大学の「連携・統合」いよいよ始まる!?

主な大学入学年齢である18歳の人口が今年から再び減り始める「2018年問題」が話題となるなか、中央教育審議会は大学など高等教育の「将来構想」の論議を本格化させています。現在でも定員割れの私立大学が4割に上るなど大学の経営環境が深刻になるなか、国公私立の枠を超えた「連携・統合」が現実のものとなってきそうです。

18歳人口減に向け改革論議も急ピッチ

中教審は昨年3月、松野博一文部科学相(当時)から諮問を受け、2040年ごろの社会を見据えた高等教育の在り方を検討してきました。2040年ごろには、18歳人口が現在の3分の2に当たる約80万人にまで減少すると推計されています。今後、大幅に進学率が上昇したり、社会人や留学生の受け入れが広がったりしなければ、約780ある大学の相当数が潰れてしまうことは避けられません。

大学全体の規模をめぐって国は、かつて「高等教育計画」という形で設置認可の際に量的規制を行ってきましたが、2003年以降、政府の規制緩和政策を受けて「事前規制から事後チェックへ」と方針転換が行われたため、2005年以降は「将来像」という形で、大学自身が特色を選択して緩やかにタイプ分けされていく「機能別分化」を中教審が提案。
それから10年以上がたち、国立大学の第3期中期目標期間(2016~21年度)で各大学が(1)地域貢献(2)専門分野(3)卓越研究……のタイプを選んで重点的に運営費交付金を受ける仕組みが導入されるなど、ようやく機能別分化が現実のものになってきました。

しかし、18歳人口の減少が深刻化するのは目前です(本格的に減り始めるのは2021年ごろから)。中教審は昨年12月には「論点整理」をまとめましたが、まさに論点を整理しただけにとどめ、規模に関しては秋の答申で提言することにしています。5月中にもまとめる中間報告に向けて、急ピッチで議論が進んでいくことでしょう。

1月に行われた中教審の「将来構想部会」では、高等教育規模だけでなく、▽国公私立の枠を超えた大学等の連携・統合の方策▽地域の高等教育機関が産業界や地方公共団体とともに議論する「プラットフォーム(仮称)」の仕組みや地域の単位▽国公私の役割分担……の検討を進める方針が示されました。

国立大学も例外ではなく

とりわけ「連携・統合」という文言が注目されます。これからの大学は、1校だけで教育・研究が完結できるものではありません。お互いが得意とする「機能」を地域などで分担し合いながら「連携」することが不可欠で、その先には大学丸ごとだけでなく学部・学科の「統合」も結果的にあり得る……。そんな意味合いが込められているようです。

国立大学も例外ではありません。国立大学協会(国大協)が1月にまとめた「国立大学の将来像」の最終まとめでも、都道府県に少なくとも1校(キャンパス)という原則は維持しながらも、広域的な役割分担を提言しています。とりわけ教員養成課程に関しては、「広域エリア内での国公私を越えた連携・統合」を検討すべきだと踏み込んでいます。
大学の連携・統合時代にあっては、これから進学しようとする人にとっても、「どの大学や学部・学科を選ぶか」ではなく「大学で何を学び、どんな能力を身に付けたいのか」「そのために、どんな環境があるのか」という意識を持つことが、より重要になってくるかもしれません。

(筆者:渡辺敦司)

※中教審 将来構想部会
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/042/index.htm

※国大協「高等教育における国立大学の将来像(最終まとめ)」
http://www.janu.jp/news/teigen/20180126-wnew-future-vision-filnal.html

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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