百人一首の覚え方

004
田子たごうらに うちでて見れば 
白妙しろたへの 富士ふじ高嶺たかねに 雪は降りつつ 山辺赤人やまべのあかひと※)

上の句|たごのうらに うちいでてみれば しろたえの

下の句|ふじのたかねに ゆきはふりつつ

2023/09/29

※イラストはイメージです

現代語訳

田子の浦の海辺に出て、はるかかなたを見渡すと、真っ白な富士山の頂上に雪が降り続いているなあ。

解説

冬の日に田子の浦から見えた雄大な富士山の美しさを詠んだ歌。白い布に覆われたかのような富士山の頂上に、しんしんと真っ白な雪が降り続いている様子を描いており、厳かな美しさが際立ちます。
海の青とのコントラストに、冬の澄んだ空気の中にそびえ立つ富士山、降り積もる雪…まるで美しい絵画を眺めているようにも感じられるのではないでしょうか。

出典

新古今和歌集しんこきんわかしゅう
『万葉集』まんようしゅうでは「田子の浦ゆうち出でてみれば真白にそ富士の高嶺に雪は降りける」

語句解説

田子の浦

駿河国するがのくに(現在の静岡県)の海岸。ただし、現在の田子の浦とは異なる場所との説もある。

うち出でて見れば

「うち」は語調を整えたり、下の動詞の意味を強める接頭語。「出でて見れば」は「出づ」「見る」の二つの動作が組み合わさっている。
「うち出でて見れば」で「出て眺めてみると」という意味。

白妙

木の皮の繊維で折られた布のこと。

降りつつ

「つつ」は動作の反復・継続を表す接続助詞。「降りつつ」で「降り続いている」という意味。

作者紹介

山辺赤人(やまべのあかひと)(生誕年不詳ー736年)

奈良時代の宮廷歌人で、三十六歌仙の一人。
※万葉集では山部赤人

作者に関する逸話

山辺赤人は、身分の低い下級役人だったものの、その歌の巧みさで天皇に仕えたと言われています。天皇の吉野や紀伊などへの行幸ぎょうこう(天皇が皇居を出て他の場所へ行くこと)に同行して歌を詠んだり、人の死を悲しんで詠む挽歌ばんかを詠んだりしていたようです。
『古今和歌集』の撰者せんじゃであり、また『土佐日記』とさにっきの作者として知られる紀貫之きのつらゆきは、『古今和歌集』の仮名序で、赤人を、「歌聖」と称される柿本人麻呂かきのもとのひとまろと並ぶ優れた歌人と記しています。

決まり字

上の句
田子の浦に うち出でて見れば 白妙の
下の句
富士の高嶺に 雪は降りつつ

「たご」が決まり字の二字決まりです。

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語呂合わせ

田子富士(たごふじ→たこふじ)
たこが富士山にいる様子をイメージすると覚えやすいです。

イラストレーター

ぬまた こうたろう


監修者

たに ともこ


1959年、徳島県生まれ。大阪大学国文学科卒業、東京大学大学院博士課程単位取得。博士(文学・東京大学)。フェリス女学院大学教授。専攻は中世和歌。
著書に『百人一首(全)』(ビギナーズ・クラシックス日本の古典 角川文庫 KADOKAWA)『古典のすすめ』『和歌文学の基礎知識』(角川選書 KADOKAWA)、『百人一首解剖図鑑』(エクスナレッジ)、『和歌・短歌のすすめ 新撰百人一首』(共編著 花鳥社)、『中世和歌とその時代』(笠間書院)、『和歌文学大系 秋篠月清集・明恵上人歌集』(明治書院・『秋篠月清集』本文・校注・解説)などがある。

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