2014/10/30
【実践研究・告知】「気づき」は教育内容そのものと同じくらい重要である
元 主席研究員・チーフコンサルタント 山下 仁司
進化・拡大するフューチャー・スキルズ・プロジェクト(FSP)の実践
来る11月19日(水)、明治大学アカデミーコモンズで、産学協同就業力育成シンポジウム2014 が開催される。今回のタイトルは『未来を創る「主体的な学び」を実践する ~Future Skills Project研究会 4年間の挑戦~』である。我々研究会が3年前に行った産学協同での学びの実践を受けて、いよいよ社会に出る時期を迎える学生たちが、どのように成長したのかが明かされる事になる。
今年のシンポジウムのキーポイントは、まずこのフューチャー・スキルズ・プロジェクトの実践が、様々な企業・大学に波及しつつある事である。昨年の段階で、のべ8大学20企業が参加していたこの試みが、今年度は15大学38企業へとほぼ倍増している。とりわけ大学は、首都圏だけでなく地方部でも、また私立大学だけでなく国公立大学への展開も始まっている。これは、近年の高等教育改革の動きとあいまって、産学協同による学生の主体性の醸成、能動的な学びの実践に関する関心が急速に高まっている事の証しだろう。周知の通り、私立大学等改革総合支援事業のタイプI調査票には「企業等と連携し、その課題解決に学生を主体的に関与させる事を目的とした授業(アクティブラーニング)を行っているか」という項目があるが、まさにFSPの実践を彷彿とさせるような内容である。
今年のシンポジウムのキーポイントは、まずこのフューチャー・スキルズ・プロジェクトの実践が、様々な企業・大学に波及しつつある事である。昨年の段階で、のべ8大学20企業が参加していたこの試みが、今年度は15大学38企業へとほぼ倍増している。とりわけ大学は、首都圏だけでなく地方部でも、また私立大学だけでなく国公立大学への展開も始まっている。これは、近年の高等教育改革の動きとあいまって、産学協同による学生の主体性の醸成、能動的な学びの実践に関する関心が急速に高まっている事の証しだろう。周知の通り、私立大学等改革総合支援事業のタイプI調査票には「企業等と連携し、その課題解決に学生を主体的に関与させる事を目的とした授業(アクティブラーニング)を行っているか」という項目があるが、まさにFSPの実践を彷彿とさせるような内容である。
アクティブラーニングを行う事が目的ではない
しかしながら、一方で研究会としては非常に慎重に事を進めてきた。FSPの目的は、アクティブラーニングを普及させることではない。ましてや、大学の教育がすべてアクティブラーニング化することを目指しているわけでもない。従来の講義型科目も必要で、大学で身に付けるべき専門の知識は大いに身に付けるべきであるし、知識を教えることをためらってはならない、とも思う。とすれば、FSPが提唱している「低学年における、産学連携による課題解決を実践するPBLによって学生の主体性を育む」事は、高等教育の中でどのように位置づけられるのだろうか。
「気づき」を最初に持ってくるカリキュラムモデル
私自身、FSP研究会で2010年の最初の大学と企業の議論から参加して、最近つくづく思うのは、教育において学生が何かの重要性に「気づく」事は、教育の内容そのものと同じくらい重要だ、と言う事である。
知識や理論を学ぶ事を「Theory」、経験をすることを「Experience」、気づきを得ることを「Awareness」とすると*、これまでの大学教育はまず最初に「知識Theory」を身に付け、その後「知識を実践に生かす経験やゼミ、実験Experience」をして初めて「気づきAwareness」が生まれる、という順序で教育を組み立ててきた。これを、頭文字をとって「TEA」モデルと呼ぶとする。一方、最初に企業など、できるだけ実社会に近い文脈での課題解決を行ってみて「Experience」、そこで自分の専門性を磨く必要に気づき「Awareness」、専門の知識や理論を学ぶ「Theory」。これをEATモデルと呼ぶ。FSPは、明らかにこのEATモデルのEとAを担う(図参照)。
知識や理論を学ぶ事を「Theory」、経験をすることを「Experience」、気づきを得ることを「Awareness」とすると*、これまでの大学教育はまず最初に「知識Theory」を身に付け、その後「知識を実践に生かす経験やゼミ、実験Experience」をして初めて「気づきAwareness」が生まれる、という順序で教育を組み立ててきた。これを、頭文字をとって「TEA」モデルと呼ぶとする。一方、最初に企業など、できるだけ実社会に近い文脈での課題解決を行ってみて「Experience」、そこで自分の専門性を磨く必要に気づき「Awareness」、専門の知識や理論を学ぶ「Theory」。これをEATモデルと呼ぶ。FSPは、明らかにこのEATモデルのEとAを担う(図参照)。
このような視点で、FSPに3年前の入学時に参加した学生が、その後どのような視点を持って、どんな大学生活を送ってきたか。そして、何より重要な事である、その学生はこれからの社会が求める力、例えば「主体性、課題解決能力、チームワーク、継続的学習力」を身に付け社会に出て行こうとしているのか。今回のシンポジウムで体感していただきたいのは、この点である。
産学協同就業力育成シンポジウム2014
未来を創る「主体的な学び」を実践する
~Future Skills Project研究会 4年間の挑戦~
<http://www.benesse.co.jp/univ/fsp/event/symposium2014/>
未来を創る「主体的な学び」を実践する
~Future Skills Project研究会 4年間の挑戦~
<http://www.benesse.co.jp/univ/fsp/event/symposium2014/>
*Pikeの「TEA」「EAT」モデルについては、大阪大学准教授 佐藤浩章先生よりご教示をいただいた。
プロフィール
山下 仁司
元 ベネッセ教育総合研究所 主席研究員・チーフコンサルタント
福武書店(現ベネッセコーポレーション)入社後、進研模試副編集長、ニューライフゼミ英語教材編集長、ベルリッツ・アイルランド、シンガポール出向、国際教育事業部長、ベルリッツ・ジャパン取締役、英語力測定テストGTEC開発統括マネージャーなどを経て現職。
◆近年の活動◆
大学FD・SD研修講演
広島大学、宮崎大学、名古屋工業大学、福岡工業大学、名城大学他多数
◆シンポジウム◆
・全国大学入学者選抜研究連絡協議会大会 公開討論会パネル(平成22年、25年)
・九州工業大学シンポジウム
「大学教育のあり方と秋入学-世界で活躍できる人材を育てるために-」(平成25年)
・ベネッセ教育総合研究所シンポジウム
「主体的な学びへと導く大学教育とは」(平成24年)
◆論文◆
・「高校・生徒からみた高大接続の課題と展望~高大接続の真の課題は何か~」(2011)
・日本高等教育学会 学会紀要『高等教育研究』第14集 高大接続の現在
・『「答え」や「モデル」のない今後のグローバル社会で活躍できる力とは?産学連携教育の研究実践と、主体性を引き出す大学教育の在り方』(2012)
・第4回横断型基幹科学技術研究団体連合シンポジウム 予稿集
福武書店(現ベネッセコーポレーション)入社後、進研模試副編集長、ニューライフゼミ英語教材編集長、ベルリッツ・アイルランド、シンガポール出向、国際教育事業部長、ベルリッツ・ジャパン取締役、英語力測定テストGTEC開発統括マネージャーなどを経て現職。
◆近年の活動◆
大学FD・SD研修講演
広島大学、宮崎大学、名古屋工業大学、福岡工業大学、名城大学他多数
◆シンポジウム◆
・全国大学入学者選抜研究連絡協議会大会 公開討論会パネル(平成22年、25年)
・九州工業大学シンポジウム
「大学教育のあり方と秋入学-世界で活躍できる人材を育てるために-」(平成25年)
・ベネッセ教育総合研究所シンポジウム
「主体的な学びへと導く大学教育とは」(平成24年)
◆論文◆
・「高校・生徒からみた高大接続の課題と展望~高大接続の真の課題は何か~」(2011)
・日本高等教育学会 学会紀要『高等教育研究』第14集 高大接続の現在
・『「答え」や「モデル」のない今後のグローバル社会で活躍できる力とは?産学連携教育の研究実践と、主体性を引き出す大学教育の在り方』(2012)
・第4回横断型基幹科学技術研究団体連合シンポジウム 予稿集