2015/08/03

[第3回] 「スマホ第一世代」の現実感覚-「つながり」や時間についてスマートフォンを所有する中高生はどんな感覚をもっているのか?- [2/3]

2. アプリの「友達」を中心とした「つながり」感覚

 まず、中高生の他者との関係に関する感覚、言わば「つながり」感覚を読み取ってみたい。
 他者とのコミュニケーションのために中高生がネットを利用している状況は、図2-1の通りである。
図2-1 インターネットの利用内容と頻度(他者とのコミュニケーションに関係するもの)(中学生・高校生、学年別)
注)対象は、インターネット利用者、中学生2796名、高校生6070名。
 スマホ第一世代の特徴として、従来のメールやSNS(mixi・Facebook)などより、LINEなどのチャットを日常的に使う者が多いことが、今回の調査であらためて確認されたことになる。「無料通話アプリ」と呼ばれるLINEは、2013年頃より急速に普及しており、従来型携帯電話でも一応使用できるものの、基本的にスマートフォンや携帯型音楽プレーヤーで主に使われている。無料通話機能より、文字や絵などが手軽にやりとりできるチャット機能が主に使われており、メールの代替手段として使われるようになっている。
 特に中学生においては、毎日チャットをすると回答した者がスマートフォン所有者を上回っていることに注意が必要である。音楽プレーヤーなど別の端末でチャットをする者が相当数いることが考えられ、スマートフォン所有率だけで子どもたちのネット利用状況を想像してはならないことがうかがわれる。スマートフォンの所有状況とチャットの利用頻度等の関係は図2-2、図2-3のようになっており、スマートフォンを所有していない者の中にもチャットを日常的に行っている者が多いことがわかる。
図2-2 スマートフォンの所有状況とチャット(LINEなど)の利用頻度(中学生)
注)対象は、インターネット利用者。図2-3も同じ。
図2-3 スマートフォンの所有状況とチャット(LINEなど)の利用頻度(高校生)
 他方、mixi・Facebookを例示したSNSの利用者はかなり限られており、毎日利用する者は中高生とも1割に満たない。mixiやFacebookでは、利用者が日々の出来事を投稿し、「友達」の投稿を読んでコメントをしたり「いいね!」をつけたりすることや、コミュニティあるいはグループを作って限られたメンバーで投稿を読み合うことが行われてきた。こうしたSNSの基本的な機能はLINEでも実現しており、現在の中高生はLINEを、個人間の連絡のみならずSNSとしても利用していることをうかがわせる。すなわち、LINEにも「タイムライン」という機能があって日記のような記事を「友達」に読んでもらったり、グループを作って互いの投稿を読んだりすることができるために、中高生の多くがわざわざ別のSNSを利用するまでに至っていないということがうかがわれる。
 そうした中で、短文投稿サービスであるTwitterを利用する者は多く、特に高校生の約4割が毎日利用していると言っていることに注目する必要がある。中高生がTwitterを利用する場合には、友人同士がフォローして互いの投稿(ツイート)を見ることに加え、有名人等をフォローしてそうした人たちの投稿を紹介(リツイート)することが一般的である。LINEでは友達以外からの情報が直接入ってくることは考えにくいため、LINEが普及してもTwitterには独特の価値があると考えられていることがうかがわれる。
 このように、多くの中高生が日常的にLINEを使い、半数程度の高校生はさらにTwitterも使って、ネットを介して断続的に「つながり」を維持し続けているのがスマホ第一世代の状況である。
 では、中高生がネットを介してつながっている相手はどのような人たちなのだろうか。
スマートフォンの所有状況別に、オンライン上のつながりの有無を見ると、図2-4のようになる。スマートフォン所有者はさまざまな人たちとつながっている傾向にある一方で、スマートフォンを持っていない者はつながっている割合が低い。
図2-4 スマートフォンの所有状況とオンライン上のつながり(中学生・高校生)
注)対象は、インターネット利用者。
 このように、スマートフォン所有者は所有していない者と比較して、さまざまな他者と日常的につながっている。では、そうしたスマートフォン使用者はモラルやマナーの点で何か特徴があるのだろうか。図2-5は、スマートフォンの所有状況とルール・自制意識との関係を示している。
図2-5 スマートフォンの所有状況とルール・自制意識(中学生・高校生)
 中高生ともに、項目間の差異がある。
 まず、使用する時間や場所を決めている者の割合では、スマートフォン所有者は低い。いつでもどこでも使いたい、使ってよいと考えている者が多いようである。スマートフォンは所有する子どもにとって、身近で身体の一部のような感覚をもちやすいものだということかもしれない。
 他方、多くの項目で、スマートフォン所有者は非所有者と近い程度の自制意識を示している。食事中や勉強中の使用、有料サイトの利用や個人情報の書き込み、知らない人に会うこと等について、ある程度の自制をしている様子がうかがわれる。それでも、SNSの利用や知らない人とのやりとりについては自制する者が少ないことから、スマートフォンの利用において他者とのコミュニケーションを抑制することは難しいのかもしれない。
 なお、成績層(中学校)や学校タイプ(高校)ごとにネットで知り合った人と会っているかどうかは、図2-6、2-7の通りである。中学校では成績下位層で、高校では進路多様校で、ネットで知り合った人と実際に会っている者の割合が高い。いずれにしても、ネットで知り合った人がいる者は少数派であり、実際に会ってトラブルに陥るリスクが高い者は限られている。
図2-6 ネットで知り合った人と実際に会ったことがあるか(中学生、成績別)
注)対象は、インターネット利用者。図2-7も同じ。
図2-7 ネットで知り合った人と実際に会ったことがあるか(高校生、学校タイプ別)
 以上のように、「スマホ第一世代」で自分用のスマートフォンを所有している中高生たちは、LINE等のアプリの「友達」を増やし、そうした「友達」と日常的にチャットをすることを中心にして、多くの知り合いとコミュニケーションをしており、一部の者はTwitterを併用して不特定多数の人々とつながろうと思えばつながる状況にある。多くの者の感覚では、LINEの「友達」が基本的な友人・知人であり、ネットで知り合いを積極的に増やす者は少ない。言わば、もともとの友人・知人を中心としたLINE友達とつながっているという感覚が、「スマホ第一世代」の基本的な「つながり」感覚である。
 ネットで知り合った人と実際に会ったことのある者は少数であり、中高生とも1割に満たない。しかしながら、中学校においては成績が低い者、高等学校においては進路多様校で、実際に会ったことのある者が多い傾向が見られる。多くの者にとってはネットで知り合う人は自分の「つながり」の外にいるという感覚がある一方で、一部の中高生の感覚ではネットで知り合う人も「つながり」の対象に含まれうる。