変わる国立大学 減る文系、増える文理融合型

大学受験のシーズンが佳境に入っていますが、文部科学省が発表した「国立大学の入学定員(予定)」から、最近の国立大学の動向が浮かんできました。入学定員の「人文社会系から理工系へのシフト」と「教育系の廃止」です。これらは今後の国立大受験生にどんな影響を及ぼすのでしょうか。

文科省通知で理工系重視へシフト

文科省のまとめによると、2018年度の国立大学(学部)の入学定員は、前年度より43人減の9万5,650人となっています。2013年度の入学定員は9万6,482人でしたから、5年間で832人減となる計算です。一見すると、あまり大きな変化はないようです。
しかし、入学定員の前年度比を学部の分野別に見ると、ある傾向が存在することがわかります。たとえば「人文社会」は2016年度が1,075人減、17年度が402人減、18年度が219人減で、3年間で合計1,696人減と大きく減っています。
さらに「教育」は2016年度が905人減、17年度が3人減、18年度が124人減で、3年間で合計1,032人減りました。「理工」も2016年度が1,449人減、17年度が184人減、18年度が40人減で、3年間で合計1,673人減となっています。
一方で、逆に定員が増えているのが「共創学部」(九州大学)などの新しいタイプの文理融合型学部や、「国際地域創造学部」(琉球大学)など地域経済に役立つ人材を育成する地域振興型学部といった「その他」の分野です。「その他」の入学定員は、2016年度が2,898人増、17年度が232人増、18年度が340人増で、3年間で3,470人も増加しています。
また文理融合型は、従来の工学部や理学部を母体にしている場合が多く、先に挙げた「理工」分野の定員減少分は、こちらに振り替えられています。つまり、純粋に定員が減っているのは「人文社会」と「教育」の分野ということです。
このことから国立大学では、「人文社会系から文理融合型学部を含む理工系へのシフト」「教育系の定員削減」という二つの事態が進行している事実が浮かび上がってきます。これは2015年に文科省が国立大学改革の方針として、教員養成系学部の縮小と人文社会系学部の「社会的要請の高い分野への転換」を大学に通知したことが原因です。

人文社会系希望者には影響大

一方、大学生の就職状況を見ると、最近の景気回復の傾向を受けて、企業などのニーズが多い人文社会系学部が学生の人気を集めています。大学入試も「文高理低」で、かつての不況時の「理高文低」という状況は過去のものとなっています。
今後の大学入試では、人文社会系から理工系への定員シフトという国立大学の動向を受けて、「人文社会」分野と「教育」分野では入学定員削減により競争率が上昇する一方、理工系希望者には「広き門」となりそうです。
また国立大学改革により、法学部・経済学部・文学部などの従来型の学部への進学希望者は、新しく誕生した文理融合型学部や地域振興型学部など「その他」分野の学部への進路変更を迫られることも予想されます。
文科省による国立大学改革は、確実に受験生にも影響を及ぼしつつあるようです。

(筆者:斎藤剛史)

※平成30年度 国立大学法人の入学定員(予定)について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/01/1400239.htm

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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