エピソード 研究会メンバーのICEとの出会い 熊本県立第二高等学校 田尻 美千子
1.「教え込み(教授主体)から、主体的な学び(探究主体)に学びを変える」必要性が高まったと感じる、ご自身の経験。
ほぼ同時期に2つ経験が重なりました。1つは、探究の要素に取り組む授業の取り扱い場面で、発表のスタイルを「生徒が一層集中して聴取でき、学ぶことができる環境はどういう工夫をしたらよいか」と考えたことでした。全体の前で1グループずつ発表するこれまでのスタイルから、ポスターセッションの形で複数のグループが同時に発表し、好きな発表を聞いて回るスタイルに変えてみました。その後、ポスターツアーの形式に変更し、現在につながっています。もう1つは、同じ方法を授業をしても、学科によって成績に大きな差が出ていたことです。興味が持てないような授業方法を続けるよりも、生徒自身が自分で説明する場面を全員に設定する形式で知識確認等を行った方がよいのではないかと思ったことから、授業スタイルを変えたのですが、それまでの学科間の格差がなくなりました。これまで成績が振るわなかった学科の生徒たちには不向きの授業形態を続けていたのだと気づく大きな体験でした。
2.先生方にとってフレームワーク(ICEモデル)が有効と感じた理由。
思考の深まりを評価したいと考えたことから、フレームワークを探していました。そのころにICEモデルに出会い、これを使うことで評価をデータとすることができると感じたことが理由です。最初に取り入れてみたのがホームプロジェクトの相互評価の場面でした。生徒が活用しやすいか心配でしたが、予想よりもあっさりと簡単に生徒が取り組む様子を見て、工夫をしてみたいと感じたことがスタートです。
3.授業デザインに必要な「問いかけ」の具体的な事例(単元やその時の問いの事例)。それを作るために工夫していること。
教科の特長を生かしたことですが、五感を意識する体験を丁寧につくり出すことを意識し工夫しています。2019年度は、生徒たちが授業で認知症サポーター養成講座を受講する機会があったのですが、それを単発の行事で終わらせるのではなく、振り返りを投稿し、そこに挙げられた体験や質問を拾い上げて議論する機会を設けました。生徒から実際に投げかけられたリアルな話題を問いかけに用いることは、学びをリアルにするのだと感じました。また、前のALTの時から始めたことですが、2019年度新規のALTに代わっても、レシピの提供を受け、その英語レシピを取り入れたレシピ理解や一緒に行う調理実習などに工夫を取り入れることで、生徒の学びが一気にリアルになるのだと感じました。そのような視点を他教科からも吸収できそうに感じることから、様々な実践を見聞きしたいと思っています。
4.学校や教科を超えて語る研究会を通して気づいたこと。研究会への期待と課題。
様々な取り組みを直接あるいはオンラインでお聞きすることができ、非常に大きな学びの場であると感じています。柞磨先生から教えていただいたCanBeMapは、これまで「五感を意識した取り組み」として実践してきたことすべてを問いを深める取り組みと変えることができ、これまでの取り組みよりも生徒を一層深い思考に導いてくれるものになったと感じます。2020年度は「総合的な探究の時間」でも取り入れたらもっと学びが深まるのでは、と他教員も言ってくれています。また、「質問の質」のチェックリストを杉田先生から見せていただき、授業のいろいろな場面に取り入れ活用させていただきました。みなさまには、主体的学びフォーラムにおいて、熊本までお越しいただき、貴重な時間を使って非常に示唆に富むコメントをいただきましたこと、感謝してもしつくせません。学び続けるためにも、今後もご示唆いただく重要な機会として参加の機会をいただけるとありがたいと感じています。