「STEM教育」って何? プログラミング・AI時代に注目!

「STEM(ステム)教育」という言葉をご存じでしょうか。1990年代に米国で提唱された、科学(Science)・技術(Technology)・工学(Engineering)・数学(Mathematics)の頭文字を取った理数系教育の総称です。
人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)などの登場で「第4次産業革命」とも呼ばれる時代が到来するなか、これからの子どもたちにとって不可欠な教育と言えます。

芸術分野なども加えバージョンアップ

日本におけるSTEM教育をめぐっては、2017年10月に「日本STEM教育学会」(会長=新井健一・NPO法人教育テスト研究センター理事長)が発足し、このほど東京・上野で初年度の研究会を開催しました。
新井会長は、元々のSTEM教育をバージョン1.0とすれば、芸術(Art)を加えた「STEAM(スティーム)教育」、さらにロボット工学(Robotics)を加えた「STREAM(ストリーム)教育」などさまざまなバリエーションを生んでいる現在を「STEM教育1.5」、それに続くAI時代を「STEM教育2.0」と位置付けました。

2020年度から順次実施される新学習指導要領でも、▽小学校で算数や理科、総合的な学習の時間など、どこかでプログラミング教育を体験させる▽高校で、理科と数学にまたがる選択科目「理数探究」を新設するとともに、情報は従来の2科目選択を共通必履修の「情報I」に改め、全員にプログラミングやネットワーク、データベースの仕組みを学ばせる……などの改訂が行われました。

ただ今回の改訂では、小学校のプログラミング教育を実施する教科を限定しなかったことに見られるように、特別なSTEM教育の時間を設けたわけではありません。新井会長は、STEM教育という幹(stem)をしっかり押さえたうえで、各教科の「ゆるい連携」によって、プロジェクト型で社会的課題の解決に取り組む学習を行いながらSTEMリテラシー(活用能力)を育て、大学やその後の職業に生かすことを提案しました。

理工系に進む人に限らず

STEM教育というと、理工系に進む人にしか関係ないのではないかと思いがちです。しかし、AI時代の到来によって、小学生が大人になるころには今ある職業の半分が入れ替わるという予測もあります。文系・理系に限らず多くの仕事で、AIに使われるのではなく、AIを使いこなす能力が求められることでしょう。

新井会長が参考として紹介したのが、欧州委員会の「生涯学習のためのキーコンピテンシー(主要能力)」です。母国語や外国語でのコミュニケーション、異文化理解と表現などの他、「数学と基礎的な科学と工学」「デジタルコンピテンシー」はもとより、「学び方の学び」も挙げています。
新井会長は、これを日本の新学習指導要領が資質・能力(コンピテンシー)の三つ目の柱に掲げる「学びに向かう力・人間性等」に対応すると位置付けました。プログラミング教育も、プログラミング言語を書く「コーディング」を覚えるためではなく、それを通して論理的思考力を身に付けることを目指したものです。
研究会で長洲南海男・筑波大学名誉教授は、日本の理科教育が「物・化・生・地に凝り固まっている」と問題点を指摘しました。これからはSTEM教育の発想で、理数教育のイメージ自体を一変させる必要があるのかもしれません。

(筆者:渡辺敦司)

※日本STEM教育学会
https://www.j-stem.jp/

※新学習指導要領
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1383986.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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