幼児期にもっと伸ばしておきたい「非認知能力」ってどんな能力?

最近、雑誌やテレビでも聞くようになった「非認知能力」。でも、なんだか難しそうで具体的なイメージがわかないという方も多いのではないでしょうか。この記事では「非認知能力」のいくつかを具体例と共にご紹介していきます。

「学力」とは違う「非認知能力」を知っていますか?

注目されている「非認知能力」について、中室先生に伺いました

——中室先生、ズバリ「非認知能力」とは、どのような能力なのでしょうか?

IQや学力テストで計測されるチカラのことを認知能力、測れないチカラを非認知能力と言います。

「忍耐力がある」「社会性がある」「意欲的である」といったような、人間の気質や性格的な特徴のようなものを指します。

——なるほど。そうしたチカラが、なぜ注目されているのでしょう。

非認知能力は認知能力(=いわゆる学力)の形成に一役買っているだけでなく、将来の年収、学歴や職業形態などの労働市場における成果にも大きく影響することが明らかになっているためです。

教育が重要だということはみんな分かっていても、どんな能力を伸ばす教育が重要かという判断をするときに、この非認知能力が重要視されてきているのです。

——将来のことを考えたときに、学力以上に伸ばしておくべき能力が「非認知能力」だということですね。「非認知能力」には、いくつか種類があるのでしょうか。

非認知能力は、大きく9つに分けられています。

非認知能力とは何か
参考:Gutman,L.M.,&Schoon,I.(2013). The impact of non-cognitive skills on outcomes for young people.Education Endowment Foundation

今回は、非認知能力の中でも重要とされている「自制心」「やり抜く力」について具体例をご紹介します。

ケース① お友だちのおもちゃを勝手にとったままケンカにならなくなった!(自制心)

——このように自分の欲求や衝動を制することができるかどうか、ということですね。

1980年代にスタンフォード大学の心理学者、ウォルター・ミシェルが行った「マシュマロ実験」という有名な研究をご存知でしょうか。

大学内の保育園で186人の4歳児にマシュマロを差し出し、「食べてもいいけれども、大人が部屋に戻ってくるまで我慢できれば2つにしてあげます」といって大人は部屋を退出します。

そして15分後に大人が部屋に戻ってくるまで待てるのかどうかー非常に単純なこの事実で、研究者は「自制心」を計測しようとしたのです。

186人の被験者のうち、15分間我慢して2つのマシュマロを手に入れられた子どもは全体の約3分の1にとどまりました。

しかし驚くべきはこの先の調査が明らかにしたことです。

我慢して2つ目のマシュマロを手に入れた子どもは、手に入れなかった子どもに比べて、のちの学力や収入、健康状態などが良い結果となりました。

それだけでなく、長期的な目標を設定し、それを追求し、達成することに喜びを感じるような、聡明で自立した大人になっていることがわかったのです。

——なるほど…。「自制心」が、そうした将来の結果につながっていくのですね。

大阪大学の行動経済学者・池田新介教授はもっと面白い方法で「自制心」を計測していらっしゃいます。

それは「夏休みの宿題を休みの終わりの方にやったかどうか」という質問です。

参考:池田新介(2012)「自滅する選択—先延ばしで後悔しないための新しい経済学」東洋経済新報社

自制心がないために何事も先延ばしにしてしまい、結局締め切り間際になって後悔するというのは誰にでもある経験かと思いますが、この傾向が強いかどうかを「夏休みの宿題」で測ろうとしたわけです。

池田教授の研究では、夏休みの宿題を休みの終わりの方にやる人、つまりこの研究においては自制心がないと判断される子どもだった人は、大人になってから喫煙し(=禁煙できない)、借金があり(=貯金できない)、太っている(=ダイエットできない)確率が高いことがわかっています。

もちろん、趣味嗜好や経済状況、体質・病気といったさまざまな要因がありますので、一概にそういった方々に「自制心がない」とは言えません。

ただ、なんとも耳の痛い話ではありますが、自制心がないと今やらねばならないことを先送りしてしまいやすいということになるのかもしれません。

——なるほど…。もう一つの「やり抜く力」は、どんな力ですか?

次のケースを見てみましょう。

ケース② 失敗しても諦めず最後まで取り組むことができるようになった!(やり抜く力)

——こういう場面よくありますね。途中でかんしゃくを起こして投げ出してしまったり…。

「やり抜く力」があるかどうかは「成功を予測できる性質」として注目を集めていて、別名「GRIT(グリット)」と呼ばれています。

——初めて聞きました!

「非常に遠い先にあるゴールに向けて、興味を失わず、努力し続けることができる気質」とされています。

結果としてGRITの評価が高い人には、オリンピック選手や英単語コンテストで最終ラウンドまで残る子どもなど、いわゆる「成功できる人」が多いことがわかっています。

——なるほど、だからこそ注目されているのですね。

非認知能力の一つである「GRIT」と「学力」の間には相関関係が必ずしもないということも、注目されている理由の一つかもしれません。

アメリカで国語(=英語)のテストを行なった後、英単語コンテストに参加するという研究が行われたことがあります。

当然テストの成績が良かった子どもが、英単語コンテストでも優秀な成績を収めるだろうと予測されていたんです。

しかし実際は、テストの成績が良かった子どもが必ずしも英単語コンテストで優秀な成績を収めたわけではありませんでした。

一方でGRITの評価と英単語コンテストの結果の間には一定の相関関係が見られたそうなんです。

——子どもの将来の可能性は、学力だけでは測れないというわけですね。

非認知能力ってどうやったら伸ばせるの?

——次に気になるのは「非認知能力」の伸ばし方ですが…?

「これだけすれば非認知能力が伸びる」という方法は見つかっていません。

しかし最近、非常に近しい関係にある人たちの非認知能力がトランスミッション(=伝播)するという研究が多くなっているのは、非常に重要かもしれません。

どういうことかと言うと、お母さんが自制心が高い人だと、お子さんやお父さんもそうなるという傾向があるということです。

経済学の中には伝統的に「ピアエフェクト」という研究が行われており、私たちは近しい人たちから、私たちが思っている以上に広い範囲で影響を受けていると言われます。

友人であっても、貯金をするかどうか、病気になりやすいかどうかなど、生活習慣などに関わる非常に広い範囲のことを近しい存在から影響を受けている、ということなんですね。

友人同士でもそれくらい影響を受けるのですから、親子の関係ではなおさらではないかなと感じます。
そのため親の影響というのは思っているより大きいのではないでしょうか。

——これをすれば身につくというものではなく、親子の関わり方を考えることが重要なんですね。
中室先生、貴重なお話をありがとうございました!

非認知能力を伸ばすポイントって?
http://benesse.jp/kosodate/201709/20170904-3.html

イラスト:くりこ

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