イクメンになりたいけど……パパの理想と現実

少子化・共働き化が進み、父親の子育てや家事への関わりがよりクローズアップされるなか、「イクメン」という言葉がマスコミをにぎわしています。社会的に見ても改正育児・介護休業法が施行され、父親の育児参加をバックアップする仕組みも整いつつあります。
そこで、今回は「ベネッセ次世代育成研究所」が2005(平成17)年と2009(同21)年に、0~6歳(就学前)の乳幼児を持つ首都圏の父親を対象に実施したインターネット調査の結果から、父親の育児・家事への取り組みや、子育て観について取り上げていきます。
理想の父親像と現実のギャップ、そこから見える日本社会の問題点について考えるきっかけにしていただければと思います。



(1)父親の家事・育児参加~「今できていること」と「ホントはやりたいこと」

まずは「父親がかかわっている家事・育児」の実情を見ていきます。2005年度と2009年度調査を比較します。

【図1 現在、父親がかかわっている家事・育児(経年比較)】

図1 現在、父親がかかわっている家事・育児(経年比較)


注1)「ほとんど毎日する」+「週に3 ~ 5 日」の計
注2)*は「いつもする」+「ときどきする」の計
注3)09年のみの項目は「該当しない」を設けており、回答者は集計母数から除外
注4)( )内はサンプル数


●父親の家事・育児参加は「4年前とほとんど変化なし」が実情
2005年と2009年の共通項目の比較では大きな変化は見られず、父親の家事・育児への参加が進んでいるとは言えない状況が見えてきます。仕事から帰宅してからできること、という制約もあるため、日常は「買い物」「食事のしたく」「掃除」といった家事よりも、「子どもをお風呂に入れる」「子どもと一緒に室内で遊ぶ」といった育児に積極的に取り組む父親像が浮かんできます。

●日常的に父親ができているのは「短時間でできる」「スポット的」な育児
「ぐずったときになだめる」「幼稚園・保育園の行事に参加する」「おむつをかえる」「叱ったり、ほめたりする」など、短時間で、スポット的にかかわれる項目への取り組み頻度が高くなっています。
一方、頻度が低い項目は「一緒に外で遊ぶ」「寝かしつける」など。父親が仕事から帰宅する時間の遅さがこの結果に影響していると言えそうです。

ここで、今以上の家事・育児への参加希望と、もっとかかわりたい項目について聞きました。

【図2 家事や育児に今以上にかかわりたいか(経年比較)】

図2 家事や育児に今以上にかかわりたいか(経年比較)

【図3 もっとかかわりたいと思っている家事・育児(09年)】

図3 もっとかかわりたいと思っている家事・育児(09年)


注1)「あなたは家事や育児に今以上にかかわりたいと思いますか」に「はい」と答えた父親を対象とする
注2)複数回答(3つまで)
注3)サンプル数は2,479人


●「家事や育児に今以上にかかわりたい」54.2%で、6.3ポイント増
父親に家事や育児へのやる気を聞いてみたところ、「家事や育児にかかわりたい」気持ちは4年前と比べて高まりつつあるようです。「イクメン」ブームの効果もあるかもしれません。

●「もっと子どもと一緒に外で遊びたい」と夢みる父親が7割超え!
「家事や育児にかかわりたい」と答えた父親に具体的な内容を聞いたところ、ダントツの1位が「子どもと一緒に外で遊ぶ」。ちなみに、家事への参加希望は少なく、あくまで我が子と過ごしたいパパたちです。



(2)父親が子どもに期待する将来像

では、子育ての意識面では、父親はどのような思いを持っているのでしょうか。「子どもに将来どのような人になってほしいか」について、まずは見ていきたいと思います。

【図4 お子さんに、将来どのような人になってほしいか(経年比較)】

図4 お子さんに、将来どのような人になってほしいか(経年比較)



注1)複数回答(3 つまで)
注2)「自分の考えをしっかり持つ人」は、09年のみの項目
注3)「自分の考えを貫き通す人」は、05年のみの項目


●人間関係重視。トップは「自分の考えをしっかり持つ人になってほしい」70.8%
「自分の考えをしっかり持つ人」「自分の家族を大切にする人」「友人を大切にする人」「他人に迷惑をかけない人」が上位4項目。人間関係を重視する傾向は4年前も今も変わりません。

続いて「子どもに将来どのような人になってほしいか」を、≪子どもに期待する学歴別≫に見てみます。

【図5 子どもに将来どのような人になってほしいか(子どもへの学歴期待別)】

図5 子どもに将来どのような人になってほしいか(子どもへの学歴期待別)


注1)複数回答(3 つまで)
注2)( )内はサンプル数


●≪大学卒業以上を望む父親≫が、より期待するのは、「リーダーシップのある人」「自分の考えをしっかり持つ人」
≪大学卒業以上を望む父親≫からは、≪自分の考えをしっかりと持ち、リーダーシップをとれる人、尊敬される人、社会に尽くす人になってほしい≫という期待が感じられます。

●≪中学校~短大卒業を望む父親≫が、より期待するのは「他人に迷惑をかけない人」「自分の家族を大切にする人」「友人を大切にする人」
≪中学校~短大卒業を望む父親≫が期待する項目も、≪大学卒業以上を望む父親≫と同様「自分の考えをしっかり持つ人」がトップです。ただし、それと大差ないぐらい≪身近な人間関係を大切にする人になってほしい≫と願っていることがわかります。



(3)≪持ちたい子どもの数≫と≪経済的なゆとり感≫の関係。

次に、「もう1人子どもを持ちたいか」を≪子どもの数別≫≪経済的なゆとり感別≫に聞きました。

【図6 もう1人子どもを持ちたいか(父親全体)】

図6 もう1人子どもを持ちたいか(父親全体)

【図7 もう1人子どもを持ちたいか(現在の子どもの数別)】
図7 もう1人子どもを持ちたいか(現在の子どもの数別)

注)( )内はサンプル数


【図8 もう1人子どもを持ちたいか(子どもが1人・経済的なゆとり感別)】

図8 もう1人子どもを持ちたいか(子どもが1人・経済的なゆとり感別)


注1)対象の子どもの兄弟(姉妹)構成が1人と回答した人のみ
注2)( )内はサンプル数


【図9 もう1人子どもを持ちたいか(子どもが2人以上・経済的なゆとり感別)】

図9 もう1人子どもを持ちたいか(子どもが2人以上・経済的なゆとり感別)


注1)対象の子どもの兄弟(姉妹)構成が2人以上と回答した人のみ
注2)( )内はサンプル数


●子ども1人の父親の7割以上が、「もう1人持ちたい!」
もう1人子どもを持ちたいと答えた父親は、全体では約半数ですが、≪子ども1人の父親≫と≪子ども2人の父親≫で見ると、意欲に大きな差が。≪子ども2人の父親≫になると「もう1人持ちたい」気持ちは3割弱になります。

●子ども1人の父親が「2人目がほしい」気持ちに、経済的なゆとり感での差はなし
≪子ども1人の父親≫の場合、≪経済的なゆとりがない≫と感じていても、約7割が「もう1人持ちたい」と答えています。経済的に多少無理をしても、「2人目の子どもがほしい」という気持ちがうかがえます。

●「3人目」からは慎重。経済的なゆとり感によって意欲に差も
≪子ども2人以上の父親≫の「もう1人持ちたい」という意欲は全体的に3割前後。「持ちたくない」は≪ゆとりがある≫層で2割強、≪経済的にゆとりがない≫層では4割強となり、≪経済的なゆとり感≫が大きく影響していることが感じられます。

(4)子育てを支え合う、夫婦の絆について

最後に、子育て中に欠かせない夫婦間の会話や信頼関係についての調査結果を見ていきます。

【図10 妻との関係】

図10 妻との関係

【図11 妻との外出】

図11 妻との外出


注)( )内はサンプル数


●8割以上の父親が「子どものことについて妻と毎日話す」
忙しい父親でも、子どものことについては、8割以上が妻と毎日話をしていると答えていますが、「自分の仕事・生活上の悩み相談」となると約4割にとどまります。

●妻と二人だけでの外出は「とても+まあ」を合わせても12%……
子どもに手がかかる乳幼児期に、夫婦二人での外出は現実的に難しいと言えますが、残念ながら子どもの年齢が上がってきても、数字に変化は見られないという結果に。核家族化が進み、ベビーシッターなどに気軽に子どもを預ける文化のない日本では、夫婦だけでの外出は難しいものですが、夫婦の絆(きずな)作りに大切なことかもしれません。


(まとめ)
社会的な制度・慣習の問題や経済的な制約などがあるなか、「イクメン」になろうとパパたちは奮闘中。このがんばりを認め、長い目でこの状況を変えていく必要があります。

帰宅時間が遅く疲れていても、できるだけ育児に取り組もうとする姿勢、子どもの将来にかける期待、経済的な余裕にかかわらず、「子どもは2人はほしい」という意欲……、育児に対して熱い思いを持つ父親たち。みなさん「イクメン」候補です。
しかし日常的にかかわれる家事・育児は短時間でできることばかり。育児休業が設けられても、実際はほとんど活用できずにいます。

父親たちに、子どもと共に家庭・地域で過ごす時間がもっとあれば、どんなによいだろうと思わずにいられません。今後、さらに父親のワークライフバランスの現状を変えていく長期的な粘り強いアクションが必要だといえそうです。


次回は、同じ東アジアの4都市(東京・ソウル・北京・上海)の父親を比較しながら、日本の父親像と、父親をとりまく社会の問題点などに迫っていきます。お楽しみに。

引用出典:「第2回乳幼児の父親についての調査」報告書より


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