2017/07/24
「言語能力育成を考える」① -資質・能力の基盤となるもの-
グローバル教育研究室 室長
加藤由美子
加藤由美子
「人口知能がどれだけ進化し思考できるようになったとしても、その思考の目的を与えたり、目的のよさ・正しさ・美しさを判断したりできるのは人間の最も大きな強みである」
(次期学習指導要領解説(小学校・中学校)の第1章「総説」「今回の改訂の経緯」より)
(次期学習指導要領解説(小学校・中学校)の第1章「総説」「今回の改訂の経緯」より)
人口知能(AI)が飛躍的に進化する中、人間だからできることは何か、人間だからすべきことは何かが問われています。AIは、思考はできても、思考する目的を与えることはできない。つまり、課題の設定をすることができないと解釈できると思います。また、その課題設定のよさ・正しさ・美しさの判断もできないということだと思います。価値観が多様な時代において、「よさ・正しさ・美しさ」というものも多様となりますが、自分ごととして、関わる仲間や自分自身と対話し、思考・判断しながら、課題設定や解決策のコンセンサスを創っていくことは、人間だからこそできることと言えるでしょう。その対話や思考・判断を行うためには「言語能力」が必要となります。それが、次期学習指導要領が育成を目指す資質・能力の基盤にもなっていると思います。
しかしながら、「言語能力」の定義や「言語能力育成」にはさまざまな考え方があります。そこでARCLEでは、2017年度新企画として、ARCLE理事・研究員の先生方独自の視点から「言語能力育成を考える」コラムの連載を開始し、発信していきます。お届けするコラムが、「言語能力」や「言語能力育成」を考えていただく何らかのきっかけになればと思います。記念すべき第1回コラムは、田中茂範先生(慶応義塾大学)の「マイ・イングリッシュの育成」です。
コラムの中で田中先生は、英語を使う時に「自らのmy Englishを表現者として使うことを楽しむことである。それは一人一人にとって新しい言語能力であり、その新しい言語能力を駆使して表現することを、たとえ『ぎこちなさ』があっても、楽しむことである。その都度のmy Englishで勝負することである。」と述べています。自分ごととして英語を使いながら、自分の英語(my English)=新たな言語能力を構築し、自分らしさを表現することの大切さと楽しさを力強く提案してくださっています。ぜひご一読ください。