2014/12/05
【研究員コラム】時事通信セミナー「教育改革の行方~地方の教育はどう変わるのか~」 参加レポート
初等中等教育研究室 研究員 木村聡
教育委員会制度の改革で、地方の教育は変化するのか
現政権下での教育委員会制度の改革や、全国学力・学習状況調査の学校別成績開示、土曜授業の実施、学校情報化の推進など、今後ますます地方自治体主導の取り組みによって、公教育を取り巻く環境は変化していくと考えられます。また、地方の人口減少・大都市への人口集中を是正すべく掲げられた「地方創生」の政策においても、地域社会を担う人材の確保・育成が求められています。そのような人材を育成するべく、これからは、地域特性をよく知る地方自治体こそが、公教育において創意工夫を凝らされなければならない時代が到来しているとも言えるでしょう。
今回参加したセミナーでは、第2次安倍内閣の教育制度改革の概要と、地方自立のための教育について、文科省・NHKと立場の異なるお二方からご講演がありました。
11/18 時事通信セミナー「教育改革の行方」
①「教育制度改革の諸課題」
文部科学省 文部科学審議官 前川 喜平 氏
②「地方自立のための教育とは」
NHK解説委員 早川 信夫 氏
文部科学省 文部科学審議官 前川 喜平 氏
②「地方自立のための教育とは」
NHK解説委員 早川 信夫 氏
①「教育制度改革の諸課題」文部科学審議官 前川氏
教育再生実行会議での審議経過等を説明されました。
ここでは特に、前川氏がご講演のなかで説明された、教育再生実行会議の第2次提言「教育委員会制度の在り方について」に端を発して制度改革される「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」(2015年4月1日施行)のポイントを以下に記します。
ここでは特に、前川氏がご講演のなかで説明された、教育再生実行会議の第2次提言「教育委員会制度の在り方について」に端を発して制度改革される「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」(2015年4月1日施行)のポイントを以下に記します。
「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」
(2015年4月1日施行)
■改正のポイント
・教育委員長と教育長を一本化した新たな責任者(新教育長・常勤)を置き、教育委員会を代表する
・新教育長は、首長が議会同意を得て、直接任命・罷免を行なう
・教育長の任期は3年とする(現行は4年)
・首長は、首長と教育委員会で構成する総合教育会議を設ける
・首長は、総合教育会議で、教育委員会と協議し、教育振興施策の大綱を策定する
・首長は、総合教育会議で、重点施策や緊急措置についての協議・調整を行なう
・いじめによる自殺防止等、緊急に被害防止の必要があれば、文部科学大臣が教育委員会に対して指示できる
(2015年4月1日施行)
■改正のポイント
・教育委員長と教育長を一本化した新たな責任者(新教育長・常勤)を置き、教育委員会を代表する
・新教育長は、首長が議会同意を得て、直接任命・罷免を行なう
・教育長の任期は3年とする(現行は4年)
・首長は、首長と教育委員会で構成する総合教育会議を設ける
・首長は、総合教育会議で、教育委員会と協議し、教育振興施策の大綱を策定する
・首長は、総合教育会議で、重点施策や緊急措置についての協議・調整を行なう
・いじめによる自殺防止等、緊急に被害防止の必要があれば、文部科学大臣が教育委員会に対して指示できる
②「地方自立のための教育とは」 NHK解説委員 早川氏
前川氏の講演を受けた形で、報道機関の立場から、昨今の教育改革について解説されました。
ここでも「教育委員会制度改革」に絞って、早川氏の講演内容から抜粋して以下に記します。
ここでも「教育委員会制度改革」に絞って、早川氏の講演内容から抜粋して以下に記します。
●新しい教育委員会制度は、地方にとって薬にも毒にもなりうる制度
・権限を新教育長に一本化することで、責任の所在は本当に明確になるか?
→教育長は教育委員会の「代表者」として責任が明確になったが、首長と教育長の責任は明確になるか?(「権限」は首長、「責任」は教育長?)
・首長も教育長も「よきにはからえ」タイプでは、おそらく何も変わらない
・首長と教育委員会が対等な立場で議論する「総合教育会議」は、今後の各自治体の教育改革に寄与するか?
→「総合教育会議」での議論が市民に見えるようになる
(可視化されるように市民から迫っていく必要がある)
・権限を新教育長に一本化することで、責任の所在は本当に明確になるか?
→教育長は教育委員会の「代表者」として責任が明確になったが、首長と教育長の責任は明確になるか?(「権限」は首長、「責任」は教育長?)
・首長も教育長も「よきにはからえ」タイプでは、おそらく何も変わらない
・首長と教育委員会が対等な立場で議論する「総合教育会議」は、今後の各自治体の教育改革に寄与するか?
→「総合教育会議」での議論が市民に見えるようになる
(可視化されるように市民から迫っていく必要がある)
【所感】制度改革を上手に「利用する」意識を
今回の制度改革では、
・首長が新教育長を直接任命する
・教育委員会は「執行機関」、新教育長は教育委員会の「代表者であり責任者」
・新教育長は、教育委員会の代表者として、教育委員会事務局を指揮監督する
このように教育行政の責任が明確化され、首長の関与が強化されるとともに、
・首長と教育委員会(新教育長を含む)で構成する「総合教育会議」で、「教育振興施策の大綱」を策定する
とされ、首長と教育委員会が教育政策の方向性を共有し、一致して執行にあたるための会議体が設置されることになりました。首長の関与を強める一方で、政治的中立確保にも配慮した形です。
・首長が新教育長を直接任命する
・教育委員会は「執行機関」、新教育長は教育委員会の「代表者であり責任者」
・新教育長は、教育委員会の代表者として、教育委員会事務局を指揮監督する
このように教育行政の責任が明確化され、首長の関与が強化されるとともに、
・首長と教育委員会(新教育長を含む)で構成する「総合教育会議」で、「教育振興施策の大綱」を策定する
とされ、首長と教育委員会が教育政策の方向性を共有し、一致して執行にあたるための会議体が設置されることになりました。首長の関与を強める一方で、政治的中立確保にも配慮した形です。
教育委員会制度改革の発端になったのは「いじめ自殺問題」でしたが、いっそうスピード感が増している時代変化、環境変化に対応した教育の在り方を検討するには、非常勤の住民代表である現状の教育委員会では対応しきれていないことも事実でしょう。地方教育行政の責任者と執行者を明確にすることで、自治体ごとの地域特性や抱える課題を踏まえた教育改革が行なわれることを期待したいと思います。また、自治体ごとに設置・策定される「総合教育会議」「教育振興施策の大綱」が住民にとって本当に実のあるものになるのか、その公開性・透明性・実効性も問われるでしょう。
この制度改革を上手に利用できる自治体では、ICT利活用やグローバル(グローカル)人材育成といった、現在進行形の教育課題を乗り越えるための教育改革もできるのではないでしょうか。しかし、教育委員会制度が変わっても、制度改革を利用せずに何もしなければ、教育改革は成しえません。首長や行政の意志、意識とともに、それを監視し注文を出すくらいの住民の目や声が重要となりそうです。