私立大学の研究、特色化を文科省が60校選定

「ブランディング」という言葉をご存じでしょうか。ブランドの価値をより高めていくこと、またはブランドとして社会的に認知されていないものをブランドに育て上げることを意味するマーケティング用語です。
文部科学省は、2017(平成29)年度「私立大学研究ブランディング事業」の支援対象校を選定しました。私立大学とブランディングは、どう関係しているのでしょうか。

国の補助額は研究者個人の話

欧米の大学が「研究」を重視しているのに比べて、日本の大学、特に私立大学は、「教育」に重点を置いている学校が主流を占めています。
世界大学ランキングなどで、日本の私立大学の順位が低いのも、これが原因の一つです。言い換えれば、「研究」に関しては、日本の私立大学はどこも似たようなもので、外からほとんど特色が見えません。

このため、受験生の大学選びも多くの場合、学部・学科の名称やイメージ、模擬試験の成績などから自分に合いそうな大学を選んでいるのが実情でしょう。しかし、大学の役割が「教育」と「研究」の両方である以上、将来、研究者を目指すことはなくても、どの大学がどんな研究を得意分野としているのかを知っておくことは必要でしょう。
大学の研究力を知る指標の一つが、国からの科学研究費補助金の交付額です。これを見れば、その大学がどんな研究でどの程度の補助金を受けているのか知ることができます。ただ、これは研究者個人に交付されるため、大学全体がどう取り組んでいるかはわかりません。
このため「研究」の面で、私立大学の特色化を推進しようというのが「私立大学研究ブランディング事業」で、文科省が2016(平成28)年度から開始しました。地域経済や特定の研究分野に寄与することを目指す「タイプA」と、全国的・世界的な研究拠点となる「タイプB」の二つがあり、2017(平成29)年度は合計79億円が補助金として予算計上されています。

大学全体の取り組みに

選定のポイントは、その研究を大学全体の「ブランディング」として取り組み、研究を通じて私立大学としての独自性を打ち出しているかどうかです。2017(平成29)年度はタイプAに123校が申請して、33校が選ばれました。またタイプBには、65校が申請、そのうち27校が選定されました。

タイプAの選定大学と事業名を見ると、たとえば、多摩大学(東京都)は「大都市郊外型高齢化へ立ち向かう実践的研究—アクティブ・シニア活用への経営情報学的手法の適用—」となっており、経営情報学などをブランディングの柱に据えていることがうかがえます。また吉備国際大学(岡山県)は、「エコ農業ブランディングによる発展的地域創成モデルの形成」で、エコ農業による地域発展をテーマに掲げています。
一方、全国的・国際的な研究拠点を目指すタイプBでは、法政大学(東京都)が「江戸東京研究の先端的・学際的拠点形成」、東京理科大学(同)が「スペース・コロニー研究拠点の形成」などとなっており、それぞれの大学のどんな研究が、全国的に有名なのかを知ることができます。
大学進学者やその保護者などは、大学選びの参考にしてみてはいかがでしょうか。

(筆者:斎藤剛史)

※平成29年度「私立大学研究ブランディング事業」の支援対象校の選定結果について
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/002/002/1397956.htm

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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