学力は「親の収入」に左右されるだけなのか

経済力がある家庭の子どもほど学力も高い、ということが、文部科学省が公表した2008(平成20)年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の追加分析調査の結果でわかりました。以前から指摘されていたことですが、それがデータ的にも裏付けられたことになります。「お金があれば、子どもの学力も伸ばせる」というのは、ある意味、保護者にとっては身もふたもない結果です。しかし、そう結論付けてしまうのは、いささか早計でもあるようです。もっと大切なことは、子どもの学力は家庭の経済力だけでなく、保護者の生活態度や子どもへの接し方が大きく影響している、ということが、併せて明らかになっていることです。

追加分析調査は、お茶の水女子大学への委託研究という形で実施され、同大の耳塚寛明副学長を中心とする研究グループが取りまとめたものです。5政令指定都市の公立小学校100校を抽出し、小学6年生の保護者5,847人から回答を得ました。
全国学力テストの正答率と家庭の経済力の関係を見ると、たとえば算数A(基礎問題)の場合、年収が「200万円未満」の家庭の子どもの平均正答率は62.9%だったのに対して、「200万円以上300万円未満」は66.4%、「300万円以上400万円未満」は67.6%と次第に上昇し、「1200万円以上1500万円未満」は82.8%となっています。同様の結果は、学校以外の教育費支出の多寡にも表れています。

高学力の子どもの保護者は、「本(雑誌や漫画を除く)を読む」「テレビのニュース番組を見る」「学校での行事に参加」などの行動を、多くしています。子どもへの接し方を見ても、「家には、本(マンガや雑誌を除く)がたくさんある」「親が言わなくても子どもは自分から勉強している」「子どもが小さいころ、絵本の読み聞かせをした」という保護者の子どもは、高学力でした。逆に、低学力層の子どもの保護者は、「ほとんど毎日、子どもに『勉強しなさい』という」「テレビのワイドショーやバラエティ番組を見る」「携帯電話でゲームをする」「カラオケに行く」などの割合が高くなっています。
高学力の子どもの保護者に特有の行動や生活スタイルが、経済力のある家庭に多く見られる、ということが、「親の年収が多いほど子どもは高学力」と言われる本当の理由なのかもしれません。要するに、お金よりも、保護者自身の行動や姿勢が子どもの学力を大きく左右する、と言えるのではないでしょうか。

なお、子どもの学力と家庭の経済力の関係は、耳塚副学長とベネッセコーポレーションによる共同研究からも、既に明らかにされています。しかし、文科省がこのような調査結果を公表したということは、家庭の経済力による学力格差の存在を公式に認めたことを意味しています。

プロフィール

斎藤剛史

斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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