ドラッグ&ドロップで解く問題は,学力をよりよく測れるのか ― CBTならではの問題形式「技術強化型項目」の可能性と課題 ―
はじめに
コンピュータ上で実施されるテスト(CBT:computer-based testing)の導入が,学校現場でも急速に進んでいる。令和7年度の全国学力・学習状況調査では中学理科が全面的にCBTで実施され,動画を見て答える問題や,画面上の選択肢をドラッグ&ドロップで動かして答える問題が登場した1。子どもたちが日常的に1人1台端末を使うようになった今,こうした「CBTならではの問題形式」は,今後ますます身近なものになっていくだろう。
一方で,新しい問題形式に対して,「操作が目新しいだけで,紙の問題と何が違うのか」「かえって答えにくくならないのか」といった率直な疑問も浮かぶ。筆者らは最近,この「CBTならではの問題形式」,教育アセスメント研究においては「技術強化型項目(Technology-Enhanced Items,以下TEIs)」と呼ばれる問題形式について,国内外の研究動向を整理した論文を発表した(渡邊・堂下,2026,日本テスト学会誌)。本稿ではその内容をもとに,TEIsと呼ばれる新たな問題形式には,何が期待され,何に注意すべきとされているのかを紹介したい。
このコラムは,著者らが執筆した以下の論文の内容に基づき,いくつかの内容を追加し再構成したものである。
渡邊智也・堂下雄輝(2026).Computer Based Testingの特徴を活かしたテスト項目形式に関する研究動向――技術強化型項目Technology-Enhanced Items研究に着目して―― 日本テスト学会誌, 22(1), 123-150.
https://doi.org/10.24690/jart.22.1_123
技術強化型項目(TEIs)とは何か
一口に「CBTならではの問題」と言っても,その新しさには大きく2つの方向がある。一つは,「問題の見せ方」の新しさである。設問の提示に動画や音声,アニメーションを用いる形式で,冒頭で触れた全国学力・学習状況調査の動画問題はこちらにあたる。文章を読む負担を減らして本来測りたい力を測りやすくする,リアリティを高めて現実場面に近い思考プロセスを喚起できるといった価値が期待されている。もう一つは,「答え方」の新しさである。ドラッグ&ドロップで図やことばを分類・並べ替えする,スライダー(つまみ)を動かして数値を調整する,画像の該当箇所をクリックして答えるなど,受検者が画面上の要素を直接操作して解答する形式であり,操作に応じて画面の表示が変化する双方向的なものも含まれる。
本稿で取り上げるのは,このうち後者の「答え方」に新しさのある問題である。研究の世界でTEIsという場合,主にこちらの形式を指すことが多い。
「答え方」の新しさが活きている例として,OECDの国際学力調査PISA(2015年)の科学的リテラシーの問題「暑い日のランニング」を挙げよう2。この問題では,受検者がスライダーで気温や湿度を設定し,シミュレーションの実行ボタンを押すと,ランナーの汗の量や体温がどう変化するかが画面に表示される。受検者はその結果を見て,健康上の危険について判断し,答えを選ぶ。つまり,「条件を変えて実験し,結果から結論を導く」という科学的な探究のプロセスそのものを,画面上で再現しながら測定しているのである。
図1 文部科学省(2016),p.6「暑い日のランニング」問1をトリミング加工して引用

筆者らの整理では,大規模な学力調査におけるTEIsの使われ方は,大きく2つのタイプに分けられる(表1)。①は,操作した結果がそのまま解答となるタイプであり,「答え方そのもの」を新しくする工夫である。これに対して②は,操作を通じて情報を集めて考え,最後は従来型の形式で解答するタイプであり,先ほどの「暑い日のランニング」はこちらにあたる。ここでの操作は解答そのものではなく,解答に至るまでの「考える過程」を現実の探究場面に近づける役割を担っている。同じ「操作のある問題」でも,2つのタイプでは新しさの活かしどころが異なるのである。
| タイプ | 問題の特徴 | 例 |
|---|---|---|
| ① 操作がそのまま「答え」になるタイプ(「プロダクトレベルの操作性」) | ドラッグ&ドロップでの分類・並べ替え,グラフ上の点の打ち込み,文のハイライトなど,操作した結果自体が解答となる | 図形を正しい位置に並べる問題,根拠となる文を本文中でハイライトする問題(NAEP:全米学力調査など) |
| ② 操作を通じて「考え」,最後は選んで答えるタイプ(「プロセスレベルの操作性」) | シミュレーションや模擬実験を操作しながら情報を集め,その結果に基づいて選択式・記述式で解答する | 「暑い日のランニング」(PISA),肥料や水を変えてトウガラシの成長を比べる模擬実験(TIMSS:国際数学・理科教育動向調査) |
TEIsに期待される3つの価値
では,こうした問題形式にはどのようなメリットがあるのだろうか。研究知見からは,主に3つの価値を創出できる可能性が示されている。
第一に,子どもがテストに真剣に向き合いやすくなる可能性である。大規模学力調査のように,その子の学校の成績に直接関係しないテストでは,問題をよく読まずに「あてずっぽう」で答えてしまう子どもが一定数おり,結果の解釈を難しくすることが知られている(Wise & DeMars, 2005)。米国の大規模な学力テストのデータを分析した研究では,ドラッグ&ドロップ等の操作が必要なTEIsにおいて,こうした「あてずっぽう回答」の発生率が従来の選択式問題の約10分の1以下に抑えられていた(Wise, Soland, & Dupray, 2021)。操作のあるインタラクティブな問題が,子どもの興味や注意を引きつけている可能性がある。
第二に,「答えやすさ」が向上する可能性である。例えば,バラバラに提示された文を正しい順に並べる問題を考えてみよう。紙のテストをそのまま画面に移したような形式では,各文の順番を数字で入力して答えることが多いが,ドラッグ&ドロップなら文を直接動かして並べ替えられる。小・中学生を対象とした実験では,同じ内容のCBT問題でも,上記の紙由来の形式と比べて,ドラッグ&ドロップ形式としたほうが解答時間とクリック数が大きく減り,しかも正答率は変わらなかった(Ponce, Mayer, & Loyola, 2021)。さらに,読解力が低い子どもでは,ドラッグ&ドロップ形式のほうが正答率が高くなる傾向すら見られた。答え方の煩雑さという「測りたい力とは関係のない障壁」を取り除くことで,子どもが本来の力を発揮しやすくなるかもしれない。
第三に,そして最も本質的な価値として,紙では測れなかった力を測れることである(Bennett, 2015; Sireci & Zenisky, 2016)。冒頭の「暑い日のランニング」のように,条件を操作して実験し,結果から判断する一連の過程は,紙の上で問うことが難しい。実際の学習や生活の場面に近い状況・操作で力を発揮させること(研究では「忠実性」や「真正性」と呼ばれる)は,テストで測りたい力をより直接的に測ることにつながると考えられている(Russell, 2016)。
「作れること」と「よく測れること」は別問題
ただし,ここには重要な注意点がある。研究知見が一貫して示しているのは,新しい形式を導入すれば自動的に測定の質が高まるわけではない,ということである。
英語圏の主要な学力テストで使われたTEIsを分析したある研究では,収集された問題の約6割が,操作は目新しいものの,「現実場面での力の発揮」の再現という観点では従来型と大差ない水準にとどまっていた(Russell & Moncaleano, 2019)。これは次のようなことを指す。例えば,英単語の意味として正しい選択肢を4つの中から選ぶ従来型の問題を,正しい選択肢を解答欄までドラッグ&ドロップして答える形式に変えたとしよう。答え方は確かにCBTならではの新しいものになるが,受検者がしていることは「4つの中から1つを選ぶ」ことのままであり,測っている中身が単語の意味の知識であることも変わらない。
また,凝った問題は作成にも時間とコストがかかる。さらに,複雑な操作が求められ,解答に時間がかかる問題となった場合,テスト全体で測定の信頼性を担保するのに十分な問題数を設定できなくなるおそれもある(Wools, Molenaar, & Hopster-den Otter, 2019)。
単に派手さや新規性を追い求めるのではなく,「この形式によって,何がよりよく測れるようになるのか」を先に明確にすることが,TEIsを活かす出発点となるだろう。
「測る」から「学びを支える」へ
最後に,今後の展望に触れたい。TEIsのもう一つの大きな可能性は,解答の正誤だけでなく,解答に至るまでの過程の情報(プロセスデータ)が従来型の選択式問題よりも豊かに記録できることにある。どの順番で操作したか,どこで手が止まったか,何度やり直したか。こうした情報は,紙のテストでは得にくいものである。
例えば,シミュレーションを闇雲に何度も実行して正解した子どもと,見通しを持って条件を変えて操作して正解した子どもとでは,同じ「正解」でも学習状態は異なるかもしれない。解答過程の情報をうまく活用できれば,「どこでつまずいているのか」をきめ細かく把握し,一人ひとりへのフィードバックや指導の改善につなげられる可能性がある。これは,テストの役割を,学習の結果を「測る」ことから,日々の学びを「支え,育む」ことへと広げていく方向性である。
もっとも,操作の記録が子どもの頭の中の過程をどのように反映しているのかという検証は,まだ研究の途上にある。操作が複雑な問題では,正解にたどりつく道筋が一通りではなくなるため,「どのような取り組み方に何点を与えるか」という採点の考え方も難しくなるだろう。
問題の検証を進めるにあたって,「どんな力の,どんなつまずきを捉えたいのか」という学習理論に基づく設計,問題形式の工夫,採点方法(測定モデル)の工夫とを一体で考える必要がある。
おわりに
MEXCBT(文部科学省CBTシステム)などの環境整備により,今や先生方自身が,ドラッグ&ドロップ等を使った問題を作成し,授業や課題で配信することも可能な時代になっている3。だからこそ,「作れるから使う」のではなく,「何を測り,何を子どもに返したいのか」という目的から形式を選ぶ視点が,これまで以上に大切になる。CBTならではの問題形式は,正しく使えば,テストを子どもの学びにより近づけてくれる。本稿がそうした問題作成に取り組むきっかけとなれば幸いである。
注記
※1 文部科学省・国立教育政策研究所(2024).令和7年度全国学力・学習状況調査CBTサンプル問題(中学校理科) ↩
※2 国立教育政策研究所(2016).OECD生徒の学習到達度調査――PISA2015年調査問題例[コンピュータ使用型科学的リテラシー問題]―― Retrieved July 28, 2026, from https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2015/04_example.pdf ↩
※3 文部科学省(n.d.). 文部科学省CBTシステムMEXCBT問題作成用マニュアル(第7.3版) Retrieved July 28, 2026, from https://support2.mexcbt.mext.go.jp/files/04_%E5%95%8F%E9%A1%8C%E4%BD%9C%E6%88%90%E7%94%A8%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB.pdf ↩
引用文献
渡邊智也・堂下雄輝(2026).Computer-Based Testingの特徴を活かしたテスト項目形式に関する研究動向―技術強化型項目 Technology-Enhanced Items研究に着目して― 日本テスト学会誌, 22(1), 123-150.
Bennett, R. E. (2015). The changing nature of educational assessment. Review of Research in Education, 39, 370-407.
北條大樹(2023).CBT領域におけるプロセスデータ利活用研究の動向 日本テスト学会誌, 19(1), 177-190.
Ponce, H. R., Mayer, R. E., & Loyola, M. S. (2021). Effects on test performance and efficiency of technology-enhanced items: An analysis of drag-and-drop response interactions. Journal of Educational Computing Research, 59(4), 713-739.
Russell, M. (2016). A framework for examining the utility of technology-enhanced items. Journal of Applied Testing Technology, 17, 20-32.
Russell, M., & Moncaleano, S. (2019). Examining the use and construct fidelity of technology-enhanced items employed by K-12 testing programs. Educational Assessment, 24(4), 286-304.
Sireci, S. G., & Zenisky, A. L. (2016). Computerized innovative item formats: Achievement. In S. Lane, M. R. Raymond, & T. M. Haladyna (Eds.), Handbook of test development (2nd ed., pp. 313-334). Routledge.
Wise, S. L., & DeMars, C. E. (2005). Low examinee effort in low-stakes assessment: Problems and potential solutions. Educational Assessment, 10, 1-17.
Wise, S. L., Soland, J., & Dupray, L. M. (2021). The impact of technology-enhanced items on test-taker disengagement. Journal of Applied Testing Technology, 22(1), 28-36.
Wools, S., Molenaar, M., & Hopster-den Otter, D. (2019). The validity of technology enhanced assessments--Threats and opportunities. In B. P. Veldkamp & C. Sluijter (Eds.), Theoretical and practical advances in computer-based educational measurement (pp. 3-19). Springer.
プロフィール
渡邊智也(わたなべ ともや)
ベネッセ教育総合研究所 測定技術研究課 研究員
京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。専門は認知科学,学習科学。2020年(株)ベネッセコーポレーション入社後,一貫して学習アセスメントに関わる研究開発・事業支援に従事。近年は,学習者のつまずき状態を可視化し,学習の改善につなげられる革新的なテスト問題の開発研究に取り組んでいる。
堂下雄輝(どうか ゆうき)
ベネッセ教育総合研究所 測定技術研究課 研究員
中高生を主対象とする国語アセスメントの開発・編集に20年以上携わり,大規模アセスメントや学習支援サービスにおける国語領域の問題開発・評価設計を担当してきた。革新的なテスト問題の開発研究に加え,問題作成研修による作問意識・技術の変化の研究にも関心がある。現在は「Literas 論理言語力検定」の制作・分析にも携わっている。