学会発表報告「外国ルーツの子どものための日本語と国語の統合学習用デジタル教材の試作と試行調査」日本語教育学会 2025年度秋季大会@富山国際会議場
はじめに
東京外国語大学の小野塚若菜准教授,ベネッセ教育総合研究所 学習科学研究室の森下みゆき,北海道大学の佐藤淳子助教授が,共同で日本語教育学会にて研究発表を行いました。以下,その内容を簡単にご紹介します。
※本研究は科研費(24K22721)の研究成果です。
本研究の目的
本研究では,外国ルーツの子どものための日本語と教科の統合学習を教材の開発を目指し,日本語と国語の教材のあり方を検討しています。今回の研究発表では,2024年度の日本語教育学会での発表に続き,日本語と国語の統合学習用デジタル教材の開発を目指し,①実態調査,②日本語と国語の統合教材の構成・方針策定,③試行調査を行った結果を報告しました。
現場での課題
国際教室での実態調査(視察,指導者・支援者へのヒアリング)から,国語科の指導についてはおおむね以下の課題が確認されました。
・子どもの日本語能力と在籍学年の教科書文章難易度とのギャップが大きく,授業で扱うことが困難である。
・学齢より下の素材を使うと,認知発達と題材の不一致が生じる。
・教科書外の読解素材は,国語科の目標との対応が分かりにくい。
これらの点を踏まえ,試作教材は,学習指導要領の目標と照合しつつ,日本語習得段階別に設計する必要があると考えました。
日本語と国語の統合教材の構成・方針
視察・ヒアリングを踏まえて,中学生を対象とした国語科「読むこと」について,以下の方針に沿って教材を試作しました。
・素材を教科書とは別に用意し,文章難易度や学習する文法・語彙を子どもの日本語能力に合わせる
・国語科の学習指導要領を参照し,単元の目標を設定
・素材文には読み上げ音声情報を付加する
・日本語習得段階別の3レベルを想定(初級前半・初級後半・中級前半)
※今回の試作は,日本語中級前半レベルで作成
(図)日本語と国語の統合教材の構成
試用調査の結果
2025年3月,国際教室で学ぶ中学2年生4名(日本語初級後半2名・中級前半2名)を対象に,タブレットPC上の試作版教材と紙のワークシートを用いて45分授業内で実施しました。観察結果と教員への事後ヒアリングからの主な知見は以下のとおりです。
・学習者の日本語レベルと教材が合っている場合,素材文の音声を聞き,出題に適切に回答できるなど学習は円滑に進んだ。
・日本語レベルが教材レベルに達していない学習者は,音声が速く感じたり素材文の理解が不十分なため,本文と関係のない自己の考えだけで解答したりする様子が観察された。
・国語科担当・日本語担当教員の指摘から,教材の改良ポイント(素材文・設問の視認性,音声速度の調整等)が示された。
まとめ
今回の試用調査を通して,学習者と教材の日本語のレベルがあっていれば学習は円滑に進むことが確認できました。一方,UI面での必要な修正点も明らかになりました。今後は,試行調査で把握した課題に対応し,教材改訂を進めていくとともに,学習効果については中長期的な取り組みを通して評価する必要があると考えています。
