたちの自主性からすべてが始まる山間の自由学校【前編】[2/4]
【前編】 きのくに子どもの村学園の『自由』な子どもたち [2/4]
大人は子どもに「答え」を教えないという姿勢
隠れ家は学校の裏山にあるらしい。子どもたちとともに現場に向かうと、裏山の手前の広場に木造の家が見える。
「あれが隠れ家?」
「違うよ、隠れ家はあれだよ!」
と、裏山の上の方を指している。
「ん?」
よく見ると、地上20メートルほどの高さの裏山の斜面に、新しい木材で組まれた柵のようなものが見える。木々に隠れていて全貌は明らかではないが、どうやらそれが隠れ家らしい。
「違うよ、隠れ家はあれだよ!」
と、裏山の上の方を指している。
「ん?」
よく見ると、地上20メートルほどの高さの裏山の斜面に、新しい木材で組まれた柵のようなものが見える。木々に隠れていて全貌は明らかではないが、どうやらそれが隠れ家らしい。
猛烈にワクワクしてくる。子どもたちの後に続いて、けもの道のような細い山道を登ると隠れ家に辿り着いた。「すごい!」 斜面に生えている大きな杉の木を大黒柱として基礎工事が施され、「自然」と見事に調和がとれたデザインだ。
未完成の外壁にはハシゴが架かり、ハシゴを登ると部屋になっている。屋根も壁も柱も未完成だが、隠れ家の雰囲気をすでに醸し出している。部屋には10人以上の子どもたちがいて、それぞれ壁、屋根、柱の持ち場で、板を釘を打ち付けたり、柱を穴へ慎重にはめこんだりしている。持ち場ごとに年長のリーダーのような子どもが的確に指示を出し、小さな子どもたちも自分の役割を全うしている。
一方、大人のなおちんは、手持ち無沙汰な子はいないか、遊んでいる子はいないか、全体の様子をうかがいながら隠れ家づくりが円滑に運ぶように配慮している。なおちんも無言ではなく、「そっちの板そろえようか」など、簡単なアドバイスはしている。しかし、肝心なことはあえて自分の口から言わないようにしている印象だ。
子どもは、大人が考えている以上に「できる」
プロジェクト活動中のなおちんに、今日の作業内容について聞いた。
「子どもたちが話し合って、ツリーハウス風の隠れ家をつくろうということになりました。つくりはじめて3ヶ月です。今日は屋根の取り付けと、壁をはる仕事がメインです。子どもたちも体力のある・なし、器用・不器用など個性があるので、例えば、大きい子と小さい子がペアになり、高い危険な場所では大きい子が作業して、小さい子が道具や材料を渡すなど、子どもたちが自分たちで役割分担を決めています」
「子どもたちが話し合って、ツリーハウス風の隠れ家をつくろうということになりました。つくりはじめて3ヶ月です。今日は屋根の取り付けと、壁をはる仕事がメインです。子どもたちも体力のある・なし、器用・不器用など個性があるので、例えば、大きい子と小さい子がペアになり、高い危険な場所では大きい子が作業して、小さい子が道具や材料を渡すなど、子どもたちが自分たちで役割分担を決めています」
平地でさえ大変な作業なのに、ここはかなりの高さにある山の斜面である。そのせいもあって、一見バラバラにワイワイガヤガヤと作業する子どもたちを見て、どれだけ進捗するかは内心たかが知れていると思っていた。しかし、結果は「やればできる」の一言。たった2時間で屋根と壁がほぼ出来上がっている。自分の想像力がいかに乏しかったかを嘆くとともに、子どもは大人の考える以上の可能性を常に秘めていると再認識させられた。
念のために断っておくと、基礎工事など安全性に関わる工程は、地元の工務店が手助けをしている。大人はきちんと安全を担保しながら、子どもたちに自分たちで決めて活動するリスクテイクの機会を提供している。