小1からの学びにつながる幼児期の経験は?

小学校入学後、お子さんの生活面も学習面も順調なスタートを願う保護者の方は多いでしょう。東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所の共同研究「子どもの生活と学び」研究プロジェクトでは、2016年7月に実施した「親子調査」の回答者のうち、小学1年生の保護者を対象に、「小学校入学前の生活に関する振り返り調査」を行いました。小学校入学前の経験と、小学1年生時の学習意欲などとの関連を分析した結果、子どもの「感情を伴う経験」が、その後の学びに良い影響をもたらすことがわかりましたのでご紹介します。

「感情を伴う経験」をしている子どもは約8割

「年少児~年長児の頃、次のような経験がどれくらいありましたか?」という質問に対する回答を示したのが【図1】です。「時間がたつのを忘れるくらい遊びなどに夢中になる」「遊びなどの中で何かができて達成感を味わう」「飛び上がるぐらいうれしい思いをする」経験をした子どもの割合は9割以上です(「よくあった」+「ときどきあった」の%。以下同)。また、「泣きたくなるようなくやしい思いをする」「絵本などを読んで喜んだり、悲しんだりする」経験をした子どもの割合も、約8割にのぼります。
多くの子どもが、遊びを中心とした日常生活において、嬉しさ、くやしさ、悲しみなど、さまざまな感情を経験しているようです。

「遊びなどで達成感を味わう」経験の有無で、自己肯定感に大きな差

それでは、これらの経験は小学校入学後の学びにどのような影響があるのでしょうか。ここでは、特にその関連が顕著に見られた2つの経験についてご紹介します。
【図2】は、「遊びなどの中で何かができて達成感を味わう」経験と、小1生の時の学習意欲、学習の主体性、自己肯定感との関連を示したものです。
学習意欲との関連を示した【図2-1】を見ると、「遊びなどの中で何かができて達成感を味わう」経験が多い子どもが「勉強が好き」だと回答した割合は、83.9%です(「とても好き」+「まあ好き」の%。以下同)。一方、この経験が少ない子どもが回答した割合は62.2%で、経験が多い子どものほうが20ポイント以上高くなっています。
学習の主体性との関連を見ると(【図2-2】)、「遊びなどの中で何かができて達成感を味わう」経験が多い子どもが、「人に言われなくても自分から勉強する」に「あてはまる」と回答した割合は、68.6%です(「とてもあてはまる」+「まああてはまる」の%。以下同)。経験が少ない子ども(49.5%)より20ポイント弱高い結果です。
自己肯定感との関連については(【図2-3】)、「遊びなどの中で何かができて達成感を味わう」経験が多い子どもが、「自分に自信を持っている」に「あてはまる」と回答した割合は72.1%です(「とてもあてはまる」+「まああてはまる」の%。以下同)。経験が少ない子どもの回答より30ポイント以上も高い結果になりました。

「絵本で喜んだり、悲しんだり」した子どもの8割以上が「勉強が好き」

同様に、「絵本などを読んで喜んだり、悲しんだりする」経験と、小1生の時の学習意欲、学習の主体性、自己肯定感との関連が見られました。
【図3-1】、【図3-2】、【図3-3】からわかるように、小学校入学前に、「絵本で喜んだり、悲しんだり」した経験が多い子どもはこの経験が少ない子どもに比べ、小1生の時、勉強が好き、人に言われなくても自分から勉強する、さらに自分に自信を持っているということです。

ちょっとした工夫で子どもの喜怒哀楽が伴う経験を

今回の調査では、「遊びなどの中で、何かができて達成感を味わう」「絵本などを読んで喜んだり、悲しんだりする」を始めとして、小学校入学前に「感情を伴う経験」が多くあった子どもは、これらの経験が少ない子どもに比べて、小1生の時に学習意欲、学習の主体性、自己肯定感を持っている割合が高いことがわかりました。
子どもは、面白いと感じることには、自分から進んで取り組みます。これまでに巡り合ったさまざまな遊びや絵本を通じて多様な感情を味わってきた子どもほど、新しく出会った小学校での学びに対しても、好奇心を持って前向きに取り組んでいけることは不思議ではありません。また、何かを達成した経験のある子どもは、学習を進める過程で多少の困難があっても、「自分なら出来る」と頑張れるのではないでしょうか。
こうした経験をご家庭でさせたいと考える際、大がかりなものを用意する必要はありません。むしろ、子どもが楽しんで取り組み、時には失敗もしながら達成感を積み重ねられるような、ちょっとした工夫を遊びや日常生活の中に取り入れることがおすすめです。絵本も、難解なものではなく、子どもが喜んだり悲しんだり、等身大でその世界を楽しめるものがよいでしょう。学びを面白いと感じ、自ら学びに向かうこと、そして、「自分は出来る」と自己肯定感を持つことは、子どもが学びを深めていく上で何よりも大切な基盤となります。日々の生活や遊びは、それを形づくるための十分なきっかけとなるのです。保護者の方も、お子さんと一緒に、喜怒哀楽を伴う経験をしてみてはいかがでしょうか。

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